Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/202b952314a2d82d0d7c47e733b692bb2a220fb8
Md. Tahmid Zami [ダッカ 9日 トムソン・ロイター財団] - 南アジアでは豪雨の頻度が高まって国境をまたぐ洪水を引き起こしており、専門家は、地域各国による密接な協力の必要性を指摘している。 ネパールでは先月、ベンガル湾と国境近くのインド側で発生した低気圧の影響で豪雨が2日間続き、鉄砲水や土砂崩れが発生して200人近くが死亡した。8月には、インドとバングラデシュの国境付近で鉄砲水が発生し、少なくとも71人が死亡した。 世界銀行が2021年に発表した報告書によると、南アジアの主要都市の約80%が洪水のリスクにさらされており、2030年までに年間2150億ドル(約32兆円)の損害をもたらす可能性がある。 しかし、国境をまたぐ大規模災害の頻発にもかかわらず、信頼関係の欠如から南アジア諸国の間では協力が難しく、往々にして相互非難に発展している。 インドはネパールにとって最大の貿易相手国だが、両国間には国境紛争も数多く存在する。同様に、バングラデシュとインドは経済的に強い結びつきがあるが、水の配分や、不法越境者の殺害をめぐって対立している。 インドのFLAME大学の国際学教授、ハーシュ・バサニ氏は「この地域では政治的な相違があるため、どの国も河岸管理について他国を信頼していない」と述べた。 バングラデシュ政府の顧問は8月の洪水について、バングラデシュに流れ込む川にインドが何の警告もなく上流のダムから放水したことが原因だと訴えている。 これに対してインド外務省は声明で、水位上昇に関する即時データをバングラデシュと共有していたが、洪水による停電で共有が停止したと説明。この地域を襲ったのは「今年最も激しい雨」である上、いずれにせよ大半の水はダム下流の集水域から流れたものだと主張した。 声明は「インドとバングラデシュ両方を流れる河川の洪水は、両国民に苦しみをもたらす共通の問題であり、解決に向けて緊密な相互協力が必要だ」としている。 <早期警報> 河川や河岸湿地の管理を推進するバングラデシュの非営利団体リバーライン・ピープルの代表、シャイク・ロコン氏は、気候変動により8月の洪水のような異常気象は頻度と激しさを増す可能性が高いと予想。「しかし各国内、そして各国間の準備不足の言い訳に気候変動を使ってはならない」と語る。 2015年に仙台で開かれた国連防災世界会議で採択された「仙台防災枠組み2015─2030」には、各国は早期警報を発し、洪水が到達する前に地域社会が準備を進められるようにすべきだとうたわれている。 英国に拠点を置く開発組織「プラクティカル・アクション」のダラム・ラジ・ウプレティ氏によると、南アジアの脆弱な地域社会では、予報とタイムリーな情報伝達により、モンスーンが引き起こす洪水による死者数がほぼゼロに抑えられている。同組織はバングラデシュとネパールで洪水耐性プロジェクトを実施している。 ただ、モンスーンによる洪水は10日から12日ほど前に予測できるものの、雨による鉄砲水は兆候が乏しいため地域社会への警報にはより大きな課題があると、バングラデシュ洪水予警報センターのサルダール・ウダイ・ライハン氏は言う。 バングラデシュとインドは、国境をまたぐ54の河川の洪水警報について協力体制を育むため、1972年に合同河川委員会を設立した。インドとネパールにも同様の委員会がある。 しかし、ダムから放流される水や上流の水位に関するリアルタイムのデータ共有があれば、より役立つだろうとライハン氏は述べた。 <乏しい地域の連携> オランダのバーヘンニンゲン大学のスミット・ビジ教授によると、各国が協調行動を採ることはまれだ。同じ洪水に適応するために各国がそれぞれ独自の戦略を整えてもほとんど意味はなく「災害に対処するためのリソースを共有する必要がある」という。 希少な協力の例として、ネパールからインドに流れるコシ川とカルナリ川を巡る対応が挙げられる。プラクティカル・アクションなどの組織が実施したこのプロジェクトでは、気象観測所の改良と、増水時に携帯電話に警報を送信するシステムの設置が行われた。プロジェクトは主にネパール側で実施されたが、国境付近に住むインド市民も洪水警報を受け取ることができ、恩恵を受けた。
現在、バングラデシュとインドの間では、両国を流れる河川のごく一部についてしか合意が成立していない。 ビジ氏は、両国は54の河川について個別に長期交渉を続けるのではなく、包括合意を結ぶべきだと指摘。「われわれ南アジア諸国は協力する必要がある」と訴えた。
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