Source:https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/2f076b15edca391b8f8b89a60a388b054839b91d
世界の水に、気になる変化が起きています。世界気象機関(WMO)が9月17日に発表した「State of Global Water Resources 2025」によると、2025年は世界の河川流量が過去35年間でも特に少ない年の一つとなったそうです。
さらに深刻なのは、川の水だけではありません。地下水、湖や貯水池、土壌水分、雪や氷など、陸上に蓄えられている水を合わせた「陸域水貯留量」が、2014~16年ごろから約10年間、減少傾向を続けています。
WMOは、こうした水の蓄えを地球の「savings account(貯金)」になぞらえています。問題は、雨が少ない年があることだけではありません。雨が少ない時に頼ることのできる「水の貯金」そのものが減っていることです。海には膨大な水があるので誤解されがちですが、人間が生活や農業、工業などに利用できる「fresh water(淡水)」は限られています。
1/3の河川流量が減る
WMOの報告で特に注目したいのは、世界の水循環が単純に「乾燥している」のではないことです。2025年には世界の河川流域の3分の1以上で平年を下回る流量となりました。北米、中東、中央アジア、東欧などでは河川流量の少ない地域が目立ちました。一方、南アジアや東南アジアの一部では逆に、平年より多い河川流量が観測されています。
つまり世界では、水が少なすぎる地域と水が多すぎる地域が同時に発生しています。WMOも、水循環がより不規則で予測しにくくなり、「too little」と「too much」の間を振れる状況を指摘しています。これこそ、気候変動時代の水問題を理解する重要なポイントです。
地下水という「見えない貯金」
その中でも重要なのが「地下水」です。川やダムは目に見えますが、地下水は見えません。しかし農業用水、飲料水、工業用水などとして、世界各地で大量に利用されています。
WMOによると、2022~2025年には、米州、欧州、中東、インド、南部アフリカ、オーストラリアなどの一部で地下水不足が継続しました。特にインド北西部などでは、平年を下回る地下水位が広範囲で続いています。
「地下水を使うから、次の干ばつへの余力がさらに小さくなる」。こうした悪循環が起こり得ます。
ヒマラヤで「氷」という水の貯金も減る
アジアでは、もう一つ重要な水の貯金があります。ヒマラヤなどの氷河です。WMOによると、2025年には世界の主要な氷河地域すべてで4年連続の質量減少となり、氷河は年間約408ギガトンの氷を失いました。氷河融解によるネパール・中国での洪水災害も記憶に新しいところです。
氷河も巨大な天然の貯水池です。冬や寒い時期に雪や氷として水を蓄え、暖かい季節になると少しずつ融け、川へ水を供給します。しかし温暖化で氷河が急速に縮小すれば、最初は融解水が増えても、やがて供給できる氷そのものが減ります。
WMOの最新報告が示しているのは、「地球の水がなくなる」という単純な未来ではありません。必要な時には水がない。必要でない時には洪水になるほど水が来る。
その一方で、地下水、雪、氷河など、私たちが渇水時に頼ってきた「水の貯金」は少しずつ減っています。気候変動時代の水問題とは、水の量だけの問題ではなくなってしまったのです。

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