Source: http://www.yomiuri.co.jp/local/toyama/news/20151117-OYTNT50412.html
2015年11月18日
2015年11月18日
ヤギを繁殖させて、生活の支えにしてほしい――。ネパールの農村で農業や教育の普及活動を続けている富山市の支援団体が、ネパール地震の被災者に、食用として重宝されているヤギを配布している。1匹の売却で、公務員の月収の半分程度が賄える価値を持つというヤギ。団体は「一過性の支援ではなく、持続的な経済力を付けてほしい」と期待する。半年以上もテント暮らしを続けている被災者らは、募金などで現地調達されたヤギを受け取り、「今後の生活に希望が持てる」と大喜びしている。
非政府組織(NGO)「ネパールカルナリ協力会(千葉県)」富山支部が取り組んでいる。同会は1992年に設立。富山支部は昨年、高岡市出身で、私立日本学園高校(東京都世田谷区)の教師をしていた清沢洋 さん(67)が、生徒と共に集めたアルミ缶を換金し、ネパールに学校を建てる活動をしていたのを縁に、退職して設立した。同支部事務局長に就任し、ヤギの配布を始めた。
ヤギはネパールで食用として人気が高い。配ったのは半年に2匹ほどの子ヤギを産む品種のメス。食肉用に高値が付くオスの子ヤギは1匹6000ルピー前後(約7000円)、メスの子ヤギも4000ルピー前後で売れる。交配用のオスは別途数匹を村に置く。上手に繁殖できればヤギの販売で数年後に1世帯あたり月1万ルピー程度の収入が見込め、1家族4人が生活できるという。
同支部によると、募金などを原資に生後3~4か月のメス33匹を地元業者から購入。首都カトマンズから西に約60キロ離れ、震源に近いダディン郡ピッポルタール村で9月、家を失った全33世帯(約150人)を対象に1匹ずつ手渡した。この村人たちは現在も簡易テントや木造の鶏小屋などで避難生活を送っているという。
被災者は当初、“高級品”をタダでもらえると聞いて「本当にヤギをもらえるのか」と疑いの目を向けていたが、実際にヤギが運ばれ、手渡されると表情を崩し「ダンネバ(ありがとう)、ダンネバ」と繰り返した。受け取ったヤギを慈しむように何度もなで回す年配の女性もいた。
テント周辺で放牧してもらい、ネパール人の責任者を現地に置く。今後、別の被災者にも配る考えだ。清沢さんは「飼育や販売についても面倒をみていきたい」と話す。同支部によると、ネパール政府から被災者への支援は現金支給が1度あったのみ。ほとんどを生活費として使い切り、寝泊まりする簡易テントや鶏小屋も自前で、住宅再建にまで回っていないという。
「日本ネパール協会」(東京)のバララム・シュレスタ理事(42)は、「継続的な収入を見込める仕事を与えたのと同じ。心から感謝申し上げたい」と話している。
いま同支部には、現地のネパール人責任者から「子ヤギは順調に育っている」と連絡が入っている。
◇ネパール地震 2015年4月25日、ネパール中部で起きた大地震。震源は首都カトマンズから北西約80キロ付近、マグニチュードは7・8。外務省が現地政府に確認したところ、被害は10月現在、死者8800人以上。家屋は約60万5000棟が全壊、約28万8000棟が一部損壊、現在も大勢が避難生活を強いられている。
2015年11月18日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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