法令違反も潜在 雇用環境の改善急務
人手不足を背景に、佐賀県内でも外国人労働者を受け入れる企業が広がり、1年前より350人増えて3200人を超えている。一方、佐賀労働基準監督署が立ち入り調査した技能実習先企業の7割(2014年)で賃金不払いや上限を超えた長時間労働などの不法行為が見つかっている。外国人労働を巡る問題は表面化しにくく、雇用環境の改善が急務となっている。
「他業種よりも賃金など条件面で見劣りするため、社員が集まらない。短期間でも外国人に頼らないと仕事が回らない」。数年前から中国人実習生を雇う県内の縫製会社は打ち明ける。
県内の外国人労働者は昨年10月末、留学生を含め3264人。製造業を中心に卸売や小売、飲食業など525社が受け入れている。中国人が千人と最も多く、ネパール人700人、ベトナム人640人と続く。うち外国人技能実習制度で来日した実習生が4割を占める。
技能実習制度は本来、新興国への技術移転が目的。ただ、3年前からフィリピン人実習生6人を雇い入れている金属加工業者は「それは建前にすぎない」と言い切る。「うちの実習生も残業をしたがる。日本でお金を稼ぎたい外国人と、低賃金で労働力が確保できる企業の利害で成り立っている側面もある」と制度のほころびを認める。
政府は経済界の要請も受け、実習生の受け入れ期間延長や介護にも対象を広げる方針だが、雇用環境の整備は遅れ気味だ。佐賀労基署が14年に立ち入り調査した実習先企業46社のうち、32社で法令違反が見つかった。12社が労使で定めた残業時間の上限を超えて働かせていたほか、残業代を支払っていなかった企業も6社あった。
外国人を雇用している企業の半数は30人未満の小規模事業所で、労基署は「人員体制面で管理が行き届いていないことが要因」とみる。労基署への相談は年数件だが、管内に外国語に対応した相談窓口はなく、「表面化していない問題がないとは言えない」という。
「休みを取ったら上司に蹴られた」「安全靴を履かずに建設現場で働き、けがをした」-。佐賀市で日本語教室を開く越田舞子さんは実習生からこんな相談を受けることがある。「日本語が十分に話せなかったり、渡航費を親類から借りて来日したりして、誰にも相談できずに我慢して働き続けている人もいる」。問題の根深さを指摘する。
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