仁川空港検疫所を訪れ、激励する文在寅大統領夫妻(出所:青瓦台)
 中国・湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルス(新型肺炎)を予防し、拡大を防ぐためにも同じような被害を被っている、中国の隣国である日韓両国が情報を密に交換し、協力することが大事だ。前回(2月10日)に続き、日韓の現状を比較してみた。
 ▲感染者の数(14日午前9時現在)
 日本:29人(2月2日時点=20人、9日=26人)+クルーズ船感染者218人
 ※死者:1人(2月13日)
 韓国:28人(2月2日時点=15人、9日=27人)
 ※11日午前に28人目の感染者が確認されて以来、3日連続で感染者は発生していない。
 ▲全快者
 日本:10人(現在19人が治療中)
 韓国:7人(現在21人が治療中)
 ※1月22日に武漢から帰国した55歳の韓国人男性(1月24日に感染が確認)が2月5日に退院。翌6日には韓国国内で初めて感染が確認された35歳の中国人女性(1月19日入国)も退院。隔離から18日後の退院となった。さらに9日には1月20日に武漢から帰国した55歳の韓国人男性も全快し、退院した。そして12日に新たに3人が隔離を解除された。3人は1月20日武漢から帰国した50代の韓国人男性と1月23日に武漢から帰国した60代の韓国人女性、それに1月24日にシンガポールから帰国し、2月4日に医療機関を訪れて感染が確認された30代の韓国人男性。平均入院日数は13.1日。
 ▲アジア諸国の発症状況(2月2日→2月9日→14日)
 中国17205→37198→63851人(死者361→813→1380人)シンガポール16→33→50人 香港13→29→50人 タイ19→32→33人 台湾10→17→18人 マレーシア8→15→18人 ベトナム6→13→16人 豪州12→15→15人マカオ7→10→10人 インド1→3→3人
 ▲2次、3次感染者(14日午前9時現在)
 日本:2次(2人)、3次(?)
 韓国:  2次(6人)、3次(4人)
 ▲武漢からの帰国者(14日現在)
 日本:763人
 第1便=206人(1月29日) 第2便=210人(1月30日) 第3便=149人(1月31日) 第4便=198人(2月7日)
 韓国:841人
 第1便=368人(1月31日) 第2便=326人(2月1日) 第3便=147人(2月12日)
 ※チャーター機第3便で2月12日に湖北省武漢市とその周辺地域から韓国に帰国した147人のうち5人に新型コロナウイルス感染が疑われる症状。5人のうち1人は武漢出発時から症状が出ており、残り4人は韓国到着後の検疫で症状があることが分かった。
 ▲感染検査
 日本:6時間以内に結果が確認できる「リアルタイムPCR法」を検査できる機関も感染研や都道府県の地方衛生研究所などに限られていたため検査能力は1日最大300件程度だったが、2月12日以降は民間会社にも委託することで18日までには1000件超に増える見通し。さらに今後、自治体と連携して、検査体制の拡充、治療体制の充実を一層加速する
 韓国:当初は1回の検査で6時間以内に結果が確認できる「リアルタイムPCR法」の検査は疾病管理本部(国立仁川空港検疫所を含む)と全国18カ所の保健環境研究院のみで行われ1日に処理できる検査件数は約160件に留まっていたが、2月7日から感染検査の医療機関を増やし、「リアルタイムPCR法」の検査を保健所や医療機関でもできるようにしたことから現在1日5千人水準の診断ができる。今月末には2倍の1万人の診断を可能とする。
 ▲在留外国人への対応
 日本:感染症情報を法務省の外国人生活支援ポータルサイトで伝えている。
 韓国:ソウル市は2月11日、外国人支援施設の西南圏グローバルセンター(永登浦区大林洞)を新型コロナウイルスによる肺炎に関する外国人の相談・届け出窓口とした。同グローバルセンターでは英語、中国語、ベトナム語、フィリピン語、パキスタン語、ネパール語、モンゴル語、ウズベク語の8言語で相談を受け、要請があれば病院に同行して診察の通訳を行う。同所で対応できない日本語、タイ語、アラビア語、ロシア語、インドネシア語の相談は、ソウルグローバルセンター(鍾路区)で受け付ける。
 ソウル市は、不法滞在者であっても出入国管理当局に通報されることなく治療を受けられると強調している。公共医療機関の医療関係者は、職務中に出入国管理法に違反した人を見つけても、当局に通報する義務を免除される。
 また、外国人でも新型コロナウイルスに感染した場合は法律に基づき治療費が全額無料となり、隔離されている間の生活費の支援を受けられる。
 ▲渡航自粛国
 日本:中国湖北省に滞在歴のある外国人を対象としていた入国拒否の措置を中国浙江省にも拡大。2月13日から日本への入国申請日より前の14日以内に湖北省と浙江省に滞在歴のある外国人や両省発行の中国旅券を所持する外国人の入国を拒否。国民の中国への渡航自粛も要請。
 韓国:韓国政府は1月23日に中国の湖北省武漢市について旅行の自粛を求めるレベル2の「黄色警報」を発令。2月4日からは湖北省を2週間以内に訪問した外国人の入国が全面禁止となった。また2月11日には新型肺炎の中国以外の国・地域からの流入を防ぐため新型肺炎が発症しているケースの多い日本、シンガポール、マレーシア、ベトナム、タイ、台湾の6カ国・地域への旅行・訪問を自粛するよう勧告を出した。
 ▲デパートの臨時休業
 日本:除菌作業とマスクの着用で対応
 韓国:新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ロッテ百貨店は2月7日、ソウル・明洞に近い本店(ソウル市中区)が同日午後2時から臨時休業。新型コロナウイルスの感染が確認された中国人女性が来店したことが分かったため。この中国人女性は1月23日に中国・湖北省の武漢市から観光目的で韓国入りし、2月2日午後にロッテ百貨店本店で1時間ほどショッピングした後、3日に症状が現れ、6日に感染が確認された。
 また、韓国の主要百貨店は2月10日、一斉に臨時休業して消毒作業を実施。新世界百貨店も全国の店舗を休業にして店内の消毒作業を行った。ロッテ百貨店は本店を除く全国の店舗を休業とし、専門の防疫業者が店の出入口、エレベーター、文化センターなどの施設内を消毒した。
 ▲政府財政支援
 日本:日本政府は2月14日、新型肺炎への緊急対応策として103億円の支出を決定。検疫体制強化費(3億円)や政府チャーター機派遣費用、横浜に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」乗客らへの物資支援(23億円)やマスク増産に応じるメーカーの設備投資向け補助金(5億円)などに使われる。
 また、5千億円規模の緊急貸付や保証枠を設けて、観光や旅館などの中小事業者に資金繰り支援を実施する方針である。
 韓国:1月28日に総額208億ウォン(約19億3000万円)の防疫予算を執行。1月29日には検査費や治療費などを健康保険公団と国、地方自治体で全額負担するとした指針を発表。支援対象は感染者、感染が疑われる患者、症状がある調査対象者。支援額は入院中の治療、検査、診察などにかかる費用一切。2月3日には48億ウォン、13日には地方の免疫対策を支援するため157億5千万ウォンを拠出。2月6日には肺炎を引き起こす新型コロナウイルス関連の研究開発(R&D)に10億ウォン(約9300万円)の予算を投じる。想定外の社会問題に対応することを目的とした「国民生活安全の緊急対応研究事業」の今年度予算(50億ウォン)から10億ウォンを充てる。