2021年2月18日木曜日

ネパール 12歳、休校で働き手に

 Source:https://mainichi.jp/articles/20210211/ddm/012/040/078000c

 
 
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 <世界子ども救援キャンペーン>

カトマンズのスラム街で暮らすアイショリヤ・サヒさん。家族の生活を支えるため、市場へ働きに出たという=アジア協会アジア友の会ネパール事務所提供拡大
カトマンズのスラム街で暮らすアイショリヤ・サヒさん。家族の生活を支えるため、市場へ働きに出たという=アジア協会アジア友の会ネパール事務所提供

 アジアで最も貧しい国の一つとされるネパールの首都カトマンズ。国内唯一の国際空港・トリブバン空港に近いシナマンガル地区の川沿いに非合法の住宅が並ぶスラム街があり、約3万人が暮らしている。ここで食料やマスクなどを配布してきた公益社団法人「アジア協会アジア友の会」(大阪市西区)ネパール事務所のレシナ・バジュラチャリヤさん(24)は、昨年9月に出会った少女、アイショリヤ・サヒさん(12)のことがずっと気になっている。

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 世界銀行によると、ネパールの1人あたりの国民総所得(GNI)は、2019年は1090ドル(現在のレートで約11万円)で、日本の38分の1しかない。特に貧しいと言われるこのスラム街の人たちは、荷物を担いで運んだり、建設現場で日雇い労働をしたりして生活費を稼いできた。バジュラチャリヤさんによると、建設作業員だったサヒさんの父親は、昨年3月からのロックダウン(都市封鎖)や、8月からの行動規制のため仕事を失い、自殺を図るほど精神的に追い詰められたという。

 母親は関節炎を患っていて働けない。学校が休みになったサヒさんは、皿洗いや料理など家の手伝いに加え、毎日、市場で掃除などをして働いた。その見返りに売れ残った野菜を持ち帰り、近所で転売して米などを手に入れ、両親や妹弟を支えた。当初は口数が少なかったが、何度も顔を合わせるうち、バジュラチャリヤさんに「学校に行って友達に会いたい。ダンスが好きだから将来は女優になりたい」と夢を打ち明けてくれたという。

 ネパールで確認された新型コロナウイルスの感染者は約27万人、死者は約2000人。昨年10月をピークに感染者は減り、徐々に行動規制は緩和された。バジュラチャリヤさんによると、サヒさんは父親が新たに得た野菜売りの仕事を手伝いながら、1月から再び学校に通い始めたという。

 国連児童基金(ユニセフ)の14年の発表によると、バングラデシュやインドなど、ネパールを含む南アジアでは5~14歳の約12%が働かされている。ユニセフと国際労働機関(ILO)は昨年6月に出した報告書で、新型コロナのため、この20年間で初めて児童労働が増加する恐れがあると警鐘を鳴らした。

 ネパールで10年以上、児童労働を減らす活動をしてきたNPO「シャプラニール=市民による海外協力の会」(東京都新宿区)のスタッフ、菅野冴花(さえか)さん(33)は危機感を募らせる。「一大産業の観光業界が特に打撃を受けており、影響はさらに大きくなると思う。子どもを働かせないよう親たちに伝え、学用品を提供することなどで通学を後押ししていきたい」【宮川佐知子】=随時掲載

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