2019年12月27日金曜日

2019年「セブン、ファミマ、ローソン」の明暗、2020年に待ち受けるコンビニ「2つの課題」

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191227-00600631-shincho-bus_all
12/27(金) 、ヤフーニュースより
 昭和に生まれ平成に盛隆を極めたコンビニは、令和を迎えた今年、さまざまな問題に直面した。ときには本部から店への“圧”が明るみに出るなど、ブラックな側面もチラリ……。2020年、あるべきコンビニ像とは。

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 ネガティブなニュースが目立ったコンビ二業界の2019年だったが、そんな中でも、喜ばしい変化はあった。このたび『コンビニが日本から消えたなら』(KKベストセラーズ)を上梓した流通アナリストの渡辺広明氏に、3大チェーンの2019年を振り返ってもらおう。

 まずは4月に発表した新感覚スイーツ「バスチー」が3日で100万個の売上を記録し、昨年の「悪魔のおにぎり」に続いてヒットを生み出し続けているローソンについて。

「どんなに接客がよくても、どんなに店が便利な場所にあっても、棚に並ぶ商品に魅力がないことには始まりませんからね。ヒット商品を生み出し続けている点は素晴らしいです。かつローソンは、『セルフレジ』の導入が3大チェーンの中でもっとも進んでいます。ローソンは2010年から取り組み始め、2019年2月に、新型POSレジの全店導入を達成しました。新型レジの何がすごいかというと、店員が打つ“有人モード”にも、“セルフモード”にも、どちらにも切り替えられる点です。しかも新型レジでは、外国人従業員でも操作がわかりやすいよう、中国語、ベトナム語、ネパール語の多言語に対応しています」

 厚生労働省が2019年1月に発表した最新の数字によると、日本の外国人労働者数は過去最高の146万人を突破。いまやコンビニのレジに外国人店員がいることも当たり前の光景だが、ゆえに生じたトラブルもあった。そんななか“神対応”を見せたのが、ファミリーマート(以下ファミマ)だった。

「3月、新宿・ゴールデン街のファミマに掲示されていた貼り紙が、SNSで話題になりました。〈特定のお客様から人種差別と言わざるを得ない発言がありました〉とはじまるもので、いわゆるヘイト発言に抗議する内容です。外国人労働者はレジを適切に打てるし、態度の悪い客にもしっかり対応するなど、なかなか優秀です。ただ、先のローソンが多言語レジを導入したことからもわかるように、店頭に立つには相当の日本語スキルが必要。外国人技能実習制度の対象に、コンビニ運営を入れる動きもあったほど。今年は追加が見送られてしまいましたが……」

 そんなファミマの対応の良さは、食品ロスに対しても同様だった。4月には食品ロス対策として、おせちや大型クリスマスケーキなど季節商品の販売を予約制にすると発表。土用の丑の日の「うなぎ」では、店頭販売を希望した店舗を除く70%の店舗で完全予約制が実施され、結果、販売額は20%減少したものの、利益は70%も増加。廃棄費用が減ったので、利益を大きく伸ばしたのだ。
セブンは…
 反対に、セブン-イレブン(以下セブン)の2019年は対応の不味さが目立った年だといえる。24時間営業に反旗を翻した大阪の店舗とのトラブルや、本部社員によるおでん無断発注や残業代未払い、7Pay(セブンペイ)の中止などなど……。10月に発表された2020年2月期第2四半期決算では、10期ぶりの前年比マイナスを計上した。一方、ファミマローソンは業績を伸ばしたから、一連の問題が影響したことは明らかだ。

「2020年のセブンは立て直しをはかる年ですね。19年は、ネガティブなニュースが多かったため目立ちませんでしたが、じつは未来を見据えた良い取り組みも行ってはいたのです。12月12日にリニューアルオープンした麹町駅前店は、少人化・省力化の実験店舗と位置付けた未来志向の店舗です。たとえば、導入されているのが、たばこの新型什器。従来のコンビニ販売は、お客様が告げる『番号』を伺い、店員が後ろの棚から指定の銘柄を取ってくるというものでした。しかしながら、いきなり『銘柄』で注文するお客様もいて、タバコを吸わない、知識のない従業員がもたつくことも多々ありました。さらにカートン単位の注文にはバックヤードから取ってくる手間もあった。ところが新型什器では、お客様がタッチパネルで注文すると、商品がストックされている箇所の棚が光るんです。店員はそこから商品を取ってくればいい。コンビニの売上の25%を占めるというタバコの販売の労力が減るのです」

 本来ならばこの麹町駅前店の発表もマスコミを招き大々的に宣伝するはずだったが、その矢先に残業代未払い問題が噴出し、発表会は立ち消えになったそうだ……。
2020年 コンビニの課題
 ではこれらを踏まえたうえで、渡辺氏に2020年のコンビニの“課題”を語っていただこう。ポイントは2つある。

「ひとつは、そろそろ各社『男性向け』の商品開発に力を入れるべきではないか、という点ですね。ローソンの『バスチー』の成功は喜ばしいところですが、スイーツしかり、ここ数年のコンビニは女性をターゲットの中心に据えた開発に力を注いできました。男性客が約7割を占めるとされていたコンビニが変わったのは、11年の東日本大震災がきっかけでした。関東圏は小売店が品薄になったことで、女性客や高齢者層はコンビニの食品や日用品を手に取ることになった。そこで初めて、コンビニの商品の良さを認識したと言われています」

 以降、各社ともに女性客の割合は増えていった。ローソンは14年度のレポートで女性客が全体の約45%を占めるとし、セブンも17年2月期の時点で、女性の割合が47・4%と公表している。ファミマも、客の男女比を5:5にしたい考えだという(流通ニュース19年5月10日配信記事より)。

「コンビニ業界全体で目を向けてみると、売上高は一貫して伸びてきていて、08年からの11年間で7・86兆円から10・96兆円に成長しています。ところが、1店舗あたりの売上高(日販)は、12年の55・40万円をピークに微減微増を繰り返し、18年は54・31万円に減っているのです。いずれも経済産業省が発表した数字です。これは、もちろんコンビニの店舗数が増えすぎ、競合が激しくなっていることが最大の原因ですが、女性客を取り込んでも、それほど個々の店が儲かっていない、という側面も無視できません。これを打破するにはどうすればいいのか。人口の約半分が男性ですから、ここで男性客を取り戻す試みを行うことが、現実的な対応だと思うのです。具体的には、小洒落たスイーツやパスタだけでなく、シンプルなシュークリームやエクレア、ミートソースやナポリタン、に力を入れるわけです。個人的には、ファミマやローソンは女性顧客目線が多い印象をもっていますが、並行して男性顧客目線のマーチャンダイジングも重要です」

 男女といわず、若者を取り入れればいいのではという気もするが、「2019年の出生率は90万人割れ。少子化が進む状況で、若年層はターゲットにしにくい」と渡辺氏は見る。その流れでいえば、2つ目のポイントとなるのが店舗の「ワンオペ化」だという。

「いま、外国人労働者が積極的に入ってきていますよね。先に述べた通り、私も基本的には大歓迎です。が、今後も外国人は働きに来てくれるのでしょうか。日本の経済力が落ちれば、働き手は中国や経済発展著しい東南アジアに流れて行ってしまいます。加えて、働き方改革が叫ばれるように、従来の無理な働き方も難しい。そして、若年層もいない。となれば、真っ先に取り組まなければならないのは、店の省力化でしょう。ずばり2020年は、各社のセルフレジ競争の年になります」

 今も時折コンビニの店頭に立つ渡辺氏の体感では“きちんと接客してほしい”客は、1000人中の500人。約半数は、とくにコンビニに接客を求めていないという。先述のタバコ注文のほかにも、公共料金の収納代行や弁当の温め、Amazonやメルカリの受付……と、ひとりの客の対応に2-3分を要するサービスも少なくない。これらの省力にむけた“進化”も、次の知恵の絞り所だろう。

「イメージはガソリンスタンドですね。機械でできることは機械に任せ、人力が必要なところは人力でやる。セルフレジがうまく機能すれば、店頭に立つ人間は一人いれば足りる。だからコンビニは『ワンオペ』になるべきです。もっとも、万引きの対策は必須ですけれど……」

 2020年もコンビニにはお世話になります! 

週刊新潮WEB取材班

2019年12月27日 掲載
新潮社

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