2015年11月12日木曜日

“インド太平洋の世紀”へ 実現に欠かせぬ米中との関係

Source:Wedge 11月10日(火)、ヤフーニュースより

 フィナンシャルタイムズ紙のコラムニスト、フィリップ・スティーブンスが10月8日付同紙に、モディ首相の目標は21世紀を「インド太平洋の世紀」にすることであり、それはうまくいきそうである、との論評を書いています。

今こそインドを APECに加盟させるべきだ
中国進出を食い止める防御壁となり得るか
 すなわち、中国の台頭に対するアジアにおける戦略的再編には、米国だけでなく、インドも重要な関与をしている。インドにとり重要なのは中国と米国で、前者は脅威、大声では言わないが後者は不可欠の同盟国である。欧州は脇役に過ぎない。

 モディは国際舞台において精力的である。2014年5月の就任以来、20余国を訪問し、古い関係を一新し、新たな関係を構築している。21世紀を「太平洋の世紀」と呼ぶのが一般化してきているが、モディはそれを「インド太平洋の世紀(Indo-Pacific century)」に変えたがっている。

 インド外交の柱は二つである。第一は、経済成長と地政学的重みの不可欠のリンクである。政策立案者は、インドの成長は中国より早く、中国は高齢化が進んでいる、などと言うが、インド経済は中国経済の数分の一の規模でしかない。追いつくには、適切なインフラ、外国からの投資と最新技術の多くが必要である。それゆえ、モディの外遊には経済的側面がある。先日習近平が訪米した際、モディはシリコンバレーの巨大企業にインドの夢を売っていた。モディと日本の安倍総理はリーダーシップについての見方を共有しているが、両国関係に深みを与えているのは、両国がビジネスで協力できるとの理解である。

 第二の柱は、近隣との関係である。かつての指導者たちは、近隣の小国に高圧的に対応した。パキスタンとの周期的な紛争にエネルギーが集中され、ネパール、スリランカ、バングラデシュ、ブータンなどは閑却されていた。モディは状況を変えた。カシミールをめぐるパキスタンとの対立は常に緊張の源だが、モディは、大国は近隣の不安定をうまく弱めることが出来るものである、と理解している。そして、公式には大っぴらには語られないが、中国の地域的野望への懸念がある。中国は懸命にインドの近隣国の機嫌をとっている。習近平の一帯一路戦略は、中国をユーラシアで突出した勢力にすることを目論んでいる。インドにとり、欧州へのシルクロードの再開、中国のインド洋進出は、包囲と感じられる。
避けられぬ米国との関係強化
 モディは、こうした懸念と経済的関与の均衡をとらねばならない。中国は投資とインフラのノウハウの源だが、中国の野心は、インドが日豪との関係を強化し、越比インドネシアとの新たな関係を構築する素地でもある。新たなネットワークは自己主張を強める中国に対抗する試みである。モディの「対米軸足移動」も同様である。インドは米国について常にアンビバレントであり続けよう。冷戦時の非同盟運動に由来する「戦略的自立性」へのこだわりや、米主導の同盟システムのジュニアパートナーたり得ないとのプライドがある。ロシアとは歴史的に緊密な関係がある。

 しかし、世界最大の民主国家インドは、世界で最も進んだ民主国家アメリカしか提供できない、投資と防衛装備を必要としている。米国は中国のパワーをチェックする重要な保証者である。アジアで出来つつある同盟システムの信頼性は、米国との結びつきに依存している。

 モディの「インド太平洋の世紀」という夢は経済的近代化にかかっている。しかし、見通しの変化は明らかである。インドは小さな世界観を持った大国として何十年も過ごしてきたが、モディのインドは、アジアのバランス・オブ・パワーを再編する国として台頭しつつある、と論じています。

出典:Philip Stephens,‘China spurs Narendra Modi’s pivot to Washington’(Financial Times, October 8, 2015)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/18e47c9a-6ced-11e5-8171-ba1968cf791a.html#axzz3o1bxHGsw

*   *   *
米中両国との関係構築へ
 21世紀を「インド太平洋の世紀」にするカギはインドの経済発展です。インド経済は未だ中国経済の5分の1ほどの規模でしかなく、「インド太平洋の世紀」にふさわしい経済大国になるためには、インフラの整備、外資と最新技術が必要です。インドはそのためには、日米との経済連携を強めると同時に、中国との経済関係を推進し、中国からの投資を誘致するとともに、インフラのノウハウを取得するでしょう。中国はインドの経済発展にとって重要なパートナーです。

 しかし中国は同時に、インドにとって戦略的な対抗相手として台頭しています。中国の一帯一路構想は、インド洋における中国の影響力の増大をもたらすもので、インドとして安閑としていられません。また中国のインド近隣国への攻勢は、中国の地域的野望を示すものであり、インドとして放置できません。

 モディの日豪との関係強化、越比インドネシアとの新たな関係の構築、そして論説の言う「対米軸足移動」は、すべて中国を意識したものです。中国の台頭はインドの外交姿勢を基本的に変化させました。インドの「戦略的自立性」の伝統、ロシアとの歴史的な緊密な関係はあるものの、この外交姿勢の変化は不可逆的なものでしょう。

 これは日米、アジア太平洋地域の自由主義諸国にとり望ましいことであり、日本もインドの立場を尊重しつつインドとの関係の一層の緊密化に努めるべきです。
岡崎研究所

0 件のコメント:

コメントを投稿