2019年12月12日木曜日

2025年には普及率67%、「5Gスマホ」市場はこう動く

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191209-00037274-biz_plus-sci
12/9(月) 、ヤフーニュースより
 米国による華為技術(以下、ファーウェイ)の禁輸措置が続くなど、大きな変動を見せているスマートフォン市場。5Gの商用化が本格化している中で、同市場は今後どう変化していくのだろうか? 調査会社Counterpoint Technology Market Research(以下、カウンターポイント)のTom Kang氏が、2020年以降の市場予測やトレンドなどを解説する。

【詳細な図や写真】グローバル市場のスマートフォン売上高推移・予測(出典:講演資料より)
●スマホ市場は2年連続でマイナス成長、2020年以降は好転

 2018年、グローバルにおけるスマートフォンの売上高は4,000億ドルを超え、年間2億台が出荷された。順調に拡大を続けてきたこの巨大な市場が2018年、前年比でマイナス成長を記録した。2019年も引き続きマイナス成長となると予想されている。

 テクノロジー・メディア・通信業界に特化した調査会社・カウンターポイントでリサーチディレクター テレコム業界担当を務めるTom Kang氏は「さまざまな理由が考えられるが、最大の要因は米中の貿易紛争だ」と断言した上で、「しかし、2020年以降は再びプラス成長を見込んでいる」と話す。

 市場を成長させる1つの要因が「5G(第5世代移動通信システム)」だ。特に巨大市場である中国で5G市場が立ち上がることで、2020年以降はプラス成長に好転すると予測している。


●米中貿易戦争とファーウェイショックの影響は?

 Kang氏は「2025年がファーウェイの禁輸措置における非常に大きなポイントになると考えている」と説明する。

 現在、中国政府は「中国製造2025(Made in China 2025:MIC2025)」という成長戦略を掲げ、2049年までに「世界の製造大国」としての地位を築くことを目指している。半導体や航空機、宇宙航空、産業向けロボットなどが重点分野だ。そのどれもが米国が覇権を握りたい分野であり、米国にとっては好ましくない状況になりつつある。その流れを受けて、米国のトランプ政権が中国のファーウェイの通信機器の採用を安全保障上の理由から認めず、欧州や日本などにも同社排除の圧力をかけているのは周知の通りだ。

 「ファーウェイの措置は、両国の戦いの始まりにすぎない」とKang氏。2019年10月には、安全保障上で問題がある団体を列挙した「エンティティー・リスト」に、ドローンメーカーであるDJIや監視カメラを手掛ける杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)などのテック企業8社が追加されている。背景には、ムニューシン米財務長官、ライトハイザー米通商代表などの米国政治家が中国成長を恐れているという事実があるとKang氏は指摘した。

 ファーウェイの地域別の出荷状況を見てみると、約半分が中国国内、残り半分が欧州を中心として出荷されている。主要な製品は100ドルから300ドルの間の価格帯のものだ。「2019年後半は下降傾向が予想されるが、年内は持ちこたえる」とKang氏は予測する。

 2019年第4四半期(Q4)の予測としては、中国国内のファーウェイの出荷シェアが50%から60%近くまで上昇し、欧州での売り上げがゼロになると見ている。グーグルが提供する主要ソフトウェア「Google Mobile Service(GMS)」のファーウェイでの使用が不可能となったことが原因だ。


 Kang氏は「多くの関係者がファーウェイの輸出禁止は今後なくなっていくだろうと予測している。だが、我々はファーウェイが大きなビジネスの変革を起こすまで(禁輸は)続くと考えている」との見解を示す。その上で「ファーウェイの禁輸措置で一番影響を受けている企業は、サムスンだ」と説明する。サムスンは南米諸国を中心にファーウェイの市場を脅かし、売り上げを伸ばしていくという。

●インドやベトナムを次の製造拠点に移したい米国

 Kang氏は、米国の対応は1980年代の対日施策にも類似していると指摘する。「あくまで米国が中国を規制しようとする最初のステップにしか過ぎない。次の行動として、中国をWTO(世界貿易機関)から外すという動きも想定される」とKang氏。現在、WTOの紛争解決の役割は機能不全の危機に陥っている。米国がWTO上級委員会の委員任命を拒否しているためだ。2020年以降、米国の資本が中国に、または中国企業がウォールストリートに進出することが禁止になる可能性もある。

 さらに米国の製造基地の移転も進むと予測されており、米国はインドやベトナムを、中国の次の製造拠点にしようとしているという。また、アップルやサムスンはインドを輸出のハブ拠点として位置付けており、アップルは欧州への、サムスンはスリランカやパキスタン、ネパールなどへの輸出ハブとしてインドを活用していると指摘する。

 ただ、Kang氏がヒアリングしている企業の間では、まだ中国にコスト・アドバンテージがあるという。

「インドやベトナムの労働力は中国よりも安いが、中国にはサプライチェーン全体がそろっている。サプライチェーン全体をほかの国が持たない限り、生産費用は中国のほうが安いということになる。加えて、インドでは停電が起こったり、道路が整備されていなかったり、インフラ部分に課題がある」
サムスンファーウェイシャオミ、アップルが争う現状

 ここからは、携帯電話/スマホ市場の最新動向を紹介していこう。

 2018年8月から2019年8月までの月別推移では、サムスンが首位、ファーウェイが続いている。特に「Samsung Galaxy A」シリーズが好評だという。米中貿易戦争以前はファーウェイの躍進が期待され、数年以内にサムスンに追いつくと予想されていたが、現在はサムスンが盛り返している。ただ、「ファーウェイについては、一部の部品メーカーがファーウェイからの発注が回復しているといっているが、GMSの使用不可問題もあって一時的な動きだとみなしている」とKang氏。


 ファーウェイ以外の中国系企業も勢いがある。小米(シャオミ)は市場が大きいインドでの採用が進んでいる。また、Kang氏が特に注目しているのが、歩歩高(BBK)グループだ。OPPOやvivo、Realme、OnePlusなどの複数のスマホブランドをそろえる同グループは、それぞれのブランドを足すとファーウェイよりも多く出荷していることになる。

 また、2019年9月に新製品を投入したアップルの動きも好調だ。アップルの売り上げはiPhone 6以降下がり続けているが、5Gの登場により2020年以降は反発するとKang氏は言う。「アップルの5G製品には大きな期待がかかっている。その市場投入を日本、米国の携帯事業者は待っている状況だ。アップルの愛好者が多い国では、5G市場はゆっくりとした発展になると考えている」と同氏。「iPhone 11シリーズは当初の予想よりも売り上げが上回るだろう。価格戦略もうまくいっており、iPhone 7ユーザーからのリプレースする需要が多く見込まれる」と分析する。

●デュアルカメラ、ノッチに続くイノベーション「フォルダブル」

 カウンターポイントでは、スマホの構成部品ごとの価格調査も実施している。それによると、2015年から2019年にかけて、メモリの価格が下がり続ける一方で、ディスプレイやカメラの価格が上昇しているという。その背景には、ディスプレイの大画面化とカメラの複数搭載が主流になっていることがある。


 ディスプレイ上部の切り欠き、いわゆる「ノッチ」付きスマホがトレンドになっている。「iPhone X」以降の多くの機種で採用されており、「ティアドロップ型」や「パンチホールド型」などの種類がある。Kang氏は今後もノッチ付きデザインを採用する機種が増えると予測する。

 また、スマホの次のイノベーションとして「フォルダブル」(折れ曲がる)を挙げる。同社が実施した米国の消費者調査によると、フォルダブル型スマホなら1000ドルを払ってもいいという回答も多かったという。Kang氏は「2020年以降、値段が下がればより普及率が高まる。アップルも2021、2022年にはフォルダブル製品を投入すると予測され、今後はマストハブの存在となる」と説明する。

●5Gスマホの普及率は2025年に67%に達する

 日本でも2020年に商用サービスが本格化されるなど急速な展開が予想される5Gスマホは、どこまで普及するのだろうか。

 Kang氏は「5GスマホにはAR/VRなど消費者が欲しがるアプリが多くそろっている。多くのオペレーターが4Gでの成功体験をしているため、それを上回るペースで普及するだろう。5億台という予測もあるが、チップセットの生産能力が限られているので、2億台程度になる」と説明する。

 また、2025年までに5Gスマホの普及率は67%とまで伸び、同市場の半分を中国が占めると予測する。その先導役となるのが、ファーウェイであるという。「ファーウェイは他社にない技術力を持っており、アドバンテージがある」と話した。
(※本記事は10月16日開催「第4回 DSCC JAPAN セミナー(主催:DSCC)」での講演内容をもとに再構成したものです。)
(執筆:翁長潤)

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