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東京オリンピック・パラリンピックで世界中から外国人スポーツ選手が一時的に日本を訪れている。その一方で、この華々しい国際的イベントを冷ややかな目で眺めている日本国内の外国人労働者たちもいる。 東京五輪の開会式会場に北朝鮮の金正恩総書記が? 周辺が一時騒然! ◇ ◇ ◇ 「オリンピック? スポーツ? 何が夢と希望なんだと思うよ。私、日本に来てから低賃金で働かされていて、絶望しかないから」 ベトナム人のAさん(21歳)は筆者の前で怒りをあらわにした。彼は現在、関東の農場で働き、月収約15万円を得ているという。 日本は世界有数の外国人受け入れ大国となっている。出入国在留管理庁によれば2020年末の在留外国人数は288万7116人。ベスト5は多い順から中国、ベトナム、韓国、フィリピン、ブラジル。在留外国人のうち技能実習生は37万人と全体の13%を占めしている。少子高齢化に伴う労働力不足を解消するため、政府は19年4月に出入国管理法を改正。外国人労働者受け入れ拡大を急速に進めている。 日本社会がこのような外国人労働者たちに期待していることはなんだろうか。日本人がやりたがらない重労働を長時間、低賃金でやってくれることーー。それが本音だろう。だが、劣悪な環境で働かされ続ければ、日本人が求める清く健全な外国人のあり方からドロップアウトする者は当然出てくる。 ■日本人のカネがなくなると、そのツケは そこに東京五輪開催の強行が追い打ちをかけていく。緊急事態宣言発出後でも特例措置で世界各国から入国する五輪関係者への「おもてなし」。900億円ともいわれるチケット収入の消滅。五輪強行のツケは今後、増税という形で日本国民に降りかかるだろう。それは日本で暮らす外国人にも容赦なく襲いかかる。 「日本人のおカネ無くなれば、日本人、私たち外国人をもっと安く使う。道具だ。これから、今より私の暮らし、酷くなる。もう仕事しようと思わない」(Aさん) 実際、日本社会に絶望した外国人労働者が裏社会に身を投じてしまうことはある話だ。 私はもともと在日外国人が多く暮らす、東京・新大久保コリアンタウンや池袋の中華街、埼玉・西川口、群馬・太田市のブラジルタウンなどを取材してきた。そこでは外国人受け入れ団体など日本社会でよく掲げられる「外国人との共存共栄」とはほど遠い現実を目の当たりにした。日本人と対立する外国人や日本人から搾取をされる外国人と接するのは、私の中でとても悲しいことだった。さらに近年は私が取材を得意とする「裏社会」でも外国人を多く見かけるようになっていた。 ■外国人犯罪集団はなぜ生まれるのか 「外国人マフィアはどうして生まれるのか?」 この理由を知る必要を感じた私は2018年から取材を開始した。ベトナム、ネパール、ナイジェリア、フィリピン、ブラジル、中国などのルーツを持つ不良たち100人以上に会って話を聞いた。時には脅され、殴られ、薬物を盛られ、何度も死にかけながら、裏社会の新興勢力である外国人マフィアを自分なりに必死に取材をしてきたつもりだ。この取材によって私が気づいたことは、外国人マフィアとは日本社会が冷遇した外国人だったということだ。 前出のAさんもその一人だった。3年前に溶接工の外国人技能実習生として来日。本国の家族のために仕送りをするという出稼ぎ目的だった。しかし重労働と月12万円の低賃金のために工場を脱走。その後はベトナム人の不良グループに加わり、窃盗など違法なことをしてきたという。Aさんのような転落話はほかの外国人労働者からもたびたび聞いた。 労働力不足を補うために日本に呼んだ外国人や外国人技能実習生が、外国人マフィアとなり犯罪集団として台頭しているとはあまりにも皮肉なことだ。国を挙げて実施する、いびつな外国人受け入れ政策がこの原因となっていることは間違いない。 私は外国人マフィアや彼らの犯罪行為を擁護したり正当化したりはしない。しかし「外国人との共存共栄」を日本社会で実現していかなければ、外国人マフィアが増加の一途をたどるのは必然だと考えている。外国人マフィアの犯罪を是正するためにも、きちんとした待遇で外国人を迎える日本社会にすることが必要不可欠なのだ。東京五輪で活躍する外国人たちを見て、つくづくそう思った。 ▽真樹哲也 フリーライター。1985年生まれ。日本の裏社会や外国人コミュニティを長年取材。今年6月には真樹哲也というペンネームで『ルポ 外国人マフィア』(彩図社)を上梓。
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