2017年1月31日火曜日

勤労留学生 ニッポンの今/下 日本語力不足で挫折 自立可能かの審査必要 /群馬

Source:  http://mainichi.jp/articles/20170127/ddl/k10/040/150000c
毎日新聞

パソコン画面の前で手を動かすラムサル・ビカスさん=栃木県足利市大前町の足利工業大で

 栃木県の足利工業大大学院・工学研究科の研究室。ネパール人留学生のラムサル・ビカスさん(29)がパソコンの画面の前で物をつかむ動きをすると、画面上の手のイラストが連動して架空の箱を持ち上げた。
     今、ビカスさんは博士課程でVR(仮想現実)技術や顔検出技術を研究している。教授の助手として、他の学生の指導にも当たる。国際的な学術研究会で3度表彰されるなどの研究活動が評価され、国際的な財団から奨学金を受けるが、来日当時は挫折を何度も味わった。その原因は日本語力だった。
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     「日本のような高水準の大学を母国につくりたい」。ネパールで大学を卒業後、東京都内の日本語学校に入学したのは2010年。学費を工面するためアルバイトを探そうとしたが、日本語もままらならず、派遣会社に言われるがまま向かった先は魚肉工場だった。
     学校から電車で片道約3時間。放課後の夜6時ごろから働き、勤務明けは午後11時。終電はなく、公園で始発電車を待ち、そのまま学校へ向かう生活だった。授業で居眠りし、先生に何度も「国へ帰れ」と怒鳴られた。支給されると聞いていた交通費は支払われなかった。
     「日本に来て失敗した」。落ち込んでいた時、偶然見つかった中華料理店での仕事が転機になった。店長が丁寧に日本語を教えてくれたおかげで半年後には接客に差し支えないほど日本語が上達した。来日から1年後の11年、足利工業大の入試を突破し、研究生となり、今に至る。ビカスさんは「最低限、自立して生活できるだけの語学力を入国条件にした方が留学生のためだ」と強調する。
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     現在の留学制度では、留学前に日本語力を審査する統一的な基準と仕組みがほとんどない。日本語学校に入学する場合、語学力について入国管理局に提出する資料は、それまでの学習時間の証明書だけでよい。日本語能力試験の結果など「実際の語学力」を証明しなくても、制度上は留学ビザの申請が可能だ。
     しかし、日本語学校「フジ・ランゲージ・スクール」(前橋市総社町)の本間昌治郎・経営責任者は「学習時間の証明書だけでは、学習意欲や、日本で最低限の自立的生活を送るために必要な語学力は測れない」と指摘する。この学校では独自に、試験結果の提出を義務付け、留学前には現地面接もしているが、「経営を優先し、悪質なあっせん業者に頼り、質の低い学生までも入学させてしまう学校もある」と明かす。
     入管などによると、日本語学校の数はこの5年で100校以上増え、16年末で568校。その一方で、悪質な学校の摘発が後を絶たない。留学生政策に詳しい東京工業大の佐藤由利子准教授は「質の高い留学生を確保し続けるためにも、国は留学生の受け入れ政策を見直すべきだ」と訴える。【杉直樹】

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