2019年12月4日水曜日

「教育現場から気候変動対策を」、先生・学生らが訴え

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191202-00010001-alterna-env
12/2(月)、ヤフーニュースより

みんな電力(東京・世田谷)は12月2日、シンポジウム「今こそ教育現場から気候変動対策を!――RE Action For Teachers」を衆議院第一議員会館で開催した。国立環境研究所地球環境研究センターの江守正多副センター長、新渡戸文化学園の山藤旅聞教諭による基調講演が行われたほか、パネルディスカッションでは「次世代に対し、本気で気候変動対策に取り組む大人の姿を見せられていない」といった問題提起がされた。(オルタナ副編集長=吉田広子)
■「化石燃料文明」を卒業へ
気候危機が深刻化するなか、発電時にCO2を排出しない再生可能エネルギーは、気候変動対策の重要な施策として位置付けられている。SDGs(持続可能な開発目標)の目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」でも、再生可能エネルギーの割合を大幅に増やすことが目標に掲げられている。

「顔の見える」電力を推進するみんな電力の大石英司代表は、冒頭の挨拶で「コンセントの先に何があるのか。電気はどこから来るのか。払った電気料金はどこに行くのか。ぜひ一度考えてみてほしい」と呼びかけた。

原田義昭・前環境大臣は、グレタ・トゥンベリさんの言葉を引用しながら、「今こそ気候変動対策をしなければならない。今回のシンポジウムが目指すように、先生が率先して環境教育に取り組み、生徒に教えることが地球を守ることにつながる」と強調した。

地球環境研究センターの江守副センター長は基調講演「気候変動を巡る世界の動向」のなかで、「このままいけば2040年前後に1.5℃上昇、2050年前後には3-4℃程度上昇する」と危機感を示した。

気温が上昇するほど、「海面上昇」「洪水」「台風」「熱波」「食料不足」「水不足」「海の生態系の損失」「陸の生態系の損失」といったリスクが高まる。

江守副センター長は「パリ協定で目指している1.5℃未満に抑えるためには、2050年前後にCO2排出量をゼロにする必要がある。『脱炭素化』はイヤイヤ努力して達成できる目標ではない。社会の『大転換』が起きる必要がある」とした。

「石器時代はなぜ終わったか。石が無くなったからではなく、土器や金属などより良い代替手段が見つかったから。人類はまさに今世紀中に『化石燃料文明』を卒業し、CO2を排出しない再生可能エネルギーに変わろうとしている。石器時代と同じ転換がいま起きようとしている」(江守副センター長)
■「大人が答えを教えられない」
新渡戸文化学園の山藤教諭は、「持続可能な社会にするための答えを大人が教えることができない。だからこそ、大人の持っている経験とステークホルダーとの関係性を生かして、子どもたちと一緒に未来をつくろうという姿勢が重要だ」と語る。

同校はSDGs(持続可能な開発目標)の推進に力を入れている。同校の中学1年生3人は、誰でも取って食べて良い果樹を道に植える「ポリネーションストリート」の企画、FSC(森林認証協議会)認証紙の拡大、電力に関するプロジェクトなど、それぞれの取り組みを発表した。

生徒が自ら学ぶ姿勢を育てる山藤教諭は「実はエネルギー問題については、生徒から教えてもらった。目標7は一番遠い問題だと思っていたが、身近な問題だと知ることができた」と話す。
■環境活動で志願者数が8倍に
パネルディスカッション「SDGs目標7『エネルギーをみんなに そしてクリーンに』の実現に向けて」では、星槎の井上一氏、横浜YMCAの田口努総主事、自由学園の鈴木康平学園長補佐兼環境文化創造センター次長、自由の森学園の鬼沢真之理事長、千葉商科大学の橋本隆子副学長が登壇、日経エネルギーNextの山根小雪編集長がモデレーターを務めた。

自由の森学園の鬼沢理事長は、「グレタさんは、学校に行かず気候変動対策を訴えている。未来がないのに、なぜ学ぶ必要があるのかという深刻な問いを、教育者に突きつけた」と切り出す。

星槎の井上氏は「日本全体として、自分たちで社会を変えて行けるという実感がないのではないか」と話し、千葉商科大学の橋本副学長も「大人の姿勢がそのまま学生に反映されている」と同調した。

日本で初めて「再生可能エネルギー100%大学」を実現した千葉商科大学は、2013年に方針を定め、2014年度に「太陽光発電事業」を開始。2019年1月度までの1年間の再エネ率が101%に達した。

橋本副学長は「環境への取り組みは戦略でもあり、実際に志願者が8倍になった」と、その効果を語る。

横浜YMCAの田口総主事は、「福島第一原子力発電所事故が起きて、コンセントの先に福島が見えた」と話し、2019年9月に青森県「横浜」町の風力による電力の利用を開始し、「ヨコヨコプロジェクト」を立ち上げた。

自由学園の鈴木学園長補佐は「企業と消費者が同じ土俵に立ち、目標を共有し、話し合うことが大切だ。企業も消費者も価格だけではない、ものさしが必要ではないか」と投げかけた。
■「電力総選挙」で発電事業者を選定
シンポジウムの後半には、5校の学生がそれぞれの取り組みを発表した。

「環境学」を学ぶ自由の森学園の柏倉和奏さんは、営農型発電施設を見学するなど、環境や再生可能エネルギー、農業などについて広く学んでいる。「日本の電力を再エネにするには日本政府の力、日本全体で取り組むことが必要だ。だが、多くの人が知らない。手遅れになる前に行動しなければ」と訴えた。

同じく自由の森学園の浅見風さんは、2011年の原発事故をきっかけにエネルギーのあり方に疑問を持つようになったという。現在は「足元から地域を変えたい」との思いで、林業講座を受講している。同校の電力切り替えの際には、「電力総選挙」を実施し、どの発電事業者を応援したいか投票を行い、事業者と「顔の見える」関係を築いているという。

ベトナム出身の横浜YMCAのレザンリンさんは、「主に先進国が温室効果ガスを多量に排出したことが気候変動の原因の一つ。問題が起こる前に対処が必要だ。ベトナムでも再生可能エネルギーが広まれば」と意気込んだ。

同じく横浜YMCAで、アフリカ南東部沖の島国マダガスカル出身のラスアヌタヒナミラナジョシアさんは「日本が夜でも明るいことに驚いた」と話し、SDGsの重要性を訴えた。

星槎からは河野航大さんと石岡莉沙さんが登壇。同校では「自分たちの行動、選択が未来につながっている」という考え方をベースに、全国に30ある生徒会で、自分たちにできることは何かを常に考えているという。

同校は「星槎電力プロジェクト」を立ち上げ、みんなにエネルギーについて知ってもらうおうと、全国生徒会研修では自転車をこいだエネルギーで動くガチャガチャ(ガチャリンコ)を実施した。

自由学園からは黒沼佑哉さん、小林遼さん、石丸文香さんが登壇し、「ネパールワークキャンプ」について発表した。同校は30年来、ネパールの荒れた産地で苗木を植樹する活動などを続けている。成木を伐採するという話もあったが、話し合いをするなかで、現地住民自ら森を維持する決断をしたというエピソードを披露した。

千葉商科大学の保科友紀さんは、学生団体「SONE」で、学生に無理をさせない省エネ活動を提案する。その一つが「省エネパトロール」で、教室をまわり、無駄な電気が使われていないかをチェックしている。楽しく省エネを体験してもらうため、太陽光発電の電気を使用したイルミネーションも企画する。

こうした学生の取り組みに対し、江守副センター長は「自分が学生だったころを思い出した。素晴らしい行動力だが、実際の社会の変化は遅く感じるかもしれない。こうした若い人が常識を変えていくのを応援していきたい」と激励した。

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