Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/dea7a40b27c373f28eb619a519331dfb9209d813
色彩豊かな建物が建ち並んでいた山あいの集落の一角は、いまも灰色に覆われていた。がれきの上を歩くと悪臭が鼻を突く。
【写真まとめ】「山津波」の爪痕 ネパール被災地で何が起きたのか
ネパール中部ヌワコト郡ビドゥール。この街は約1カ月前、中国との国境付近で発生した未曽有の土石流に襲われた。
「私の実家にいた妻や子どもが流され、今も見つかっていない」。現場周辺を訪れていた自営業のゴカルナ・シュレスタさん(35)に声をかけると、高台から土砂に埋もれた自宅を指さし、言葉を絞り出した。
その日の空は青く、澄み渡っていた。シュレスタさんは8月26日朝、経営しているホテルからバイクで数キロ離れた実家に向かっていた。集落にさしかかろうとした時だった。「黒ずんだ大きな波」が家屋や住民をのみ込んでいくのが見えた。
このとき、実家には母(69)や妻(31)、そして5歳の長女と生後1カ月半の長男らがいたとみられる。洪水が過ぎ去ってすぐに実家に向かうと、4階建ての建物の大半が押し流されていた。「街では多くの人が洪水が来るとの情報を得ていた。しかしあのような巨大な波が押し寄せるなんて誰も思っていなかった」
ビドゥールは、土石流を引き起こした氷河の崩落地点から約70キロ下流に位置するが、甚大な被害を受けた。あれは単なる「洪水」ではなかった、というのが地元住民の認識だ。彼らはこの災害を「山津波」と表現する。
シュレスタさんのスマートフォンには、土石流の前日に撮影された長女の笑顔の写真が保存されている。「前日の夜、妻は笑顔で私の仕事の様子を尋ねてくれた。洪水の後、目にした光景に感情を抑えられなかった」。シュレスタさんはこう語り、涙で声を詰まらせた。【ビドゥール(ネパール中部)で松本紫帆】

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