2019年9月2日月曜日

大災害の多くはアジア。3年間で6億5000万人が被害 ── 2050年には1億4300万人が「気候難民」化する

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190901-00000001-binsiderl-int
9/1(日) 、ヤフーニュースより
海面の上昇や気温・雨量の変化などの気候変動によって災害は増えている。

2018年に、最も多くの避難者を出した災害のトップ10のうち8つは、中国、インド、フィリピン、インドネシアなどアジアで起きたものだった。2014年から2017年の間だけでも、アジア太平洋地域は55の地震、217の台風やサイクローン、236の洪水に見舞われ、6憶5000万人もの人々が影響を受けた。

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さらに2050年には、サハラ以南のアフリカ、南アジア、中南米において、気候変動が原因で約1億4300万人もが避難や国内外に移住せざるを得なくなると、世界銀行は警鐘を鳴らしている。既に災害が原因で、年間2400万人もの人が住居を奪われている(2008ー2018年平均)。
農業被害が深刻化、移住せざるを得ないケースも
筆者が勤務する国際NGO・Mercy Corpsが事業を行っているネパールは、気候変動への脆弱性が世界4位。地球全体の温室効果ガスの排出量は0.027%に留まる一方で、気温上昇や雨量の変化など、気候変動の影響を強く受けている国だ。

気候変動は災害、健康被害、水資源問題など幅広い分野に影響を及ぼすが、気象条件の影響を直に受けるセクターは農業だ。ネパールの人口の7割は農業に従事していて、農業分野のGDPへの寄与は約30%にものぼる。

南西部に位置する事業地では、気温の上昇によって農作物の成長が阻害されるほか、害虫の生育が活発になり、農作物への被害が深刻化している。

加えて、短期間に大量の雨が降ることが多くなり、洪水が頻発している。洪水が起きると農地は浸水するうえ、大量の砂が流れ込むため、農産物を生産する土地がなくなってしまう。収入の減少と食糧不足により、長年住み続けた土地を離れ、移住を迫られる農家は少なくない。
生活環境の悪化で人口の7.5%が国内避難民へ
バングラデシュでは気候変動による国内移住が、スラム問題へと発展している。海岸沿いに住む人々の多くは、生活に不可欠な真水が手に入らなくなっている。海面の上昇により、塩水が川に流れ込んでいるからだ。

綺麗な水へのアクセスがなくなることで健康被害が増加するほか、河川の浸食により家や農地を奪われ、多くの人は移住を決断する。しかし、より良い環境を求めて移住をしても、都市部は急激な人口増加に対応できておらず、生活が改善されないことも多い。

毎日1000~2000人が流入している首都のダッカも、大気汚染、貧弱な社会インフラ、交通渋滞、失業率など、数々の問題に直面している。移住者の大半は貧困層のため、スラム問題も今後さらに深刻化するとみられている。

バングラデシュでは2050年までに1300万人、つまり人口の7.5%が「国内避難民」となると予測されている。気候変動や災害は、最も脆弱な貧困層により深刻な影響を与えるのだ。
「気候難民」の責任は誰がとる?
「難民」とは国際法では、戦争や迫害から逃れ、国境を越えた人のことを指すため、「気候難民」という言葉は厳密ではないという指摘もある。

一方でニュージーランドには、既に気候変動による環境悪化を理由とした「難民」申請がされている。

ニュージーランドとハワイの間にある太平洋上に位置する島国キリバスのイオアネ・テイティオタさんは、海面の上昇により国民10万人が水没の危機に直面し、自身や家族も危険にさらされていると主張。だが、ニュージーランド最高裁判所は結局、難民申請を却下する判決を下した。

しかし、このまま海面の上昇が続けば、太平洋の島国は水没し、人々がそこで生活できなくなる可能性が十分にある。強制「移住」や「避難」が起きた際、責任は誰が追うべきなのか。このようなケースをどう扱い、人々の生活を保護するのか、まだ法律や政策が追いついていない。

2019年12月に開催される国連の気候変動会議(COP)では、このような問題を国際的にどう扱うのかを定める「ワルシャワ国際メカニズム」が議論される予定だ。

大倉瑶子:米系国際NGOのMercy Corpsで、官民学の洪水防災プロジェクト(Zurich Flood Resilience Alliance)のアジア統括。職員6000人のうち唯一の日本人として、防災や気候変動の問題に取り組む。慶應義塾大学法学部卒業、テレビ朝日報道局に勤務。東日本大震災の取材を通して、防災分野に興味を持ち、ハーバード大学大学院で公共政策修士号取得。UNICEFネパール事務所、マサチューセッツ工科大学(MIT)のUrban Risk Lab、ミャンマーの防災専門NGOを経て、現職。インドネシア・ジャカルタ在住。
大倉瑶子

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