2020年2月25日火曜日

コンビニスタッフが覚える作業は、なんと1200種! 負担を減らすにはどうすべき?

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200223-00011307-besttimes-soci

2/23(日) 20:00配信、ヤフーニュースより

――あなたはコンビニのない世界を想像できますか? 

いまや日本の日常生活に欠かせない「コンビニ」。もしそのコンビニがなくなったとしたら……。コンビニの最新施策を分析し、小売業の未来図を説く書『コンビニが日本から消えたなら』の著者で、日本一のコンビニ流通アナリスト渡辺広明氏が問いかける。(『コンビニが日本から消えたなら』より一部抜粋し再編集)

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■カウンター周りの売り上げが4割を占めるいま、作業が多すぎるコンビニの仕事をどう見直していくべきなのか? 

 フランチャイズ契約の見直しを図る一方、現場でも人手不足に対応した仕組みを構築する必要があります。

 これを実現するためには、セルフレジの導入をはじめとした機械化が必須となってくるのです。

 現在、コンビニはカウンター周りの売上だけで約4割を占めています。店内で調理するファストフードやコーヒー、たばこ、各種受け付けなど、店員の作業がカウンターに集中しています。このため、品出しや清掃といったカウンター以外での作業を進めづらくなっている。この負担を少しでも減らすため、将来的に機械で処理できる作業は、すべて機械に任せるような体制を築くべきなのです。

 つまり、目指すべきは「AI&機械」と「人」による分業制です。そして、最終的には人が行うべき作業をも分業していきます。

 そもそも、コンビニの作業は多すぎるのです。当初こそレジ、品出し、発注、清掃といった一般的な作業のみでした。しかし、お客様のニーズをことごとく叶えていったのがコンビニなのです。宅配便の受け付けや店頭受け取り、予約販売、チケット販売、公共料金の収納、インターネット通販の受け取り、オークションサイト商品の発送、ファストフードの調理......など、いまや憶えるべき作業は1200種類とも言われています。こうした膨大な作業がアルバイト離れを招き、人手不足の一因となったのも否めません。だからこそ、負担を減らすためにも作業を分業するのです。 

 たとえば「清掃専門のアルバイト」がエリア内の複数店舗を担当する。これは、専門の派遣会社が業務を請け負うなど、 複数店を経営するオーナーであれば、いますぐにでも実現可能な分業です。また、業者から納品される時間帯のみに在駐し、複数店舗を回る「品出し専門のアルバイト」も良いでしょう。短時間の単純労働になる場合もありますが、これぞまさしく働き方改革です。労働者が多様化するなか、短時間労働のニーズも増えています。

 とくに、長時間労働に不向きな高齢者向けの、貴重な雇用機会の創出にもつながります。内閣府平成30年版高齢社会白書」によれば、2008年からの11年間で高齢者の就業率が伸び続けています。65~69歳の就業率は36.2%から46.6% で、70~74歳は21.8%から30.2%。いわゆる「余生」が延びるなか、たとえ金銭的な余裕があったとしても、社会との繋がりを求めて働き先を探す高齢者が増えているのです。

 シニア層の活用はコンビニ各社が検討していますが、先述の通り作業量の多さがネックとなり、積極的な採用には至っていません。人手不足解消と効率化を図るため、分業制を進める必要があるのではないでしょうか。
■慢性的な人手不足に悩むコンビニの救世主は、都市圏を中心に増える外国人アルバイト

 また、人手不足のなかで新たな労働力として期待されているのが外国人です。 厚生労働省によれば、2018年10月現在、国内の外国人労働者数は約146万人で、前年から約18万人増加し、過去最高を更新しました。政府は外国人労働者の受け入れ拡大を推奨していて、2018年12月には入管法改正案が成立。2019年度から5年間で最大34万5000人の受け入れを想定しているとのことです。

 コンビニでも外国人留学生のアルバイトは多く、JFA 一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会によれば、大手3社(セブン-イレブン、ファミリーマート、 ローソン)で働く外国人は2018年8月時点で約5万2000人。その多くは東京をはじめとした大都市圏ですが、全従業員総数(約78万人)の約7%を占めているのが外国人なのです。

 コンビニの人手不足対策においては、最終的にオーナーが1人でも運営可能な店づくりを目指すべきです。ただ、それはワンオペや無人店舗をはじめとしたあらゆる仕組みが整ってからの話なので、あくまでも長期的な目標です。大都市圏を中心とする現状では外国人の手を借りる必要があります。

 このため、コンビニ各社は外国人従業員向けの研修に力を注ぐなど、新たな労働力の獲得に動いています。とくにローソンでは、新型POSレジに多言語表示機能を追加。操作ステップを案内するナビゲーションでは、外国人労働者のなかでもとくに多い中国語・ベトナム語・ネパール語に対応させました。

 また、私個人としても外国人労働者にはとても期待しています。

 というのも、彼らは本当に優秀なんです。レジを適切に打てるし、態度の悪い客にもしっかりと対応しています。そもそもコンビニでは接客が必須ですから、一定の日本語能力がないと採用できません。外国人がコンビニの店頭に立つには、相当のスキルが必要なのです。日本企業はコンビニのアルバイト経験がある外国人留学生を雇用すれば、その企業の業績は伸びるのではとさえ思います。

 こうした事情から、コンビニ各社が加盟しているJFA 一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会は、外国人技能実習制度の対象職種にコンビニの運営業務を加えるよう要望していました。しかし、残念ながら2019年10月に外食業分野が追加された際、コンビニ業種は見送られています。

 思わず「何らかの思惑が働いたのではないか !?」と邪推したくなるほど残念でしたが、特定技能で外食業の接客が認められたため、いずれコンビニの接客も加わることを願っている次第です。
■日本は外国人との関係を見直すときが来た

 私は、将来的に〝日本式コンビニ〞を海外に広めるべきだと提唱しています。詳しくは本書の後半で論じますが、コンビニという素晴らしいシステムを海外に輸出することは、日本経済を救う手段のひとつとなるからです。

 その上で、コンビニが外国人労働者と良好な関係を築くことは、非常に価値あることです。国内マーケットが頭打ちと言われるなか、今後は海外にモノやサービスを売っていくことになります。ならば、外国人との付き合いを増やす必要があります。コンビニと外国人の関係は、インバウンド消費だけではないのです。来たるべき海外での戦いにおいて、多くのヒントが隠されていると思っています。これは、 ほかの小売業、他業種にも同じことが言えます。

 新たな気づきが生まれる場として、外国人労働者とどう関わっていくのかという命題は、きっと大きなビジネスチャンスへとつながっていくはずです。

 ただし、外国人労働者との蜜月の関係も残りわずかとも言われています。日本の経済力が落ち、魅力が薄れたら外国人労働者も来なくなってしまう。いまでこそベトナムやネパールなどから多くの労働者が訪れていますが、今後は中国や経済発展の著しい東南アジア各国に流れてしまうかもしれません。

 いずれにしても、人口が減りゆく我が国において、外国人との共生は欠かせないテーマです。2019年3月、新宿ゴールデン街のファミリーマートで働く外国人アルバイトが、客から人種差別的な発言を受けたそうです。これに対し、店舗側は来店者に強く注意を促す貼り紙をしたことがSNSを中心に話題となりました。

 移民を受け入れるか否かはデリケートな問題ですが、現状のままでは日本経済を維持していくのが難しいのも事実。雇い入れる側だけでなく、消費者側にも外国人との関係についての再考が求められています。

  コンビニは日本の誰もが利用する、日本国民が作り上げた、世界最強のリアル小売業であり、そのことに異論を挟む人はいないでしょう。 

 ただし、昨今、コンビニ問題がネットでテレビのニュースで話題となっています。

 いま必要とされている社会的課題との向き合いは、オーナー・本部ともに大変厳しい戦いとなります。そんな現状と処方箋を、日本の未来になぞらえて、この本を書きました。皆様が感じた異論反論・斬新なアイデアで、前向きな議論が活発化する機会になれば幸いです。

文/渡辺 広明

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