Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/6f9f2f2729fefd0b3c4c453c4609d4fa8e8d3b86
高齢化、少子化、貧困、教育……日本にはさまざまな社会問題が山積しています。その解決法として注目されているのが「寄付」「遺贈寄付」であり、その文化を広めることが課題となっています。今回は公益財団法人国際医療技術財団(JIMTEF)の小西理事長に、新型コロナウイルスのパンデミックに直面する開発途上国の現状と対策について解説いただきます。
開発途上国に「感染リスク」が高い住民が多い理由
新型コロナウイルスが世界中に蔓延しているところ、新たに変異ウイルスが出現し、その感染力の増強が懸念されており、先進国・開発途上国へ分け隔てなく悪影響を与えている。開発途上国における感染者数は4,700万人、死者数98万人に上っている。日本では感染者数40万人、死者数6千人に至っている(2021年2月6日時点・WHO推計による・開発途上国は全世界推計よりOECD諸国を引いて算出)。 新型コロナウイルスは格差を助長し、社会を分断するとされている。社会経済的地位が相対的に低い開発途上国は、食料不足に加え、マラリア、エイズや結核など他の疾病に感染しているため、慢性的な栄養不足による免疫力低下により感染リスクが高い住民が多い *1 。 また、新型コロナウイルスによる失業、収入減、教育機会喪失のリスクも社会経済的地位と相関しており、新型感染症によって格差拡大が長期的にもたらされることが懸念されている *2 。 日本は貿易立国であり、その資源の多くを輸入に依存しており、観光業はじめ、外国との自由な行き来なしには生きていけない産業も多い。そのため、全世界的な新型コロナウイルスの終息なしには、日本での安全な暮らしや経済回復は期待できない。 今日世界はグローバル化しており、相互扶助の精神が一層求められている。地球の構成メンバー同士、互いに助け合い、支え合うことが大変重要だ。
開発途上国は医療体制が「ひっぱく」し、マスクも不足
開発途上国は、慢性的な医療資源不足状態にあった。先進国において住民1,000人あたり医師3人、看護師8人いるのに対して、開発途上国では医師0.2人、看護師1人である *3 。 新型コロナウイルスはこの惨状にさらに負荷をかけた。たとえば、アフガニスタン、バングラディッシュ、コンゴ共和国、ハイチ、ネパール、セネガル、タンザニアの7ヵ国においては、医療者用のマスクがある医療施設が1/3以下である *3 。 世界的な医療資材の需要の高まりは値段高騰を招いており、医療用マスクは20.5%も値上がりした *3 。これにより、開発途上国では一層医療資材を入手しにくくなっており、そのため衛生状態の悪化が進んでいる。
開発途上国における「新型コロナウイルス対策」
新型コロナウイルス感染リスクが高い開発途上国における感染症の広がりについて、日本のニュースではあまり見ない。その理由の1つは、ある程度感染を抑えられている点にある。開発途上国は世界人口の85%を占めるが、新型コロナウイルス関連死の25%しか占めていないとされている *4 。 それはエボラ出血熱、SARS、MARSなどをはじめとする数多くのパンデミックの経験から、より少ない資源で効率的に対応可能な体制ができているからである。 まず感染者を発生させないための政策が多くみられる。たとえば、インド洋に浮かぶモーリシャス共和国は、国内で感染者が発見される2ヵ月前の2020年1月22日には空港でのスクリーニング強化を始めていた。ベトナムにおいては症状でなく、感染リスクに基づいた隔離政策を実施した *5 。 また、新型コロナウイルス感染症の封じ込めに有効な3原則(検査する・追跡調査する・治療する)を強化するための様々な取り組みも見られた。Africa Centres for Disease Control and Prevention(アフリカCDC)においては検査能力を高めるために、医療者を対象に臨床検査方法のトレーニングを行い、アフリカ大陸全土に派遣を始めている *5 。 医療資材を安定供給するため、アフリカ連合はAfrica Medical Supplies Platform (AMSP)を構築し、国の枠を超えた医療資材の共同購入を始めた *5 。 国連は開発途上国の新型コロナウイルス対策に対する資金的援助に加えて、社会基盤・教育基盤に対する支援を先進国に呼び掛けている *6 。
日本が支援できるのは「人材育成」と「社会基盤構築」
日本国政府は開発途上国の新型コロナウイルス対策に対して、1,600億円以上の医療・社会的支援、さらに4.7億円の円借款を表明した *7 。特に医療機器の提供、人材育成の支援、経済再生支援を行うとしている。 日本国内における感染症対策と経済対策が両立できる開発途上国支援として、人材育成と社会基盤構築の支援があげられる。 たとえば、国際医療技術財団(JIMTEF)は1988年から開発途上国の臨床検査技師、医師、薬剤師を対象にした臨床検査技術に関する国内研修を実施し、現在437名の修了海外研修生を89カ国へ送り出している。医療技術先進国として、このような取り組みのオンライン化と国際協力事業の拡大を加速させることの意義は大きい。 本財団JIMTEFにおいては、本年3月9日から9ヵ国の開発途上国(東ティモール、ミャンマー、サモア、イラン、ケニア、ザンビア、ガボン、シエラレオネ、南スーダン)に対して、新型コロナウイルス対策の一環として臨床検査技術に関するオンライン教育研修プログラムを実施することにしている。 また、社会基盤整備も重要である。WHOは、100以上の開発途上国が出産・死亡などの基礎的な医療情報を集約する能力がないとしている *8 。新型コロナウイルス対策において、正確な情報を国内外と連携することは重要である。IT先進国として日本が貢献できることは大きい。
公益財団法人 国際医療技術財団(JIMTEF)
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