2019年9月2日月曜日

ヘンリー王子&メーガン妃が結成した「女性だけ」の新チームにみる、ジェンダー問題の考え方

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190829-00010004-bazaar-ent
8/29(木)、ヤフーニュースより
 メーガン妃がまだ女優メーガン・マークルだった2015年、世界女性会議で行ったスピーチで最も有名な言葉がある。
 「私は女性であり、フェニミストでもあります」と自身のことを紹介したうえで、「女性はまず、議論のテーブルにつく必要があります。そのためにはまず、そこに着席するための招待状が必要です。そもそも議論の場がない場合には、自分たちでその場を作り出す必要があります」と述べた。

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このスピーチの4年後、女優メーガン・マークルはメーガン妃となり、世界で最も有名なロイヤルファミリーの一員として、常に最上位のテーブルにつくようになった。そしてこのたび、メーガン妃と夫ヘンリー王子夫妻は、女性スタッフだけの新たなチームを結成したのだ。

この春、バッキンガム宮殿はウィリアム王子とヘンリー王子が別々の“世帯”となり、バッキンガム宮殿から離れるヘンリー王子とメーガン妃夫妻が、新たな体制を作ったことを正式に発表(なおここで言う“世帯”とは、王室の管理局やスタッフのことを指す)。さらに宮殿は、ヘンリー王子とメーガン妃は、兄ウィリアム王子&キャサリン妃夫妻と4名で共同運営してきたチャリティ財団「ロイヤル・ファウンデーション」から脱退し、独自の財団を立ち上げると発表した。

ここで、新たにヘンリー王子とメーガン妃が集めているスタッフ陣に注目する。2016年の米大統領選で、ヒラリー・クリントンの上級アドバイザーを務めたサラ・レイサムを報道官に起用し、また最近では、オバマ政権の元スタッフである秘書官補佐ヘザー・ウォンに加え、元駐アルバニア英国大使のフィオナ・マキルワムを秘書官に起用した。
さらに、ヘンリー王子とメーガン妃が設立したチャリティ団体のディレクターを務めるナタリー・キャンベルに加え、理事には英ケーブルテレビ、メディアコムの会長カレン・ブラケットを任命。そして、夫妻が最も信頼している側近の1人であるクララ・マッデンも起用。彼女は長年にわたって王室の若い世代の面倒を見てきた人物で、今回ヘンリー王子とメーガン妃の独立についてゆくこととなった。

つまり、サセックス公爵夫妻は上級スタッフをすべて女性で構成するという、王室初の試みを行っているのだ。エドワード・レーン・フォックスが2018年に夫妻の秘書官を辞職する際、バッキンガム宮殿から派遣されたサマンサ・コーエンが臨時秘書官を務めることになったのだが、それまでにヘンリー王子の秘書官を務めていたのはすべて男性。サマンサは、エリザベス女王の初の女性秘書官代理に任命された人物として知られている(それまでの67年間以上、女王の秘書官は男性のみだった)。

夫妻はこうした女性の上級スタッフたちを優秀だと考えているが、こうした姿勢はイギリスの組織の中ではまだまだ少数派。最新の調査によると、ロンドン証券取引市場に上場するイギリスの大企業100社のうち、女性がCEOを務めるのはたったの6社。女性が取締役を務める企業も32%に留まっている。また2017年の統計では、イギリス国内の中小企業で女性が社長を務めているのはわずか19%だった。

現在の英国内における、性別による賃金格差(男性と女性の従業員の平均時給の差)は、フルタイムの従業員で8.6%となっている。全従業員に拡大してみると17.9%の差があり、この数字は女性の方がパートタイムの職に就くことが多く、収入が少ない傾向にあることを示している。この差は、同一労働に対して、男性と女性では異なる賃金が不平等に支払われているということではなく(場合によっては数値に影響する可能性も排除できないが)、多くの男性は女性よりも多くの賃金が支払われる上級のポジションに就くことが多いということを表しているのだ。

こうした分野に強い関心を示している人物として知られる、母親になったばかりのメーガン妃は、依然として家事と育児の大部分を女性が担い、30歳以降の男女の賃金格差が拡大していることも知っているかもしれない。当然、女性役員のみが上層部を占めるチームだって、ジェンダーのバランスが取れていないと指摘したくなる人もいるだろう。しかし、すべての役員室が男女平等に近付くまで、すべての女性役員は男女格差を生み出すのではなく是正する存在であること、そして、組織に刺激を与える存在であることを忘れてはならない。

アメリカの社会活動家マリアン・ライト・エーデルマンの「見えないものになることはできない」という有名な言葉は、女性がトップの地位にいることこそが、次世代の女性に影響を与えることができるということを表している。2019年5月、現在はサセックス公爵夫妻の秘書官であり、当時外交官を務めていたフィオナ・マキルワムは、外務省のSNSで「全世界で女性の国会議員が占める割合は25%以下」という統計値を投稿している。
またヘンリー王子も、メーガン妃と出会う以前からフェミニズムに関する実績を残している。2人が出会う直前の2016年、ヘンリー王子は大地震に見舞われたネパールを訪れ、「女性が実際の能力を評価される機会に到達するまでには、あまりにも多くの障壁があります」とスピーチ。王子自身がフェミニストであるということが、メーガン妃との関係を育んできたことは間違いない。王子は今年初めに女性のための支援団体「トゥモローズ・ウィメン・ウィラル」を訪れ、自身を「フェミニスト」という言葉で表現している。

ロイヤルファミリーの一員になって以来、公営高層住宅グレンフェル・タワーの大火災で被害に遭った「ハブ・コミュニティ・キッチン」の女性たちと共同で料理本を制作したり、国際女性デーでスピーチを行ったりするなど、自身の立場を生かして常に女性たちの声に耳を傾け、彼女たちの経験にスポットライトを当ててきたメーガン妃。今年は失業中の女性たちを支援するロンドンのチャリティ団体「スマート・ワークス」のパトロンに就任し、求職における面接時の受け応えや洋服選びなどのアドバイスをした。また、イギリス版『ヴォーグ』誌のゲストエディターを務めた際は、貧困や犯罪、家庭内暴力の犠牲となった女性たちを積極的に雇用することで知られる「ルミナリー・ベーカリー」で働く女性たちを取り上げてもいる。

夫妻は先日、二酸化炭素の排出量に対するアクションを求める声明を発表した直後にプライベートジェットを利用したために、矛盾しているとバッシングを受けている。ロイヤルファミリー(だけに限ったことではないが)が世界に向けて何かを発信し、彼らが実際の生活でその主張に伴わない行動をするのであれば、世間から反感を買うリスクがあるということだ。

しかし、ロイヤルファミリーの重要性を信じる人たちにとって、ヘンリー王子とメーガン妃が優秀な女性たちを支持するこうした姿勢は賞賛に値すると言える。2015年に国連で行われたメーガン妃のスピーチにあった、「単に平等について話すだけでは不十分です。まずは信じること。そして信じるだけでも不十分です。次に行動すること」という言葉に、きちんと即しているからだ。
Translation: Masayo Fukaya From TOWN&COUNTRY

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