2021年8月26日木曜日

蛇籠文化、ネパールで洪水対策 高知大が大地震機に支援

 Source:https://www.asahi.com/articles/ASP8L6S6GP8KPTLC00Y.html

今林弘写真・図版

 2015年にマグニチュード7・8の大地震があったネパールの被災地で、土木技術の支援をしてきた高知大学高知市)が、洪水対策で新たなプロジェクトを始める。使うのは鉄線で編んだかごに石を詰めた「蛇籠(じゃかご)」。日本でも古くから伝わる治水構造物を改良し、「ローテク」で崩れにくい護岸の実現を目指す。

 7月末、高知大理工学部の地盤防災学研究室。水槽内に水を注ぎ、3段に積んだ蛇籠の崩れ具合を調べる実験が進んでいた。「ネパールの雨期の雨はもっと激しいよ」と原忠教授(46)。担当の内田志春さん(4年)は課題やアイデアをノートに書き留めた。

 ネパールを襲った大地震は、その後の余震も含め約9千人近い犠牲者が出た。発生から約3カ月後、原教授は学外の研究者らと現地に入り、目にとまったのが、道路の擁壁に使われていた多くの蛇籠だった。

 蛇籠は安価で用途も多く、今はコンクリートが主流だが、ネパールなどアジアで広く普及している。

 原教授は「ローテクでもその地域になじみの技術を磨けば、有効な技術支援になる」という発想から、他の研究機関や企業と協力して研究。耐震性を高めた蛇籠の「設計・施工マニュアル」を現地向けに2年前に作成し、すでに蛇籠の擁壁は現地で完成している。

 今回の技術支援は、地震とともにネパールを悩ませるもう一つの災害、洪水に強い蛇籠の改良だ。

 蛇籠は護岸にも多く使われるが、6~10月の雨期の長雨や激しい水流で崩れるケースが見られる。そこで、雨水や水流に対する蛇籠の耐性を科学的に分析し、「崩れにくい蛇籠護岸」の実現を目指す。

 支援先は大地震の震源地近くのゴルカ郡ビルディ地区。谷に囲まれた山間集落で、避難所にもなる小学校と集落の間を流れる河川は雨期に氾濫(はんらん)し、川沿いの圃場(ほじょう)が水につかったり、土が削られたりするという。

 前回支援で親しくなった現地の技術者らのグループと高知大が協力し、改良した蛇籠護岸を設置。他の大学や企業の協力、JICA(国際協力機構)の支援も得る。高知大防災推進センターも参加し、地域住民と協力してハザードマップを作成し、水害に対する防災意識の向上に取り組む。

 今回の支援のプロジェクトマネジャーを務める原教授は「地震や水害に悩まされる住民の姿は日本と同じ。南海トラフ地震への備えを進める高知から、蛇籠を使うという共通の文化的なつながりを通じて、ネパールの防災力を高めることができれば」と話す。

 18日には、高知大ネパールなどの関係機関をウェブでつなぐ会議が初めて開かれた。プロジェクトはJICAの「草の根技術協力事業」に採択され、3年間の予定。ネパールの担当者は「協力し合えることを楽しみにしている」と話した。(今林弘)

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