2016年6月6日月曜日

<適少社会>被災地の暮らし下支え

Source:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160603-00000018-khks-soci

河北新報 6月3日(金)、ヤフーニュースより
 東日本大震災の被災地で、外国人留学生や技能実習生が労働力不足を補う。教育旅行や被災地支援に訪れる人々が地域に活力を与える。外国人と交流人口。人口減が進む被災地にとって「ヨソモノ」の存在はどんな意味を持つのか。現状と今後の課題を探った。(「適少社会」取材班)
◎人口減 復興のかたち[45]第10部ヨソモノの力(1)バイト留学生
 午前5時45分、人影のない宮城県名取市のJR東北線館腰駅に仙台駅からの始発列車が滑り込む。ホームには厚手の上着を身に着けた外国人の若者が次々と降り立つ。一行30人が足早に乗り込んだマイクロバスは、近くの食品製造工場へと静かに走り去った。
 外国人はネパールなどからの留学生。仙台市の日本語学校や専門学校に通い、入管難民法に定められた週28時間を上限にアルバイトに励む。
 宮城県の外国人留学生のアルバイト人口は約2200人(15年)に上る。仕事は総菜などの食品製造や宅配の荷物仕分け、クリーニング、飲食店での調理など多種にわたる。
 「震災被災地の労働力不足を補う形で住民の暮らしを支えている」。宮城県国際化協会の伊藤友啓さん(42)は、県内の現業職場で留学生の存在が大きくなっている実情を説明する。
 この食品製造工場では、大手コンビニエンスストアに弁当やサンドイッチなどを出荷する。アルバイトのほとんどは仙台市在住の留学生で、その数約350人。うち9割をネパール人が占める。24時間体制の工場で欠かせない労働力になっている。
 留学生はアルバイトで生活費や学費を捻出するほか、家族に仕送りもする。仙台市の日本語学校で1年前から学ぶネパール出身のスレスタ・マニサさん(23)は週5日、この工場で働く。「アルバイトだけでは暮らしが大変だ。でも、日本のIT技術を勉強したい」と言う。
 仙台市には15年12月末時点で1万1298人の外国人が暮らす。震災前(10年4月末)の1万205人を超えた。国籍では中国人の3733人が最多だが、人数は震災を境に漸減している。急増したのはベトナム人とネパール人でどちらも1000人を上回った。
仙台観光国際協会は3月、両国出身の留学生に対応するため、ベトナム語とネパール語のごみ出しルール表を、市内の町内会に配布し始めた。留学生に交通ルールや災害時の心構えなどを知ってもらう無料の出前講座も実施している。
 4月末、仙台市青葉区の日本語学校「仙台イングリッシュセンター」で、来日間もないベトナムと中国の留学生31人が出前講座を受講した。5年前の仙台での出来事を尋ねられた学生たちは、異口同音に「ジシントツナミ」と即答した。避難の場所や方法を熱心にメモに記す姿が、震災への関心の高さをうかがわせた。
 仙台市民の100人に1人は外国人。講師を務めた仙台観光国際協会の堀野正浩さん(41)が強調する。「災害時は外国人を助けたり、助けられたりするケースが出てくる。日本人側も町内会などで地域の力として外国人を生かす工夫が必要な時代になっている」
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 東日本大震災は被災地の人口減少を一気に進ませた。日本全体でも人口減はもはや避けられない。超高齢化を伴う人口減に適応し、心豊かに暮らす「適少社会」の実現が求められる。再生へ歩む被災地に将来の日本のモデルがある。

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