2020年10月1日木曜日

過密する「東京の人口」が減少に転じたカラクリ

 Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/3fe978174c3bb67fd928be112892e1d631d8cb92

東洋経済オンライン

 東京の人口減少が話題になっている。東京都の8月1日現在の人口推計(平成27年の国勢調査人口をベースに毎月の住民基本台帳人口の増減数を加えて推計)によると、都の人口は1399万3721人で、前月から5903人減った。 【図表】東京の外国人人口は減少  8月の前月比で人口が減ったのは8年ぶりだ。住民基本台帳に基づく都の人口は1387万7010人で、日本人は1332万4105人、外国人は55万2905人となっている。  総務省の住民基本台帳人口移動報告によると、東京都は5月と7月が転出超過となり、2013年7月以降で初めての現象となった。また、東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)でも7月は2013年7月以降初の転出超過となった。こうしたニュースが続くと、延々と続いてきた「東京一極集中」の流れがいよいよ変化し始めたのかと思いがちだが、実態を見てみると意外な事実が浮かんできた。

■東京からの転出・転入が大幅に減る  まず、象徴的なのは全国各地からの東京への転入、また東京からの転出が、それぞれ大幅に減っていることだ。コロナ禍の影響で、進学や転勤など人の動きが抑制されたことが大きな要因と見られている。例年、人口移動が多い3月から5月、そして再び転出超過となった7月の状況をみてみよう。  【3月】コロナ感染者数が増え、下旬には都知事の「ロックダウン発言」が話題になった月だが、人口移動はまだ活発だった。東京都の転入者数は10万人超で前年同月を6401人も上回った。転出は5万7082人で、同5758人の増加。その結果4万199人の転入超過となった(同643人増)。

 【4月】緊急事態宣言が出た月である。その影響は顕著にあらわれた。転入者数は5万9565人で同9112人減。転出者数は5万5033人で同571人減。トータルでは4532人の転入超過だが、前年同月比では8541人減だ。  【5月】緊急事態宣言が継続し、巣ごもり生活を余儀なくされていた時期である。転入者数は2万2525人で同1万2842人の大幅減(36%減)。転出者数は2万3594人で同7292人減(24%減)。その結果、1069人の転出超過となった。前年同月は4481人の転入超過だったから、逆転現象が起きたわけだ。

【7月】再び感染者数が急増し、「第2波到来」と言われた。転入者数は2万8735人で同4203人減。転出者は3万1257人で同482人減。差し引き2522人の転出超過となった。前年同月は1199人の転入超過だから、この月も逆転だ。前年同月で比べると39の道府県で東京都への転入者数が減り、逆に25道府県では東京都からの転出者数が増えている。「東京離れ」が顕著になっていたのである。  緊急事態宣言が継続された5月と第2波に見舞われた7月を中心に、東京を軸とした人口移動が減少したのだ。それでも今年1月を基準に東京都の総人口を見ると、8月1日現在では約4万2000人の増加となっている。コロナ禍で人の動きは鈍ってきたものの、人口増加そのものは止まっていないのである。

 東京都の人口増減の内訳を詳しく見てみよう(住民基本台帳)。 1月 総人口 1383万4925人 8月 総人口 1387万7010人  総人口は4万2085人増えている。このうち日本人と外国人の人口増減はどうなっているのか。 日本人 (1月) 1325万7596人(8月) 1332万4105人 ※6万6509人増 外国人 (1月) 57万7329人 (8月)55万2905人 ※2万4424人減  コロナ禍が長引く中、転出超過の月が2回あったが、東京の日本人人口そのものは増え続けているのだ。8月1日現在の総人口が前月比で5903人減ったが、主因は外国人の減少だった。同時点の人口を前月と比べてみると、日本人は180人増加しているが、外国人は6083人と1.1%減少した。つまり、8月の東京人口が前月比で減少と言っても、実態は外国人が東京からいなくなったということなのである。

■感染が多い東京を離れる外国人  外国人の減少は、コロナ禍が深刻な問題となり始めた今年2月以降ずっと続いている。今年になってからの人口増減の一覧表をご覧いただければ一目瞭然だ。(外部配信先ではグラフや図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)    今年になってから、8月1日までに2万4424人の外国人が東京から離れていったのである。その要因として以下のような点が指摘されている。

コロナ禍で感染者数が多い東京を離れた(帰国や他県への移動)。 ② 一時帰国した外国人が入国規制で再入国できていない。 ③ 各国から新規の留学生などが入国していない。 ④ 日本経済の低迷、地盤沈下で撤退する外資企業などが増えている。  長引くコロナ禍の影響が大きいのは確かだが、むしろ心配なのは外資の日本離れ、東京離れだ。ここ数年、金融、メーカー、流通からメディアまで、東京に拠点を置く意味がなくなったとして撤退する動きがいろんなところで見られるようになってきている。

 東京がアジアマーケットの拠点としての座を失いつつあるのだ。小池都知事は再選時の選挙公約で「都民の命を守り『稼ぐ』東京の実現」を掲げていたが、とてもそんな状況ではないようだ。  コロナ禍長期化にもかかわらず増え続けている東京の日本人人口。いったい、どのエリアの人口が増えているのか。23区の1~8月の増減をチェックしてみたところ、日本人人口が増加した上位は次の通り。日本人口が減ったのは江戸川区(102人減)だけである。

① 品川区 6489人 1.67% ② 千代田区 972人 1.55% ③ 中央区 2101人 1.31% ④ 江東区 5806人 1.18% ⑤ 文京区 2374人 1.11%  新宿区は、日本人人口は2620人の増加(0.86%増)だが、外国人が4874人減ったため、総人口は2254人の減少となっている。中国人、韓国人、ベトナム人、ネパール人などアジア系の減少が目立つ。  23区で総人口が減少したのは、新宿区以外では、豊島区1522人減、江戸川区1355人、荒川区24人となっている。

■日本人人口は増え続ける  人口増加が目に付く品川区は、リニア新幹線開通に向けて東京サウスゲート計画が進み、将来推計人口(中位推計)では2044年まで人口が増え続けるとされている。千代田区、中央区、文京区の人口増加は「都心回帰」現象がまだ続いているということか。タワマンが林立する江東区も依然として人口増が続いている。  ポストコロナに向けて、リモートワークが普及し、企業の地方移転や機能分散、首都圏近郊などへの移住が増えるとの予測も出ているが、現時点での動向を見る限り、東京一極集中に劇的な変化は見られない。むしろ日本人人口は増えているのが実態だ。

 国土交通省が東京一極集中の要因等について多角的な観点から分析・議論する懇談会を開催しているが、菅新政権の下で、東京一極集中是正、地方活性化策にドラスティックな動きが出てくるかどうか。各地の知事などからは新政権に対して、「地方創生推進」を期待する声が上がっている。これが期待外れに終わらないことを願うばかりだ。

山田 稔 :ジャーナリスト

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