Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/94fd4e00d9f3d81a764b9d3560d3bf2803ad5cd7
そして、3階か4階にある入り口が鉄格子になっている部屋の前にたどりついた。そして、後ろから男が2人ぬっと出てきた瞬間、彼らは無言で私を羽交い締めにし、鉄格子の部屋に押し込もうとした。客引きの男の手には南京錠のキーが握られている。
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【実録・人間劇場】 北インドの山奥にある温泉郷「マニカラン」から、首都ニューデリーへ戻ってきた。明後日にはインディラ・ガンディー国際空港から日本へ戻る予定だが、その前にひとつ行かなければならないところがあった。 【写真】ケミカルチックな絵が描かれた車=インド・カソール その悪評の高さから尻込みしていたが、ニューデリー最大の売春街である「GBロード」は自分の目で見ておかなければならないだろう。 GBロードは泊まっているゲストハウスがあるバックパッカー街「パハールガンジ」から歩いて30分ほどの場所にある。ゲストハウスを出てひたすら東に向かって歩き、線路の上を渡る500メートルはある長い陸橋を越えると、「Garstin Baston Road」=「GBロード」に交差する。そこからさらに500~600メートルほど北上したところにある古びた雑居ビル群が売春街となっている。 あらゆる書籍や報道を読む限り、インドの売春街にいる女性の多くは人身売買などによって隣国から連れてこられた人たちという説が多い。GBロードの売春宿では14~15歳の少女が当たり前のように体を売っていて、中には10歳の少女まで…。ブローカーにだまされて連れてこられた少女もいれば、家族や親戚に売り飛ばされてしまった少女もいるという。 その環境は劣悪で、当然、性病といった類いの病気の対策もされていない。結核、ウイルス性肺炎、HIV/AIDSといった感染症が蔓延しているというが、無理もないことだろう。 GBロードまできていてなんだが、正直言うと女性を…というつもりはなかった。それは倫理的な問題などではなく、ただただ性病をもらうことが怖いという自分本位の考えからである。ビル群を横目に線路沿いを歩いていると、さっそく客引きの男に声をかけられた。 「どんな女性がいるか見てもいいか?」 そう聞くと、男は「問題ないからついてこい」と、雑居ビル群の間にできた人がすれ違うのもやっとの細い路地を進んでいった。その路地は迷路のようになっていた。深部まで行くと、四方をビルで囲まれたビルが乱立し、昼だというのにもはや太陽の光が差し込んでいない。ビルの内部も迷路のようだ。無秩序に階段が張り巡らされ、感覚的にはビルとビルが階段によってつながっていた。
そして、3階か4階にある入り口が鉄格子になっている部屋の前にたどりついた。そして、後ろから男が2人ぬっと出てきた瞬間、彼らは無言で私を羽交い締めにし、鉄格子の部屋に押し込もうとした。客引きの男の手には南京錠のキーが握られている。
このときは鉄格子の棒だったが、細い棒を本気でつかんだときの力は、男3人を合わせた力を上回ることを初めて知った。私は男たちに監禁されまいと鉄格子にしがみつきながら、助けを呼ぶため大声で必死に叫び続けた。
■國友公司(くにとも・こうじ) ルポライター。1992年生まれ。栃木県那須の温泉地で育つ。筑波大学芸術学群在学中からライターとして活動開始。近著「ルポ 歌舞伎町」(彩図社)がスマッシュヒット。
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