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高崎経済大学経済学部教授、さくらジャパン税理士法人の税理士である田中久夫氏の著書『ロータリークラブに入ろう!』より一部を抜粋・再編集し、知られざる「ロータリークラブ」の魅力について解説する。
日本ロータリー「米山記念奨学事業」の実際
日本のロータリーが誇るべき事業に、ロータリー米山記念奨学事業というのがある。「公益財団法人ロータリー米山記念奨学会」と日本のロータリーが協同して行う奨学事業だ。この制度ができてすでに七〇年が経とうとしている。 この事業の着想となったのが、日本のロータリーの創始者である故・米山梅吉翁の生前の功績を讃えて、東京ロータリークラブが始めた「米山基金」だ。奨学金給付の対象になるのは、訪日した私費外国人留学生に限られている。僕らは、彼らが将来有為の人材に育ち、いずれは日本と母国との平和の懸け橋になって、国際親善や国際平和に貢献してくれることを期待している。 具体的には、彼らに一年または二年の間、返還不要の奨学金(大学学部学生には月額10万円、大学院学生には月額14万円)を支給する。 その対象者は年間約850人、年間に支給する奨学金の総額は約15億円という規模で、民間団体による国際奨学事業では国内最大級を誇る。これまでにこの恩恵を受けた留学生はおよそ2万2000人、その出身国は世界中の約130ヶ国に及んでいる。特徴的なのは、その事業費のすべて(ロータリアンと彼らの関連する企業からの寄付金収入、奨学会に贈与された株式等から発生する配当金、預金等の利息など)が日本のロータリアンの寄付によってまかなわれていることだ。 そのため、ロータリアンはこの事業の維持のために1年間、1人当たり最低1万6000円以上の寄付が必要になる(日本のロータリアンが9万人の場合を想定)。 もちろん支出した寄付金には、税制上の各種特典も認められている。この事業については、以下のような特徴がある。 (1)日本のロータリークラブは約二二五〇あるが、その中の約八五〇のクラブが割り当てられた留学生の支援を担当する。このクラブを「世話クラブ」という。 (2)世話クラブでは、受け入れた留学生の相談役となる会員を決め、その会員は一年または二年間、その役を務めることになる。このロータリアンを「カウンセラー」という。 (3)米山奨学生であった留学生は、大学、大学院を卒業後は「学友会」(国内に33ヶ所、国外に9ヶ所:台湾、韓国、中国、タイ、ネパール、モンゴル、スリランカ、マレーシア、ミャンマー)という組織に入り後輩の支援をする。の学友会がある。
奨学金候補者決定から給付までの流れ
僕は、これまで地区の米山記念奨学委員会委員長を三年間務めたことがある。いわゆる「米山」(ロータリアンはこの事業をこう略称する)を知るいい機会になった。 米山は、ロータリーの行う事業のなかで最も分かり易い事業だと思う。事業の内容は簡単だ。ⅰ私費、ⅱ外国人、ⅲ留学生という基礎資格を前提に、ⅳ前年度の地区の寄付総額で決まる奨学生数(年間約850人の奨学生の配分は地区全体の前年度の寄付額実績を第一の基準とする)、ⅴ指定校制度(地区内の留学生を抱える各大学に対し、地区から次年度の奨学生の推薦枠を伝えて、各大学はその範囲内で学内の被推薦留学生を決定する)、ⅵ地区米山委員会による選考(書類選考と面接選考)の構成の中から、次年度の奨学生が決定する。 その後は、地区内のどこのクラブに世話クラブになってもらうか、その中のどの会員にカウンセラーになってもらうかを、自薦他薦を交えて選考する。クラブ側からもどの奨学生がいいか、国別、性別、大学別などの希望が提示され、いくつかの組み合わせの中からベスト・マッチングが決定していく。 四月の新学年度から、実際の奨学金給付が開始する。奨学生たちは毎月、世話クラブの第一例会に出席し、例会時間中に会員に対し近況報告をして、その月の奨学金を受け取る。この一時間でクラブ会員との交流が生まれ、その後さまざまなクラブ行事に参加して、母国と日本との文化や慣習の違いを体験していく。 日本のお父さん・お母さんに相当するカウンセラーとの交流も濃密だ。休日には、近くの観光地にカウンセラーの家族と行楽に出かける。食事会に呼ばれ日本の食事を楽しむ。進学や就職の相談をすればカウンセラーは真摯にそれに応え、クラブのメンバーや地区の米山委員と一緒にそれに対応する。まさに一人の子供の親代わりのような存在になる。 卒業後、彼らは学友会に所属し、相互の連絡を続けながら交流は継続する。
ロータリークラブが掲げている「クラブ」の語源は…
ところで、ロータリークラブが掲げている「クラブ」(club)という言葉は、かの文豪ウイリアム・シェイクスピアによって造られたと言われている。 いまから四世紀ほど前、当時一八歳の文豪の卵は毎日の放蕩生活のなか、村の領主に命ぜられ、彼の子を身ごもった年上の女性と結婚させられる。 その後、彼はロンドンに逃亡して戯曲家として勇名を馳せることになるが、ところが有名になればなるほど周囲に人が群れてきて好きな酒もおちおち飲めないようになる。 たまりかねた文豪は、居酒屋の主人に断って奥の一室を借り、本当の友人だけを招いた集いの部屋を設けた。そこで宣言したのが、「同好の諸君、明日もここに集まろう。古代エジプトのコプト語をヒントにして、われらの集いを『クラブ』と命名する」であった。 こうして「気のおけない同好者の集い」を意味する言葉、「クラブ」が誕生した。 僕たちの組織「ロータリー」も「クラブ」と呼んでいる。ロータリーのスピリッツを共有する気のおけない仲間たちの集いだ。 因みに、「ロータリー」の名称は、集会(例会)を会員各自の事業所で順番に開いたことから名付けられたものだ。
「割に合わないこと」がロータリーの真骨頂
ロータリークラブが出来て間もないころ、アメリカのとある新聞記者(※25)はロータリーの創始者ポール・ハリスに取材したのちに、次のような記事を書いている。 「最近、巷に変な団体ができた。彼が組織した団体は奇妙なことに、会員はその団体から何も得ないどころか、善を行うという特権を手にするために会費まで払うのである」 まさに、ここにこそロータリーの真骨頂がある。費用対効果を考えると割に合わないことだ、無駄遣いだ、偽善だ、金持ちの道楽だ、と思われる人もいるかもしれないが、それでもロータリーを愛して死ぬまで会員を続ける人が大勢いる。 一体、僕たちはロータリーの何に惹きつけられているのだろうか? ロータリーの魅力について、それはロータリーによって「人生の目的」を知ることが出来るからだ、と言う人がいる。僕もそれに同意する。
ロータリーの魅力は「自分磨きの旅を経験できること」
「人生の目的」、すなわち「人が生きる意味」とは何か? これまで多くの先覚者たちがそれを説いてきた。 新渡戸稲造や内村鑑三といったクリスチャンが言う人生の目的は「品格の完成」にあるという。仏教・真言宗の教えでは、人生の目的とは「心を磨くこと」だと言う。 経営の神様と称される稲盛和夫氏はその著書(※26)のなかで、人生の目的とは「心を磨き、魂を高めること」であり、「それは生きる目的、人生の意義そのもの」だと言い切る。 ロータリーでは、これらと同義の自分磨きの旅を経験することが出来る。そこに魅力があるのだと思う。 アメリカのある家庭では、息子がロータリーに入ったことを喜び、日本でいうお赤飯を炊いて喜ぶ、という特別のお祝いをすると聞いたことがある。息子が社会に認められて一人前になったお祝いということだ。 *********************************************** さくらジャパン社会保険労務士法人 税理士 田中 久夫 1957年2月生まれ、群馬県高崎市出身 ●現職 ・高崎経済大学経済学部教授(会計学専攻) ・経営学博士 ・さくらジャパン税理士法人 税理士 ・さくらジャパン社会保険労務士法人 社会保険労務士 ●ロータリー歴 1998年高崎ロータリークラブ入会、幹事を経て会長(2014~2015) その後、国際ロータリー第2840地区ガバナー(2017~2018)に就任 現在は、国際ロータリー第1地域ロータリーコーデイネーター補佐(ARC) 公益財団法人ロータリー米山記念奨学会評議員、同会財務委員長 ●主な著書 「商法と税法の研究」森山書店、「税務会計論序説」税務経理協会、「商法と税法の接点」財経詳報社、「不動産投資」ダイヤモンド社、「会計学を学んだあとの法人税法セミナー」学陽書房ほか多数
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