2017年1月10日火曜日

「留学生の自殺に衝撃」日本に行けば楽に稼げるという仲介業者の誘いを信じ…

Source: http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170106-00010004-nishinpc-soci

西日本新聞 1/6(金) 、ヤフーニュースより

 「ネパール人は自殺しない」。昨春、そんな題名の映画が完成し、山形国際ドキュメンタリー映画祭に出品された。監督は名古屋の大学で映画製作を学ぶネパール人ラズクマルさん(33)。自身と同時期にネパールから東京に来た男子留学生が母国に婚約者を残して命を絶ったことを知り、死の真相に迫った作品だ。
「真面目な子ほど病気になる」
 「留学生の自殺に衝撃を受けた」とラズクマルさん。日本に行けば楽に稼げる-。男子留学生はそんな仲介業者の誘い文句を信じて2010年に来日したが、稼ぎは生活費や学費に消えた。婚約者を日本に呼んで一緒に暮らすことを目指し、学校は一日も休まず、睡眠時間を削って1日8時間、早朝と深夜のアルバイトに追われる中、次第に孤独を深め、心を病んでいった様を浮き彫りにした。

 福岡市東区の海岸でも14年6月、20歳前後のネパール人男性ラマさんが遺体で見つかった。ホテル経営を夢見て市内の日本語学校に通っていた。友人と暮らすアパートに財布と携帯電話を残し、数日前から行方不明になっていた。

 奨学金で母国の高校を卒業した苦学生。「頭が良くて、3カ月で日本語の日常会話ができるようになった。アルバイトの面接のこつを教えてくれた」と友人は振り返る。ラマさんの様子がおかしくなったのは亡くなる半年ほど前。元気がなくなり、言葉も少なくなった。心配した日本語学校の職員が病院に連れて行き、うつ病と診断された。

 「どっちを優先すればいいか分からなくなった…」。週28時間以内の就労制限を守り、生活を切り詰めて勉学に励む中で周囲に漏らしていた。友人の一人は「彼はルールを守って勉強頑張った。でも、お金なくて生活厳しい。真面目な子ほど病気になる」と悼んだ。
手数料で儲ける留学仲介業者が急増
 「おとうさん、ビョーキだったから、クシュリ(薬)ほしかった」。ガラス越しで面会室に響く片言の日本語が痛々しかった。10月末、窃盗罪などで有罪判決を受けたベトナム人の元留学生チャンさん(22)が福岡拘置所で取材に応じた。

 父親が現地通貨で150万円相当を借金してくれて来日。13年に福岡市の短大に入学したが、「28時間」を守って弁当工場で働いた結果、半年で学費が払えなくなり、退学を余儀なくされた。

 留学ビザが切れ、不法残留状態で市内の建設会社で働いた。時給800円。月10万~15万円は借金返済のため母国に送金し、生活は困窮。仕事仲間から「手伝えば(父親用に)良い薬をあげる」と誘われ、ドラッグストアを狙う窃盗団に加わってしまったという。

 政府の「留学生30万人計画」に乗じ、ネパールやベトナムなどの発展途上国では、「28時間の壁」を十分に説明せず若者を勧誘し、手数料で儲ける留学仲介業者が急増する。日本国内でも日本語学校ビジネスが活況だ。

 ただ、途上国から来た私費留学生の多くはバイトなしで勉強できる環境にない。28時間を守れば困窮し、破れば摘発対象となるリスクを負わされている。

 国会では、勉強に専念させるため就労制限を「20時間以内」に引き下げる案も出る。だが、そうなれば留学生は生活費や学費がまかなえず、増加にブレーキがかかるのは確実。留学生を貴重な戦力と頼む企業にも大きな影響が出る。

 逆に制限を緩和すれば、「出稼ぎ留学生」の増加を誘引し、政府が目をそむける「移民」の容認にも限りなく近づく。新たな「移民時代」を迎える中、そのジレンマは広がるばかりだ。

取材班から 共に生き、共に働く
 街角で中国語とも韓国語とも異なるアジアの言語を耳にしたり、褐色の肌の人々を見かけたりすることが、九州でもここ数年で急に増えた。実は、その多くは旅行客ではない。

 来年1月末に厚生労働省が公表する日本の外国人労働者数(就労する留学生含む)は、初の100万人突破が確実視される。九州7県でも計5万人を超える見通しで、特にベトナム人とネパール人は過去5年間で10倍増というハイペースぶりだ。

 「いわゆる移民政策は取らない」。安倍晋三首相はそう明言する一方、原則週28時間まで就労可能な外国人留学生を2020年までに30万人に増やす計画や、外国人を企業や農家などで受け入れ、技術習得を目的に働いてもらう技能実習制度の拡充を進めてきた。

 その結果、国連が「移民」と定義する「12カ月以上居住する外国人」は増加の一途。国籍や文化の異なる民が同じ地域で共に暮らし、働く、新たな「移民時代」を日本は迎えている。

 24時間営業のコンビニで弁当が買え、オンラインショッピングで注文後すぐに商品が届く便利な暮らし。それを支える深夜労働の多くは、アルバイトの留学生が担う。建設や製造、農漁業などの現場では、3K(きつい、汚い、危険)職場を嫌う日本の若者に代わって低賃金で汗を流している実習生も少なくない。

 留学生30万人計画も実習制度も、政府の建前は「先進国日本の国際貢献」。だが、人口減と少子高齢化で人手不足が深刻化する日本社会を支えるため、「発展途上国の安価な労働力で穴埋めしたい」という本音が透けて見えないか。

 そんな政府の施策には、外国人を共に生きる生活者と捉える視点が欠落し、建前と本音のひずみが、留学生の不法就労や実習生の過酷労働の温床となっているのではないか。

 歴史的にも地理的にも文化的にも、九州はアジアから新しい風を受け入れ、地域を活性化させる力を日本中に波及させてきた。西日本新聞の新たなキャンペーン報道「新 移民時代」は、九州で暮らす外国人の実像や、彼らなしには成り立たない日本社会の現実を描く。「共生の道」を読者と一緒に考えたい。
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西日本新聞「新 移民時代」取材班
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