2020年2月7日金曜日

新型コロナウイルス「中国の情報隠蔽」を考えて患者数を予測したら…

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200127-00070061-gendaibiz-cn
1/27(月)、ヤフーニュースより
初動の「情報隠蔽」が痛かった
 中国で新型コロナウイルスによる肺炎が流行している。

 WHO(世界保健機関)は、現時点では「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態」を宣言するような事態には至っていない、としているが、日本にいるとやはり気になる。東京や大阪、京都などには春節で数多くの中国人が来ているので、日本としても対岸の火事ではすまない。

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 最新の情報を得るうえで筆者が参考にしているのは、日本語で読める人民日報だ(http://j.people.com.cn/)。最近になって、急に記事が増えてきた。それと、WHOのサイトである(https://www.who.int/westernpacific/emergencies/novel-coronavirus)。WHOのサイトには統計データも出ているが、2015年に韓国などで流行したMERSコロナウイルスの時のようには充実していない。

 そもそも今回は、中国で当初、情報隠蔽があったと思われる。

 武漢市で原因不明の肺炎患者が見つかったのは、先月12日とされている。そして先月の30日には、原因不明の肺炎に関する公式文書がネットに流出している。

 しかし、今月2日になって、地元公安当局がネットで肺炎情報を流しているネットユーザーを処罰した、とされる。これは情報隠蔽と言われても仕方ない行為だ。

 その後、ネットで情報が広がり始め、22日になってようやく中国政府が記者会見を開いた、という初動の遅さがあった。人民日報では、1月20日ごろから感染者数の情報が掲載されるようになった。
「毒性は弱い」とされるが…
 例えば1月25日には、新型コロナウイルスによる肺炎の最新の感染状況として、

 〈1月24日午後12時現在、国家衛生健康委員会が29省・自治区・直轄市から報告を受けた新型コロナウィルスによる肺炎の感染者は1287人に上り、このうち重傷者は237人、死者は41人(湖北省39人、河北省1人、黒竜江省1人)だった。すでに回復して退院した人は38人。20省区市から報告された感染の疑いがある人は1965人に上る。新華網が伝えた〉(http://j.people.com.cn/n3/2020/0125/c94475-9651775.html)

 と報道されている。

 こうした状況を受けて、WHOのサイトでも情報が遅ればせながら出てきた。最新の25日の状況レポートでは、患者数1320人、うち中国1297人、日本3人、韓国2人、ベトナム2人、シンガポール3人、オーストラリア3人、タイ4人、ネパール1人、アメリカ2人、フランス3人と報告されている(https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/situation-reports/20200125-sitrep-5-2019-ncov.pdf? sfvrsn=429b143d_4)。

 中国では、2003年に流行したSARSコロナウイルスが有名だ。2002年11月~2003年8月にかけて、中国を中心に8096人の感染者が出て、うち774人が死亡。致死率は約10%だった。

 似たような話では、先に触れた2015年の韓国におけるMERSの流行もある。2015年5月~2015年12月に186人の感染者が出て、うち38人が死亡。致死率は約20%だった。

 今回の中国の新型ウイルスは、いまのところ致死率3%程度といわれており、SARSやMERSよりも毒性は弱いとみられる。

 しかしいずれにしても、中国政府による情報隠蔽があったことを考慮すると、現段階の中国政府の発表、それに基づくWHOのデータが正しいものとは断言できない。

「武漢だけで患者数5000人」との予測
 新型コロナウイルスによる肺炎患者数について、北海道大の研究チームは25日、「武漢市内だけで5000人を超える可能性が高い」との推計を発表している(https://www.sankei.com/life/news/200125/lif2001250034-n1.html)。

 筆者も、12月に最初の患者が出たとされているわりには、現在の患者数がやや少ないと感じていた。海外で同時に多数の感染者が出ているのと考え合わせても、中国国内の感染者数が少ないように思える。北海道大の推計には一理あるのではないか。

 ここで大胆とお思いかもしれないが、今後の患者数を予測してみよう。

 当初、感染症の患者数は1人が2人、2人が4人、4人が8人とネズミ算のように指数関数的に増加する。しかし、ずっとそうなら、あっという間に中国人全体が感染してしまう。どこかで感染する人が少なくなり、頭打ちになる。患者の隔離が功を奏するからだ。

 つまり、通常の感染症モデルにおいては、拡大の逆のフィードバックがあるので、発生当初だけ指数関数的な拡大を見せる「ロジスティック飽和モデル」になる。これは、かつて筆者が統計数理研究所にいたときに学んだことだ(http://www.ism.ac.jp/editsec/toukei/pdf/54-2-461.pdf)。

 その手法で、2015年に韓国でのMERS感染者数を予測したグラフが、下記のものだ(https://www.j-cast.com/2015/06/11237529.html)。

 今回も、2015年の韓国並みのデータがあれば、現段階でもかなり正確な予測ができるだろう。しかし、いかんせんデータ不足である。そこで、筆者の直感などを大胆に入れ込んで予測してみたので、その点を留意してもらいたい。

 今のところ、PROJECTION1とPROJECTION2のふたつのシナリオを筆者は考えている。いずれも、2003年のSARSのときのように、最終的な患者数は1万人程度を想定している。

 その場合、現在公表されている数字が過小であるとすれば、ここから1、2週間は患者数がどんどん増えていくと思われる。もし過小でなくても、まだまだ発生当初の段階なので、しばらくは患者がまるで指数関数的に増えていくように思えるだろう。

 その数字に圧倒される人も多いかもしれない。しかし、いま中国も必死に隔離政策を実行しており、1000万人都市の武漢は交通を遮断され、事実上隔離されている。発生源の中国でしっかり対応してもらわないと、隣国の日本での水際防御も完全にはできない。

 これまで人類の歴史でも、新型の疾病に対して多くの場合、隔離という対応策が採られてきた。感染症の発生源は正確に突き止められない以上、それしか方法がないからだ。完璧な隔離はできないとしても、これで感染確率は低くなり、指数関数的な拡大は沈静化へ向かう。

 あと1、2カ月すれば、患者数増加のペースは落ちてくるのではないか。4月に習近平国家主席が訪日する予定だが、そのときまでには、今ほどの混乱も少なくなっているだろう。
自分でできることをやろう
 それでも、完全な終息宣言が出されるまでには、かなりの時間を要するだろう。7月末の東京五輪の時には、相当落ち着いてはいるだろうが、終息宣言は無理かもしれない。

 いずれにしても、過度に悲観せず、政府や保健当局を頼りに「水際で防いでくれ」と思わず、まずは自分でできることをやるべきだ。専門家によれば、風邪やインフルエンザの予防と同じで、こまめな手洗いとうがい、それに体力をつけ免疫力を高めるのがいいという。さらに、今回の新型コロナウィルスは、長時間一緒にいる「濃厚接触」で感染するというから、人の多い場所には長居しないほうがいい。

 中国政府は、国外旅行を含む全ての団体ツアー旅行を27日から一時禁止とすることを決めた。団体旅行・パック旅行で来日する中国人観光客は全体の約4割にのぼり、来日ビジネス関係者には大きな痛手であるが、中国政府の危機感の表れである。経済より健康が優先であるから、やむを得ないだろう。
髙橋 洋一(経済学者)

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