Source:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190929-00000008-nagasaki-l42
9/29(日)、ヤフーニュースより
全国の入国管理施設で、長期収容中の外国人が仮放免(収容の一時停止)などを求めてハンガーストライキ(ハンスト)を起こすケースが相次いでいる。大村市の大村入国管理センターでは6月、ハンスト中だった40代のナイジェリア人男性が死亡するなど事態は深刻化しているようだ。今月上旬、収容者の支援活動に取り組むグループのメンバーの一人、川田邦弘氏と同センターを訪れ、外国人の話に耳を傾けた。
1番から8番まで番号が付いた面会室が廊下に沿って整然と並んでいた。職員から案内されて入ったのは5号室。収容者とは透明のアクリル板で仕切られ、どこか冷たい印象を受けた。
車いすを押されて入室してきたのはネパール人のアニル(36)=仮名=。伸びたひげによれよれのTシャツ、うつろな目-。仮放免を求めて8月中旬から摂食を拒否し続けているという。既に3週間。アクリル板を隔てて手のひらを重ね合う“あいさつ”を済ませた後、彼はたどたどしい日本語で話し始めた。
母国では政治的対立で父が殺害され、自らにも危険が迫っていたため日本に逃れてきた。難民認定を申請したが認められず、2017年7月に名古屋の施設に収容され、昨年、大村に移送されたという。
ハンスト前の体重は66キロ。今は54キロまで落ち、車いすを使っている。「犯罪も犯していないのに、なぜ2年間も収容されるのか。命をかけてここを出るか、死ぬかだ」。自らに言い聞かせるようにつぶやいた。
大村のような入国管理施設には、不法行為などにより強制退去を命じられた外国人らが収容される。ただ、アニルのように政治的思想・活動が原因で母国を逃れ、難民認定を求める人も少なくない。収容者の事情はさまざまだ。こうした外国人たちは「帰国すると身に危険が及ぶ」として、母国に帰ろうにも帰れない人が多いという。
◆ ◆ ◆
仮放免は、収容者の「病気その他やむを得ない事情がある場合」に一定の条件の下、例外的に身柄の拘束を解く制度。川田氏によると、たとえ仮放免が認められても短期間で再収容されるケースも多く、外国人の心身を追い詰める一因となっている。
スリランカ人男性のヴィジャヤ(45)=仮名=は8月下旬に仮放免を認められたが、約2週間で再収容されたという。「理由が全く分からない」と抗議し、ハンストを始めた。
母国には妻と2人の子どもがいる。しかし、政治的な思想を理由に逃れているため帰ることができないらしい。「水だけは飲むように」。川田氏がそう言い聞かせても、「死んでも大丈夫」と返し、ハンストを続ける意思を示した。
同センターでは、テレビの視聴や公衆電話の使用、礼拝といった宗教活動など一定の自由は認められている。川田氏のような支援者に差し入れを頼むこともできるし、医師の診察も受けられる。ただ、常に監視下にあり、外の景色も自由に見ることはできないという。「私たちは動物みたいだ」。彼は自嘲気味に話した。
◆ ◆ ◆
ヴィジャヤと同じく仮放免後に再収容されたイラン人のハリム(30)=仮名=は「ここにいても先が見えない」と、難民認定をあきらめ取材翌日に母国に帰ることを決めていた。
難民申請をめぐっては、法務省が2018年、就労目的の難民申請が相次いでいるとして制度を厳格化。「濫用・誤用的な難民認定申請の急増により、真の難民の迅速な保護に支障が生じている」として、体制強化や迅速処理を目指している。しかし、難民認定審査の処理期間は、18年度で平均約427日と、1年以上を要している。
少数民族クルド人のハリムは政治的な活動を理由に母国を逃れ、17年9月に来日。難民認定申請したが、来日当初から収容されたままという。今年7月に仮放免が認められた時は「夢のようだ」と喜んだが、約3週間後に再収容。「ちゃんと手続きをしているのに理由が分からず、自殺も考えた」と憤った。
母国に戻れば、そのまま空港で拘束され刑務所に送られる可能性もあるが、「刑務所は刑期がちゃんと決まっている。国に帰ってどうなるか分からないけど、ここにいるよりマシだ」と語気を強めた。
ハリムは日本での2年間のほとんどを入管施設の“塀の中”で過ごした。面会終了間際、日本の印象を聞いてみた。「仮放免の間に出会った日本人はいい人ばかり。平和を愛する日本人というイメージ通りだった。またいつか日本人と会ってみたいね」。やつれた顔を少し緩ませ、扉の奥に消えていった。
◆ ◆ ◆
不法入国、不法就労、テロ対策-。入管行政に求められる役割は大きい。その一方で、外国人の身柄を長期的にわたって拘束する現状に「人権侵害だ」との声も上がる。
外国人の収容長期化について、河井克行法相は24日の閣議後の会見で、私的懇談会の中に専門部会を設置し、対策を検討する方針を表明。「送還忌避者の増加、それに伴い収容が長期化する現状、これを防ぐための方策、そして収容の在り方について根本的な検討が必要」との考えを示した。
1番から8番まで番号が付いた面会室が廊下に沿って整然と並んでいた。職員から案内されて入ったのは5号室。収容者とは透明のアクリル板で仕切られ、どこか冷たい印象を受けた。
車いすを押されて入室してきたのはネパール人のアニル(36)=仮名=。伸びたひげによれよれのTシャツ、うつろな目-。仮放免を求めて8月中旬から摂食を拒否し続けているという。既に3週間。アクリル板を隔てて手のひらを重ね合う“あいさつ”を済ませた後、彼はたどたどしい日本語で話し始めた。
母国では政治的対立で父が殺害され、自らにも危険が迫っていたため日本に逃れてきた。難民認定を申請したが認められず、2017年7月に名古屋の施設に収容され、昨年、大村に移送されたという。
ハンスト前の体重は66キロ。今は54キロまで落ち、車いすを使っている。「犯罪も犯していないのに、なぜ2年間も収容されるのか。命をかけてここを出るか、死ぬかだ」。自らに言い聞かせるようにつぶやいた。
大村のような入国管理施設には、不法行為などにより強制退去を命じられた外国人らが収容される。ただ、アニルのように政治的思想・活動が原因で母国を逃れ、難民認定を求める人も少なくない。収容者の事情はさまざまだ。こうした外国人たちは「帰国すると身に危険が及ぶ」として、母国に帰ろうにも帰れない人が多いという。
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仮放免は、収容者の「病気その他やむを得ない事情がある場合」に一定の条件の下、例外的に身柄の拘束を解く制度。川田氏によると、たとえ仮放免が認められても短期間で再収容されるケースも多く、外国人の心身を追い詰める一因となっている。
スリランカ人男性のヴィジャヤ(45)=仮名=は8月下旬に仮放免を認められたが、約2週間で再収容されたという。「理由が全く分からない」と抗議し、ハンストを始めた。
母国には妻と2人の子どもがいる。しかし、政治的な思想を理由に逃れているため帰ることができないらしい。「水だけは飲むように」。川田氏がそう言い聞かせても、「死んでも大丈夫」と返し、ハンストを続ける意思を示した。
同センターでは、テレビの視聴や公衆電話の使用、礼拝といった宗教活動など一定の自由は認められている。川田氏のような支援者に差し入れを頼むこともできるし、医師の診察も受けられる。ただ、常に監視下にあり、外の景色も自由に見ることはできないという。「私たちは動物みたいだ」。彼は自嘲気味に話した。
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ヴィジャヤと同じく仮放免後に再収容されたイラン人のハリム(30)=仮名=は「ここにいても先が見えない」と、難民認定をあきらめ取材翌日に母国に帰ることを決めていた。
難民申請をめぐっては、法務省が2018年、就労目的の難民申請が相次いでいるとして制度を厳格化。「濫用・誤用的な難民認定申請の急増により、真の難民の迅速な保護に支障が生じている」として、体制強化や迅速処理を目指している。しかし、難民認定審査の処理期間は、18年度で平均約427日と、1年以上を要している。
少数民族クルド人のハリムは政治的な活動を理由に母国を逃れ、17年9月に来日。難民認定申請したが、来日当初から収容されたままという。今年7月に仮放免が認められた時は「夢のようだ」と喜んだが、約3週間後に再収容。「ちゃんと手続きをしているのに理由が分からず、自殺も考えた」と憤った。
母国に戻れば、そのまま空港で拘束され刑務所に送られる可能性もあるが、「刑務所は刑期がちゃんと決まっている。国に帰ってどうなるか分からないけど、ここにいるよりマシだ」と語気を強めた。
ハリムは日本での2年間のほとんどを入管施設の“塀の中”で過ごした。面会終了間際、日本の印象を聞いてみた。「仮放免の間に出会った日本人はいい人ばかり。平和を愛する日本人というイメージ通りだった。またいつか日本人と会ってみたいね」。やつれた顔を少し緩ませ、扉の奥に消えていった。
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不法入国、不法就労、テロ対策-。入管行政に求められる役割は大きい。その一方で、外国人の身柄を長期的にわたって拘束する現状に「人権侵害だ」との声も上がる。
外国人の収容長期化について、河井克行法相は24日の閣議後の会見で、私的懇談会の中に専門部会を設置し、対策を検討する方針を表明。「送還忌避者の増加、それに伴い収容が長期化する現状、これを防ぐための方策、そして収容の在り方について根本的な検討が必要」との考えを示した。
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