2017年1月10日火曜日

留学生・実習生失踪 「稼げる」と難民偽装 「申請簡単」制度を乱用

Source:http://www.nishinippon.co.jp/feature/new_immigration_age/article/298686

 失踪した外国人の留学生や技能実習生は全国で相次いでおり、九州でも480人を超える。彼らの逃げ道の一つが難民認定制度だ。申請者の就労を一律に認めた2010年の運用見直し後、「難民申請すれば自由に稼げる」と外国人間で話題となり乱用が急増。法務省入国管理局も“偽装難民”への対応に苦慮している。
 「難民申請して、生活が一気に楽になった」。北関東の家電工場で働いている20代のネパール人男性は留学生として来日した。入管難民法上、留学ビザでは原則「週28時間」しか働けず、月収は10万円程度だった。電気・水道・ガスが止まり、食事も切り詰めたが、専門学校の学費が払えなくなり、2年前に友人に誘われて難民申請した。現在は週5日計50時間程度働き、月収は倍に。男性は「あと5、6年は日本で働き、母国で起業する軍資金を稼ぎたい」と続けた。
 学費や生活に行き詰まるなどして学校から姿を消し、難民申請する留学生は少なくない。福岡県のある日本語学校の講師は「5人の生徒がある日突然、学校に来なくなり、アパートももぬけの殻となったことがある。他の生徒らに聞くと『仕事がある関東方面に向かい、難民申請した』と言っていた」と証言する。
 実習生の失踪では、法務省が本人から聴取できたケースで、実習先の賃金が安い▽指導が厳しい▽帰国を強制された▽実習終了後も働きたかった▽暴行を受けた-などが理由という。
 失踪した外国人が難民申請に走るのは、労働の制約がなくなるからだ。留学生なら週28時間以内、実習生は最長3年間働けるが転職はできない。難民申請すれば半年後からフルタイムで働ける特定活動ビザに変更でき、職場も自由に選べる。難民申請の審査結果が出るのは半年から1年後。不認定となっても異議申し立てが何度でも可能で、再審査は数年かかる。再審査中に就職先が見つかれば就労ビザの取得もできる。
 難民申請者の就労は生活困窮者にのみ資格が与えられていたが、10年に入管が経済面での配慮を拡大し、一律に認められるようになった。このため、本来は難民に当たらないのに就労目的で申請する外国人が急増。15年の全国の申請者は7586人(09年の5・5倍)に上り、難民申請に詳しい行政書士は「申請手続きは手ぶらでできるほど簡単。指導料をもらって申請を指南するブローカーもいる」と明かす。
 入管も昨年9月、明らかに難民に該当しないケースは本格的な調査前に振り分け、同じ主張を3回以上繰り返す申請者は在留許可を与えないなど対策に乗り出した。にもかかわらず、16年の難民申請者は9月末現在で過去最高の7926人に上り、「本当に難民の資格がある人の保護にも支障を来しかねない状況だ」(入管)。
 難民審査参与員も務めるNPO法人「難民を助ける会」の柳瀬房子会長は「根本的原因は外国人労働者を受け入れる仕組みが整っていない点にある」と指摘し、「難民申請者は日本人が嫌がる3K職場で働いており、日本社会を支えている。少子高齢化が進む中、経済活動を縮小させてゆくのか、外国人を受け入れて発展させるのか。国民的議論が必要だ」と提言した。

=2016/12/30付 西日本新聞朝刊=

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