Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/e86dc91ffe07e50b0bfa04eae20349ebfcf6242e
根気強くひとつのことを考えられない、寝ても疲れが取れない、歩くのが遅くなった……。「老い」は気付かぬうちに少しずつあなたを蝕んでいく。老いを少しでも遅くしたいと願わない人などいないだろう。そこで、食事術や生活習慣といった「不老術」をアメリカの名医がまとめた本が誕生、NYタイムズベストセラーに選ばれ、エリック・シュミットといった数多くの著名人から絶賛を受けている。世界9カ国以上で刊行の話題作『医者が教える最強の不老術』より、内容の一部を特別公開する。 ● 寿命を伸ばす介入策は、 糖とデンプンを大幅に減らすこと 20万年前にホモ・サピエンスが地球を闊歩しはじめてからの大部分、糖分は希少で、精製された穀物はまったく存在していなかった。たまに夏の終わりに野生のベリーが実を結んでいるところに出くわしたり、蜂の巣をみつけたりするときがあった以外、人類はあまり糖分を手にすることはなく、せいぜい1年間に小さじ22杯分の砂糖にあたる糖分を摂取するといったところだったろう。 今日のアメリカ人は、砂糖を1日に小さじ22杯分(約355mlの炭酸飲料2本分以上)摂取し、子どもたちにいたっては、1日に小さじ34杯以上(炭酸飲料3本半)も摂取している。砂糖の消費量は、1800年に1人あたり年間4.5キロだったものが、今や69キロにまで増えた。 ネパールのハチミツハンターは、火のついた小枝を手に30メートルの木に登ってハチミツを集めていた。想像してみてほしい。クッキーが食べたくなるたびに、燃えさかる小枝を手にして木に登ることを。一方、1800年代に製粉機が発明されたことは、食生活に精製デンプンをあふれかえらせることになった。 第2次世界大戦後、飢餓が広がる世界に豊富なデンプン質のカロリーを供給することを目指した工業的農業は、その目的を達成した。砂糖よりグリセミック指数が高いアミロペクチンAという超デンプンを含む矮性小麦の開発も、すでに悪かった状況をさらに悪化させることになった。現在、平均的なアメリカ人は年間60キログラムの小麦粉を消費している。 20万年にわたって進化してきた生存経路に対するこのデンプンと糖分の氾濫は、どんな結果をもたらしているのだろうか? DNAにダメージが及ぶことについてはすでに述べた。私たちの身体には欠乏や飢餓への適応を助ける遺伝子は何百も存在するが、過剰、つまり薬理学的大量投与により日々体内にあふれかえる糖分やデンプンの処理を助ける遺伝子はほとんど存在しない。 私たちの身体は、食べ物が足りないというストレスを乗り越えることに加えて、食べ物が豊富にあるときには新たな細胞や組織、構造を作り上げるように、エレガントに設計されている。不足と過剰の駆け引きこそが、健康と長寿の鍵だ。 長寿スイッチは、食生活に含まれる栄養素(主に炭水化物、糖、タンパク質に含まれるアミノ酸)の摂取タイミング、質、量によって調節されることがわかっている。長寿研究の多くは、これらの長寿スイッチをいかに適切に調整するかに焦点を合わせる。 食べ物は、これらの長寿経路のマスターコントローラー、いわば指揮者だ。タンパク質、炭水化物、脂肪だけでなく、2万5000種類ものファイトケミカル(植物性化学物質)も、その多くがこれらの長寿スイッチに有益に作用する。 現在の科学では、これらの栄養素は必須栄養素とはみなされていないが、実際には必須の栄養素だ。これらの栄養素が欠乏した場合、ビタミンCの欠乏による壊血病のような即時的な欠乏症は引き起こさないとしても、心臓病、がん、糖尿病、認知症、老化の促進といった潜伏期間の長い欠乏性疾患の原因となる。 寿命を延ばし、慢性病を予防したり、それから回復させたりするための介入策を1つだけ処方するとしたら、私は、食事から糖分と精製デンプンを大幅に減らすか、除去するだろう。 糖分とデンプンが氾濫すると、膵臓は血糖値をコントロールするために、どんどんインスリンを分泌しようとする。これがインスリン抵抗性、つまり細胞がインスリンからのシグナルを「聴き取る」ことができなくなる状況を引き起こす。そうなると身体はどうするか? インスリンをさらに分泌するのだ。 残念なことに、この過剰なインスリンは糖分と脂肪を主に腹部臓器の周りの脂肪細胞(お腹の脂肪として知られる内臓脂肪)へと追いやって、細胞内に脂肪を固定し、代謝を低下させ、空腹感と炭水化物に対する渇望を増加させる。これらすべてが血糖のコントロールとインスリン抵抗性を悪化させ、老化という病気を引き起こすのだ。 ハーバード大学の予防循環器病学部長であるドクター・ジョージ・プルツキーは、かつてこう言ったことがある。もし動脈が完全にきれいな百寿者のグループを見つけたとしたら、共通点が1つあることに気づくだろう。それはインスリン感受性が高いことだ、と。 高濃度の糖やデンプンは、インスリンシグナル伝達経路に作用するだけではなく、mTOR(エムトア)経路、AMPK経路、サーチュイン経路を含め、すべての長寿スイッチに悪影響を及ぼす。 結論は次のとおりだ。健康的な老化のためにできる最も重要なこととは、血糖のバランスを整え、インスリンレベルを低く保ち、細胞のインスリン感受性を高く保つこと。つまり、低糖質、低デンプンの食事を摂り、良質な脂肪とタンパク質をたっぷり摂って、ファイトケミカルと食物繊維の豊かな果物や野菜をたくさん食べることである。 (本原稿は、『医者が教える最強の不老術』からの抜粋です)
マーク・ハイマン/ 中里京子
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