Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/91861d23325c02d3e1ea0da6128028e47e05ca3a
本州の多くは梅雨の最中。登山日和はなかなか訪れないが、この時期が過ぎればいよいよ本格的な夏山シーズンの到来だ。すでにこの夏の山行プランを立てている人もいるだろう。 【画像】極限に近い高所での食事「ベースキャンプでは意外と豪華?」 一般に親しまれているレジャー要素の強い登山からは縁遠いが、ヒマラヤなどの高所への登山や未踏の山のピークを目指して難易度の高いルートをクライミングし、限界に挑む登山者たちがいる。そんなアルパインクライマーの世界は一体どんなものだろうか? その一人、山岳カメラマンとしても精力的に活動を続ける、クライマーの三戸呂拓也氏に語ってもらう。 山の上でのテント泊や食事などの生活術も重要な登山技術の一部だ。長い山行ほど、いかに手際よく美味しいものを用意できるか、当然食材の重さや燃料、ゴミの問題も気になる。登山者なら、ひょっとしたら今後の山行の参考になるかもしれない……。登山をしない人でも、テレビ、新聞などでときおり話題になる高所登山の裏側の生活は気になるのでは?
■豪勢なベースキャンプ! わびしいハイキャンプ!
ベースキャンプ(以下BC)とハイキャンプでは、大きく異なる。 基本的に、BC(ベースキャンプ)はコックを雇って連れて行き、料理はほぼお任せになる。現地食を作ってくれることが多いが、日本隊に慣れているコックは巻き寿司やトンカツなどの日本食、ピザやハンバーガーなどのコンチネンタル料理を振る舞ってくれることも。場所にもよるが、材料はふんだんに用意し、腹一杯食べさせてくれる。海外登山に慣れていないメンバーと一緒の時は、自分がキッチンに立って食べ慣れたものを作ることも多い。 ハイキャンプは、基本的に軽くて高カロリーなものが食事メニューとなる。多いのはアルファ米と味噌汁やスープなど。しかし厳しい登攀などになると、持っていく食糧を減らさざるを得ない。100gのアルファ米を2人で分け、お茶漬けでかさ増しして食べたり、朝食はビスケット数枚と紅茶のみだったりする。高所では食欲が減り、もともと少食な人はそれでちょうど良かったりする。しかし私は燃費が悪いクライマーなので、食料を減らすのは寂しい……。
■弱ったときは日本食!
私はわりと何でも美味しく食べることができ、海外遠征では現地食も楽しみだ。ネパールのダルバート、パキスタンのカレー、各国のスープなど、どれも好きである。 ただ、体の弱っている時や体調を整えたい時は、やはり日本食がありがたい。そのため日本の調味料は、一通り日本で買って持っていく。出汁やお茶漬けの素、佃煮や梅干しなど。粉末の経口補水液なども重宝する。最近は体調管理も込めて、携帯用のマヌカハニーを毎日の紅茶やコーヒーに入れて飲んでいる。
■寝袋は2種類! さらに仲間たちの温もり
寝袋は基本的に、BC用と高所用を2種類持っていく。テントが広く快適に過ごせるBC用は、若干大きめの-18℃対応目安。それに対して高所用は小さめの-9℃対応が目安だ。 本来なら、より気温が低く環境が厳しい高所ほど暖かくして寝たい。だが、テントが小さく荷上げが大変なので、寝袋を小さくして、ダウンジャケットやテントシューズを併用して寝ることが多い。 ただ1人1テントのBCに対し、狭いテントでギュウギュウになって寝る高所では、それで何とかなっている。ありがたい仲間たちの温もりだ……。
■色んな意味で際どいテン場
ポーターレッジ(※)などで壁にぶら下がって寝たことはないのだが、岩棚の下の氷を削り、満足に広がらないテントで泊まったことはある。下を平らにすることもできず、寝るのもかなり大変。しかもそんな時に限って悪天に捕まり、何泊もすることが多いのだ。 メンバーと話すネタもすぐに尽き、娯楽もない。雪崩や落石に当たらないことを祈りながら、ただひたすら時間が経つのを待つのである。誰かの足が臭かったりすると、メンバーのストレスは倍増。目上のパートナーといる時などは、相手が臭いよりも自分が臭くて迷惑をかけることがストレスである。 ※ 登攀に時間のかかる大きな壁(岩壁・崖)で、クライマーが夜を過ごすために開発された、壁に吊るすタイプの簡易テント。
■ストレスだらけ! 恐怖のトイレ
高所でのトイレは、私にとってかなり大きなストレスだ。登攀中も常に、「催したらどうしよう」という恐怖に苛まれているが、壁の中で幕営中のトイレほど恐ろしいものはない。 登攀中はハーネスにロープを結び、原則的にどこかに確保を取っている。しかし、幕営時はロープはおろか登山靴さえ脱いで、履き物はテントシューズになっていることが多い。無防備極まりない状態で外に出るが、足を滑らせたら何百mも落ちる。壁にアイススクリューを打って手すりを作ることもあるのだが、恐ろしくて色んなものが引っ込んでしまう。 壁の中でなくても、吹雪の中で素肌を露出するのは大変辛い。風が強いと紙が飛びそうになる。悩みは多い……。 三戸呂拓也(みとろたくや) 青春時代より山に没頭し続け現在にいたる。国内の厳冬期難ルートを踏破し、ネパールやパキンスタンなどの高所登山の経験多数。2021年、パキスタンの未踏峰だったサミサール(6,020m) 初登頂。山岳カメラマンとしても多くの番組の撮影に携わっている。 2011年 新疆ウイグル自治区・ヤズィックアグル(6,770m)世界初登頂 2013年 ネパール・マナスル(8,168m)『世界の果てまでイッテQ』サポート 2021年 パキスタン・サミサール(6,020m)初登頂 NHK-BSプレミアム『グレートトラバース3』撮影 NHK-BS1『グレートレース』撮影 日本テレビ『世界の果てまでイッテQ!』撮影
三戸呂拓也
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