2018年5月31日木曜日

日本人コンビニ店員が、このまま「絶滅危惧種」になる可能性

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180529-00055833-gendaibiz-bus_all
5/29(火)、ヤフーニュースより

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なんでこんな増えたの? ふだん何してるの? 全国の大手コンビニで働く外国人店員はすでに4万人超。実に20人に1人の割合だ。ある者は東大に通いながら、ある者は8人で共同生活をしながら――。彼らはなぜ来日し、何を夢見るのか? 知られざる隣人たちと日本の切ない現実と向き合った入魂のルポルタージュ『コンビニ外国人』の著者が、いつのまにか世界第5位の「外国人労働者流入大国」となったニッポンの現状に迫る。
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この国に何が起こっているのか
 コンビニにいま“異変”が起きている。とくに東京都心でその変化が顕著だ。

 四国に住む友人は、東京のコンビニの劇的な変化を見て「最初はびっくりした」と言う。

 「だってインド人みたいな人がレジにいて、『お箸は何膳にしますか? 』とか日本語もペラペラだし、外国人のスタッフ同士の会話も日本語でしょう。出張で上京するたびに外国人スタッフの数が増えてる気がするけど、彼らを見ると『東京に来た! 』って実感するんだよね」

 彼が言う“インド人みたいな人”というのは、おそらくネパール人かスリランカ人のことだろう。

 東京23区の深夜帯に限って言えば、実感としては6~7割の店舗で外国人が働いている。昼間の時間帯でもスタッフ全員外国人というケースも珍しくはない。中国、韓国、ベトナム、ネパール、ウズベキスタン……名札を見るだけでも、国際色豊かな実体がわかる。

 つい数年前までは考えられなかった状況だが、この波は、急速に地方にも広まりつつある。

 現在、全国には5万5000店舗以上のコンビニがあり、2017年、スタッフとして働く外国人の数は大手3社だけで4万人を越えた。全国平均で見ると、従業員20人のうち1人は外国人という計算になる。

 ご存じの通り、日本は単純労働を目的とした外国人の入国を認めていない。にもかかわらず、「いつから移民の受け入れ国になったんだ?」と不思議に感じている人も多いはずだ。

 いったいいま、この国に何が起こっているのか。そして、彼らはいったいどういう人たちなんだろう――。

 そんな素朴な疑問から、取材をはじめることにした。
「安いから日本人は働きたくないでしょう」
 近所のファミリーマートでよく顔を合わせるウズベク人のJ君は、深夜のコンビニで働きはじめて1年以上が経った。平日の午前中は日本語学校で学ぶ留学生である。

 実は、コンビニで働く外国人のほとんどは、J君のような私費留学生だ。つまり、「留学ビザ」で日本に入国し、勉強しながら働いている。純粋な労働者ではない。

 コンビニ以外でも、たとえば居酒屋や牛丼チェーンなどで働いている外国人もほとんどが留学生だ。

 「夜勤のシフトで時給は1100円から始めて、いまは1300円になりました。時給は日本人といっしょです」とJ君は言う。

 「本当は昼間に働きたいけど、夜勤のほうが時給がいいし、人も足りないので、店長にも『夜に入ってほしい』と言われます。うちの店は夜勤の日本人は1人だけ。コンビニは安いから日本人はあまり働きたくないでしょう」

 経営者に聞くと、やはり「募集をかけても日本人はほとんど来ません」ということだ。

 こうした状況の背景には、コンビニ業界ばかりか日本全体が抱える深刻な問題がある。人手不足である。

 現実として全時間帯で人手が足りない店舗もあり、業界内では「24時間営業を見直すべき」という声も出始めている。しかし、いまのところ大手各社が拡大路線を取り下げる気配はない。

 業界最大手のセブン-イレブン・ジャパンの古屋一樹社長は、雑誌の取材に対して「24時間営業は絶対に続けるべきだ」と明言し、「加盟店からも見直すべきという要望は上がってきていない」としている。

 業界第2位のファミリーマートと第3位のローソンは、深夜帯に一定時間店を閉めたり、無人営業をするといった実証実験をはじめているが、業界トップのセブン-イレブンが「絶対に続ける」と言っている限り、深夜営業を取りやめることは難しいだろう。

 店舗数もこれからまだまだ増えていくはずだ。ローソンは、2021年までには現在より4000店舗多い18000店舗まで規模を拡大する意向を示している。

 そうした大手チェーンの拡大路線が続く一方で、現場では疲弊感が広がっている。

 世田谷区でコンビニを経営するAさんも人手不足に悩んでいる。

 「店の前にバイト募集の貼り紙を出して1年以上になるけど、まったく反応がない。平日の昼間なら960円、深夜なら1200円以上提示しても日本人はなかなか来ないんです。

 これまで外国人を雇ったことはないけど、今後は考えていかないと店が回っていかない。(シフトに穴が空くと自分が対応するしかないので)自分の身体も心配です」

 このように、コンビニで働く外国人スタッフが急増している一義的な原因は、現場の深刻な人手不足にある。ネット上では「外国人が日本人の雇用機会を奪っている」という論調もあるが、実態は違う。

 大学生の甥に聞くと、「コンビニで働いている日本人の友だちはいない」そうだ。

 「だってキツそうだし。同じ時給ならカラオケ店員のほうがラクそうじゃん」

 ちなみに東京都の最低賃金は958円(2017年10月~)。737円の九州・沖縄地区と比べると200円以上の差があるが、コンビニの昼間の時給は、全国どの地域でもほぼ最低賃金からスタートという店舗が多い。

 日本人が好まないアルバイトを外国人留学生が肩代わりしている実情が透けて見えてくる。人手不足に悩む現場からすると、外国人留学生はいまや貴重な労働力なのである。
「アルバイトは週に28時間まで」のはずが…
 本来、留学生は「就労」することはできない。だが、実際には多くの留学生が働いているのはどういうことだろう。

 実は、留学生のアルバイトは「資格外活動」として認められているのだ。実際、約27万人いる外国人留学生のうち約26万人が何らかのアルバイトをしている(厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」2017年10月)。

 しかし、留学生として入国している以上、その本分は「勉強すること」。もちろん無制限に働いていいわけではない。いわゆる出入国管理法で決められている上限は、原則的に“週に28時間まで”とされている。

 夏休み期間などは週に40時間まで許されるが、基本的には1日平均で4時間まで。仮に時給1000円で計算すると、週に28時間働けば2万8000円。4週間で11万2000円の額面となる。

 「なんだ、悪くないじゃないか」と思った人もいるだろう。

 だが、多くの留学生は100万円を超すような借金を背負って来日している。その借金を返済しながら生活費を稼ぎ、寝る間を惜しんで勉強している留学生も少なくない。月に11万円の稼ぎで東京で暮らすのは難しい。当然、より高い時給を求めて、深夜帯のアルバイトが多くなる。

 近所のナチュラル・ローソンで働いているスリランカ人のSさんも深夜帯で働く1人。朝8時にコンビニのバイトを終えると、通勤ラッシュの満員電車に乗って日本語学校へ向かう。

 「最近はアルバイトと勉強が忙しくて昨日もおとといも4時間しか寝ていません。この生活が続くと思うとカラダがたいへん。日本に来る前は、日本の大学に入って日本で就職したいと考えていましたが、それはたぶん難しいです。勉強する時間もお金もない」

 28時間以上働いていることを摘発されれば母国に強制送還される。だが、そのリスクを承知のうえで“出稼ぎ留学生”と化す者もいる。日本での学業を諦めて、借金とともに帰国する留学生も少なくない。

 問題は、留学生たちは、なぜそれほど多くの借金を背負って来日するのか、である。
留学生たちの“ジャパニーズ・ドリーム”
 そもそもなぜ、これほど留学生が増えているのか。なぜ、彼らは多額の借金を背負ってまで来日するのか――。

 その根本には日本政府が推し進める「留学生30万人計画」がある。日本をより開かれた国にすることを謳い、2020年までに30万人の留学生受け入れを目指すのが目標だ。

 「優秀な留学生を獲得し、戦略的に国際競争力を高めるため」に入国審査を簡素化し、日本語学校などの外国人受け入れ法人へ補助金導入を実施している。一方では、彼らは労働力としても期待されているはずだ。

 つまり、海外から見ると、日本は「留学ビザが取りやすく、勉強しながら働ける国」なのである。

 日本を目指す若者にしてみれば、日本語を覚えてお金持ちになること、それが彼らの“ジャパニーズ・ドリーム”だ。

 留学生が急増しているベトナムやネパールなどでは、「日本に行きたい」という若者を集めて送り出すブローカーが多く存在する。そうしたブローカーに手数料を払い、紹介された日本語学校に1年分の授業料を先払いするために、来日前に100万円もの借金を抱えるのである。

 なかには実家の田畑を売って、親戚中から借金してまで来ている留学生もいる。「日本に行けば月に20万円は稼げる。借金は数ヵ月で返せる」と半ば騙されて来日する留学生も少なくない。

 受け入れ先の日本語学校は、いまや全国に600校あまりが乱立する。もちろん教育機関として真摯に留学生と向き合っている学校もあるが、留学生からの搾取を目的としたような悪徳校も少なくない。“国際貧困ビジネス”とも言うべき、憂慮すべき事態が横行しているのも事実なのである。

 その闇は深く、混沌としている。

 キラキラとした夢を持って、いざ憧れの日本に来てみれば、深夜のコンビニで働いても月に12,3万円稼ぐのがやっと。生活はキツい。

 深夜のコンビニでは酔っぱらいの客に絡まれることもある。朝の通勤ラッシュ時にはレジに行列ができて、日本人の客たちは無言で金を払い、商品を受け取っていく。人種差別的な暴言を吐かれることもある。

 だが、彼らに話を聞いていると皆、「日本はいい国です」という。2006年まで内戦が続き、2015年には巨大地震に見舞われたネパールからの留学生などは、「日本は地震からもフッコ(復興)しているし、安全。夢みたいな国です」とまで言う。

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