Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/49913a4aedc839cee6e7ecf452f096efa85612fc
ネパールには「クマリ」という名の生きた女神がいる。4~5歳で「王国の守護女神として復活」した者として選ばれると、両親と離れて寺院で暮らし、崇められる。しかし初潮を迎えると神性が他の者に移ったと考えられ、後継者に席を譲って寺院を離れなければならない。その後の人生は概して悲惨か、少なからず幸せとは程遠いという。 韓国の歴代大統領の政治歴はクマリの人生を想起させる。当選して権力を手にすれば期待を一身に受け、政権末期になると失望と排斥が避けられない。韓国ギャラップの調査による大統領職務遂行肯定率を見ると、直接選挙が実施されてから選出された盧泰愚(ノ・テウ)、金泳三(キム・ヨンサム)、金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)、李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)の各大統領は、いずれも最終年の支持率(四半期平均)が30%を下回っている。通貨危機を招いた金泳三大統領は6%で任期を終えた。金大中、盧武鉉、李明博の各大統領はましな方で20%台だった。朴槿恵大統領は2016年末に4%にまで落ち、弾劾で任期を全うできずに降板した。 文在寅(ムン・ジェイン)大統領の5年目第2四半期の肯定率は39%だ。歴代大統領に比べればかなり高い。しかし来年3月の大統領選挙を控え、「政権交代」世論が「与党政権継続」世論を上回っている。野党第一党である国民の力のユン・ソクヨル候補は、それだけ有利な地形に立っている。だからこそ、ユン候補が文在寅政権に対する失望を主張し続けるのにとどまらず、失敗しない政治をどのように構想するのかが、なおいっそう注目される。 これまでの動きを見ると、少なからず残念に思う。「左右をよく見渡す」というユン候補がなぜ「かわいそうな不動産富裕層と企業主」とばかり視線を合わせるのか、という思いがするのだ。ユン候補は「全斗煥(チョン・ドゥファン)の政治手腕は優れていた」と述べて非難を浴びた。長く検事として働いてきたために政策がよく分かっていないのではないかとの指摘に対して「心配する必要はない」と伝えようとして出た言葉だろう。だからといって政策を語らないわけにはいかないので、一つひとつ語り出している。話が曖昧で真意がつかみにくいことが多いが、大きな方向性は分かる。 住宅価格の不安は文在寅政権の最大の失政と言われている。不満は様々なところから出ているが、最も苦しんでいるのは家を持たない人たちだ。しかしユン候補は、住宅価格が上昇して税負担が重くなった「かわいそうな不動産富裕層」の心配にばかりしがみついているように見える。住宅価格を安定させるとともに「不動産投機共和国」と決別するための腹案を示してほしい。不動産問題は50年来の韓国最大の悩みの種だ。 労働と労働者に対する見方は遠い昔の人のようだ。ユン候補は7月に「週120時間でもしっかりと働き、その後は思う存分休めるようにしなければならない」と述べ、波紋を呼んだ。最近は週52時間制に非常に否定的な考えを示した。最低賃金制についても「もっと低い条件で働く意思のある人々も働けなくなる」と述べた。最低賃金の引き上げ、労働時間の短縮については、速度調節の必要性の主張にとどまらず、制度そのものに対する否定的な見解が色濃くにじみ出ている。中小企業や小規模自営業者の苦境を理解し、否定的な側面を相殺する対策は常に考えるべきだ。しかし国の指導者なら、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最高水準の長時間労働、それに伴う労働災害に対する問題意識が先に立たなければならないと私は思う。慢性的に民間消費の増加率が経済成長率を下回る内需不振の国、それは労働者の低所得に起因する。貧困と格差拡大を心配する言葉がまだ一言も発せられていないのは非常におかしいのではないか。 ユン候補は1日、忠清北道の企業家たちと共にした席で「相続税の負担が重く、中小企業の経営維持が難しい」と述べ、相続税減税計画も明らかにしている。韓国では2014年に、いわゆる家業相続控除の対象を大幅に拡大する方向へと税法が改正されている。朴槿恵大統領の弟でEG会長のパク・ジマン氏の子どもが相続する時に大きな恩恵を受けられるようにした措置だと取沙汰された。実際のところ、韓国では日本のように「家業」を営むケースはあまりない。意味もなく相続税を減免しているに過ぎない。それをまたも拡大するということだが、私から見れば、相続制度をよく知らずに親の背負った巨額の借金を受け継いだ人々の涙ぐむ顔が重なる。 ユン候補にとって政治とは何か。単なる権力闘争に過ぎないのか。そうではないと言うのなら、私たちの時代の課題とも正面から向き合ってほしい。 チョン・ナムグ|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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