2020年2月7日金曜日

生理中の「隔離小屋」で女性死亡のネパール 偏見は先進国にも

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200201-00032004-forbes-int
2/1(土) 8:00配信、ヤフーニュースより
ネパールでは、生理中の女性が隔離小屋へと追いやられる「チャウパディ(chhaupadi)」と呼ばれる伝統が違法とされてから長年たつが、人里離れた村ではこの慣習がいまだに日常的に行われている。

21歳のあるネパール人女性は昨年12月、家族の住居から90メートルほど離れたところにある「生理小屋」として知られる小屋に滞在中に死亡した。冬になると、夜間の村の気温は10度を優に下回る。そのため女性は、窓がない小屋で暖を取るため火をたいていた。

確実な死因は不明だが、煙の吸引や窒息、脱水症状、感染症、凍死、低体温症などいくつか可能性が挙げられる。女性が死亡しているのが見つかった後、女性の義理の兄弟である1人の男性が逮捕され、男性は女性に小屋での滞在を強制したとして取り調べを受けた。女性の夫は当時、インドで働いており不在だった。

ネパールの多くの地域では、生理は「触れることができない」時期と考えられており、女性はこの間、人や家畜から離れて暮らすことが義務付けられている。チャウパディの伝統は2005年、ネパール全土で違法とされたが、これが当局により実際に施行されることはまれだ。女性をこうした隔離生活に追い込んだことで告発された人がいたとしても、3カ月刑務所に入り、30ドル(約3300円)ほどの罰金を受けるのみだ。

この慣習によって毎年死亡者が相次いでおり、これまで多くの小屋が破壊されてきたにもかかわらず、生理中の女性はその他の形態での孤立を強いられている。

こうした隔離の習慣は、生理中の女性は不純なもので、他の人に触ったり台所に入ったり、動物や植物、井戸を触ったりすることを制限すべきという概念に基づくものだ。この習慣は出産や産後2週間にも適用され、母親と新生児はともに病気になったり亡くなったりする危険性が高い状態に置かれる。

人権団体はこの慣習を禁じているが、科学誌プロスワン(PLOS ONE)に2018年に発表され、100人以上の思春期の女の子(平均年齢15.5歳)を対象とした調査では、この時代遅れの慣習がまだ根強く残っていることが示されている。

調査対象となった107人の女の子のうち、72%は生理中、従来の隔離小屋や家畜小屋、家の外の中庭や、家の中で他の家族から離れた部分に4日連続で隔離されていた。また初潮時には、14日間の隔離が求められることが多い。

女の子らはこの時期トイレ設備の使用を制限されるほか、乳製品を飲まない、社会的に孤立させられるなど、生理に関する歴史的なタブーに基づき他にも制約を経験することが多い。多くの場合、毛布や電気、窓、寝具、十分な食べ物や水は与えられない。また隔離されている時期も殴られ続ける人が多く、置き去りにされて亡くなる人もいる。
ネパールだけではない 生理のタブーは先進国にも
生理に関するタブーは、ネパールの遠く離れた地域に限られない。インドで学校に通う女の子たちは清潔な生理用品を使用することができず、生理中は学校に通えず自宅で待機する必要があり、社会でのけ者にされている。

また中国では、多くの地域でタンポンが手に入らないため、女性や女の子らは生理の間、水泳などの多くのスポーツをすることができない。先進国とされている英国でさえ、生理用品の手に入りにくさや不足によって数十万人の女子生徒が毎月学校を休んでいる。

米国では最近、女性に対して差別的な方針として「タンポン税」なるものが認知されるようになった。厳密に言うとタンポンのみにかかる税というものは存在しないものの、特定の健康・医療製品が免税とされている州では、その中にタンポンが含まれていない。2018年現在、米国では36州でこの税制度が維持されている。一部の州ではこの撤廃のため動いていたが、進捗速度は遅い。

完全に正常な身体機能のせいで女性が社会的に孤立し死亡することは、非常に残虐で忌まわしいことだ。悲しいことに、こうした村に住む多くの住民は「清潔ではない」人を引き離すことで村の残りの住民を守り、家畜や作物の生育能力を維持できるといまだに信じている。

エボラ出血熱や、さらにはインフルエンザなど、感染力が高い病気にかかった人を隔離することが現在医療分野で推奨されているのと同様、多くの村人は生理中の女性を隔離することがコミュニティーのためになると信じているのだ。

明らかな違いは、生理中の女性が「不純」ではないということだ。また、伝染病により隔離されている患者と違って生理中の女性や女の子らは全くケアを受けることなく、命の危険にさらされている。これは、教育が大きく欠けていることを確実に示している。結果として社会的に孤立し、防げたはずの病気にかかり、死に至ってしまうこともある。

同じくらい悲しいことだが、辱めとしての「生理小屋」は米国でもいまだに存在している。当時大統領候補だったドナルド・トランプは2015年、ニュースキャスターのメーガン・ケリーと交わした白熱した議論に言及し、ケリーの怒りを「彼女のあの部分から血が出ている」と描写した。

トランプはその後、自分が言及していたのは鼻血だったと言い張ったが、ケリーを含め大半の人はトランプが明らかに生理中の怒った女性の軽蔑的なイメージを作り上げていたと感じていた。死に至る可能性もある「生理小屋」とは大違いだが、生理をタブーとする考え方がまん延していることは今でも世界共通のようだ。
Nina Shapiro

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