Source:https://news.yahoo.co.jp/byline/nakajimakei/20220611-00300315
今年1月に行われた一橋大学の私費留学生選抜試験で、数学の試験問題が外部に流出していたことがわかり、6月8日、警視庁は流出に関与した中国人受験生を偽計業務妨害容疑で逮捕。9日も、その受験生の家庭教師で、外部流出の中継役を担った中国人大学院生を同容疑で逮捕した。
SNSへの投稿で明るみに
これまでの調べでは、中国人受験生が、自身の家庭教師である中国人大学院生に、事件前に不正への協力を依頼。受験生が試験中に動画で撮影した試験問題を大学院生に送信し、大学院生はそれを画像にして、ウィーチャット(中国のSNS)に送信、解答を求めた。このSNSの投稿を見た人物が不審に思い大学側に連絡し、事件が明るみになった。
大学入試を巡る不正事件は、同じく今年1月、大学入学共通テストの試験中に世界史の問題が外部に流出したということがあり、このような事件は「氷山の一角」という声もある。だが、今回関与していたのは、日本の大学進学を目指す中国人留学生だった。
同受験生は一橋大学に合格していたが、報道によると、今回、一橋には67人の留学生が受験し、29人が合格していたことがわかった。
留学生の半数近くが中国人
日本学生支援機構(JASSO)の調査によると、2021年5月1日現在、日本に住む外国人留学生は約24万2400人。そのうち、中国人留学生は約11万4000人で最も多く、全留学生の半数に近い(2位はベトナム人で約4万9000人、3位はネパール人で約1万8800人)。
中国人留学生が多く在籍している大学の最新データは公表されていないが、筆者が2016年に出版した『中国人エリートは日本をめざす』(中公新書ラクレ)で紹介した2015年の統計によると、中国人が最も多い大学のランキング1位は早稲田大学で約2300人(当時)だった。
2位は日本経済大学(約1600人)、3位は東京大学(約1200人)、4位は九州大学、5位は筑波大学の順であり、10位以内の大学には各800人以上の中国人が在籍していた。
現在も中国人留学生が多い大学の上位は早稲田大学(約3000人)、東京大学(約2400人)、立命館大学などだが、昨今は京都大学、大阪大学、東北大学など国立大学の人気も高まっており、ランキング上位の国立大学にはそれぞれ1000人以上の中国人留学生が在籍している。
それに比べると、一橋大学の合格者(29人、国籍不明)は非常に少なく、中国人を含め、外国人留学生からあまり人気がないように見える。
美術大学が人気 意外な大学名も
だが、東京・高田馬場にある中国人向け大学予備校で講師のアルバイトをしている中国人の大学院生に最近の事情を聞いてみると、そんなことはないという。
「以前は圧倒的に早稲田大学、そして東京大学の2校がダントツで人気でした。この2校は中国でも知名度が非常に高いため、日本でこのどちらかの大学に入学できたら、中国でも自慢できるからです。
でも、ここ数年は、SNSの影響で、中国でも日本のさまざまな大学の詳細が知られるようになり、必ずしも、早稲田、東大だけにこだわらない人が増えてきました。
たとえば、美術系の大学は、小さい大学でも中国人に大変な人気です。中国では美大が日本ほど多くないことに加え、日本には世界的に有名なクリエイター、美術関係の優秀な指導者が多いからです。
それに、やはり、日本で本格的にアニメの勉強をしたいという若者もまだ多いですね。他に、意外なところでは、東京工業大学のような理系の大学も人気があります。
中国語のサイトでも紹介
一橋大学については、以前は入学する中国人が少なかったので、先輩留学生からの情報やアドバイスもあまり多くないということもあり、知られていなかったのですが、最近では知名度もアップしています。
中国とも縁が深い大平正芳元首相や、楽天グループ代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏、それに、以前から中国で有名な石原慎太郎氏もこの大学の出身であるということまで、中国語のサイトでしっかり紹介されていますよ」(中国人大学院生)
今回の事件は中国人留学生のSNSでも情報が出回り、話題になっているという。「真面目にがんばっている留学生が多いのに、このような事件が起きて本当に残念だ」とその大学院生は語っている。
山梨県生まれ。フリージャーナリスト。著書は最新刊から順に「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日本経済新聞出版社)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など。主に中国、香港、台湾、韓国などを取材。
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