2019年12月27日金曜日

どう防ぐ? 地方からの「頭脳流出」 海外で働いた女性が気づいた香川の中小企業の魅力

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191223-00000001-yonnana-soci
12/23(月) 、ヤフーニュースより
 年が明けると大学生の就職活動が本格化する。若者の多くは知名度の高い大企業を目指し、地方の中小企業は選択肢になりにくい。こうした現状に強い問題意識を持つ女性が高松市にいる。香川県で総合求人サイト「しごとマルシェ」を運営する飯原美保さん(47)だ。

 38歳で帰郷するまで約10年間、ネパール、ベトナム、ガーナといった発展途上国で地域開発に携わった。多くの若者が国外に出てしまう「頭脳流出」が途上国の発展を阻む現実を目の当たりにし、日本の地方にも同じ課題があると感じている。途上国と違い、都市部と地方に生活水準の差はほとんどなく、教育水準もおしなべて高い日本で、地方からの「頭脳流出」が進むのはなぜか、その流れを変える手だてはないのか。話を聞いた。(共同通信=浜谷栄彦・文、古橋遥南・写真)

―地方は若者の流出に歯止めがかからない。途上国は。

 日本の地方と途上国は「頭脳流出」という共通課題を抱えている。英語で「brain drain(ブレーン・ドレイン)」と言って国際協力の世界で頻出する言葉。例えば香川県の場合、高校卒業を機に県外に出る若者が8割。県外の大学に進学した人の大半は卒業しても戻ってこない。途上国の場合、出稼ぎ労働者からの仕送りに依存する経済構造が原因で、国外に人材が流出し続けるという深刻な問題を抱えている。
―途上国と日本の違いは。

 「頭脳流出」の要因が大きく違う。途上国だと、地方に電気、ガス、水道などのライフラインが整備されておらず、教育や医療サービスの質も低い。しかも途上国は多民族国家が多く、マジョリティーの民族が政治経済を牛耳り、地方に住む少数民族の窮状は放置されている。途上国では、自分が生き延びるために、親や兄弟、親戚の生活のために、都市部や国外に出ざるを得ない。

 一方、日本の場合は大学などへの進学で県外に流れ、そのまま戻ってこない。地方と都市部の生活環境に大きな差がなく、教育や医療サービスも途上国とは比較にならないくらい充実している。賃金の格差も途上国との比ではなく、生活費を考えると、むしろ地方の方が金銭的な余裕がある。

―それでも日本の若者が地方から流出している。

 原因の一つは情報格差にある。東京の大企業と地方の企業で初任給が何倍も違うわけではない。企業の発信力の差が採用に大きく影響しているように思う。メディアへの露出度も違うし、B to Bの企業は一般の人に知られづらい。地域企業が新卒を採用していることすら、学生が認識していないケースもある。情報格差を是正できれば、進学のために県外に出た学生が地方に戻ってくるのではないか。
頭脳流出に問題意識を持ったきっかけは。

 海外にいた2007年に北海道夕張市の財政破綻を報道で知り、日本の地方の疲弊に気付いた。そして今、香川県にこれだけ企業があるのに、なかなか人が来てくれないことに焦燥を感じている。国内にある会社の約97%が中小企業。目を向けてくれないのは残念。

―香川県の企業経営者の話を聞いて感じることは。

 「うちの会社には特にアピールすることなんてない」という経営者がいる。でも話を聞いていると、どの企業にも魅力的な個性がある。商品やサービスに限らず、経営者の人柄だったり、従業員の労働環境を良くする取り組みだったり、多種多様。個性こそ新卒者を引きつける。個性を見つけ出し、求人記事という形で光を当てたい。

 個性という名の「資源」発掘が大切。実は途上国での地域開発も同じだった。その地域には必ず眠っている資源がある。地域住民と一緒に探し求め、地域開発に活用した。例えば、ベトナムの北部山岳地帯の村落には医療機関がなかった。山に生えている薬草が医療用に使われていることに着目し、畑にさまざまな薬草を植えて必要な時に入手できるようにした。資源の発掘と活用は求人情報の発信でも非常に大事だ。
―どうすれば地方からの流出を緩やかにできるか。

 突破口として考えているのは主に3つ。一つめは学校と地元企業の連携を強めること。香川県で就職したい気持ちのある学生に、地元企業の魅力を伝える。弊社では2021年卒の就活生を対象に有料の職業紹介事業を始める。一人でも多くの就職につなげたい。

 二つめは「頭脳流出」を課題だと認識している地元の人たちとの取り組み。途上国の地域開発では、住民を巻き込んでプロジェクトをつくり、続けることが大切だった。日本国内でも同様だと感じる。地域を良くしたい、貢献したいという思いを持つ人たちが多いので、彼ら彼女らと協力し、流出に歯止めをかけたい。

 三つめは、企業の価値を知名度や規模で測るものさしを取り払い、仕事の本質を捉え直す場をつくること。人の価値は学歴で決まらない。企業の価値も表面的な要素では測れないはずなのに、就職の際にはそれらが尺度になってしまっている。経営者の哲学や生きざまなど、目に見えないものを判断基準に加える必要性を訴えたい。

 こうした取り組みを通して、地域振興の源となる中小企業に若者が就職する流れをつくり、香川県の発展につなげたい。最終的に日本の発展につながる。

  ×  ×  ×

 飯原美保(いいはら・みほ) 1972年9月19日生まれ。香川県観音寺市出身。立命館大学国際関係学部を卒業後、韓国、米国、オーストラリアの大学院に学ぶ。2001年に特定非営利活動法人アムダ(岡山市)に就職し、コンサルト会社やJICA四国(高松市)を経て、11年に父が経営する「株式会社求人タイムス社」(観音寺市)に入社。17年に分社化した「株式会社しごとマルシェ」(高松市)で取締役専務を務める。

香川の転職・求人サイト【しごとマルシェ】

https://4510marche.jp/

0 件のコメント:

コメントを投稿