Source: http://www.nikkei.com/article/DGXMZO93343370Y5A021C1000000/ Googleニュースより
2015/10/28
2015/10/28
今年4月の地震がもたらした壊滅的な被害からの再建に奮闘する山岳国ネパール。インドの燃料供給が滞り人々の生活が深刻な影響を受ける中、中国が疲弊したこの隣国に初めて燃料を供給する。
■2800万人の国民が深刻な燃料不足に直面
ネパールの当局者は26日、石油の購入条件を協議するために北京を訪問した。これにより、インド国営石油精製大手のインディアン・オイルが長らく果たしてきたネパールへの独占的な石油供給業者としての役割が実質的に終わることとなる。
ネパールの政府筋によると、当初の合意では中国が130万リットルの燃料を供給することになるというが、アナリストらはネパールのインドへの依存が終わるような長期契約に進展する可能性をほのめかす。
今回の合意に至った背景には、インドからの燃料供給が著しく滞り、2800万人の国民が深刻な燃料不足に直面しているという現実がある。カトマンズを拠点とするヒマール・サウスアジアン誌の発行者、カナック・マニ・ディクシット氏はフィナンシャル・タイムズ紙に対し、「ネパールはよろめいている」と語った。「病院には酸素がない。救急車のガソリンもなく、道はガラガラだ。全ての産業が行き詰まっている」
インド政府は、燃料供給の停滞は先に公布されたネパール新憲法に対する住民の抗議運動が時に暴力に発展してネパールの一部地域を通過することをインドのトラック運転手が嫌ったことが原因であるとし、貧困にあえぐ隣国への燃料供給を意図的に遮ってはいないとした。
しかし、燃料や調理用ガスの不足が1カ月近くに及び、ネパール国民の多くがこの燃料不足は憲法改正を狙うインド政府によるものだと考えている。
「インドは自国の欲求を満たすため、ネパールを強引に隷属国家とし、命令に従わせようとする愚をおかそうとしている」とディクシット氏は語る。「インドはそれが危険な行為だということを理解しなければならない」
■新憲法にインドとつながり深い「マデシ」が反発
ネパールの新憲法は、9年以上にわたる複雑な協議を経て策定され、制憲議会の3分の2以上の支持を得て今年9月に公布された。しかし、ネパール国民の32%を占め、インドの隣接地帯出身の人々と民族や文化が近く、社会的なつながりが深いネパールの平原地帯の住人「マデシ」はこれに反発した。
マデシの政治家は、他民族出身の人々を含めてネパール国民の約半数が住む平原地帯が1つの県にされず、複数の県に組み込まれていることに不満を募らせている。この県境の線引きがマデシの政治的な影響力を弱めるための策略だと考えているのだ。
インド政府は憲法の具体的な変更を公には求めてはいないが、全ての当事者が満足できる「互いに妥協できる解決策」を見つけるようネパールを促している。
ネパールとインドの間の緊張の高まりは、1年前にモディ首相が、インド首相として17年ぶりにカトマンズを訪問したことで著しく改善した両国関係にとって残念な展開だ。インドは大地震後の素早い救援・復旧の取り組みで多くの人々の心もつかんだというのに。
By Amy Kazmin
(2015年10月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
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