Source:https://www.esquire.com/jp/news/a34925479/why-mount-everest-and-swiss-alps-are-getting-taller-20210110/
2020年12月、世界で最も高い山の標高が約4メートル高くなりました。By Ryutaro Hayashi2021/01/10、GOOGLEニュースより
この記事をざっくり説明すると…
エベレストの標高を再計測したところ、8848.86メートルとなり、これまでに発表されていた標高よりも約4メートル高くなりました。
山々は浸食されるよりも速いスピードで「成長」しているとのこと。
測定方法で誤差が生じたり、地殻変動による変化の可能性も指摘され、中国とネパールはエベレストの新たな測定を実施することで合意しました。
近年、地殻変動の影響などを受けて 中国チベット自治区とネパールの国境上にまたがって位置するヒマラヤ山脈のエベレスト(チベット語ではチョモランマ)の標高が、従来発表の数値よりも約4メートルほど高くなっていることが発表されました。
また、スイスのアルプス山脈が「成長」していることも判明し、世界を驚かせています。そこには、一体どんな理由があるのでしょうか? その原因を探ります。
山の標高に変化が起きるメカニズム
ANTON PETRUSGETTY IMAGES
話を進める前に、まずはプレートテクトニクス(プレート理論)の基本的な考え方について触れておきましょう。地球とは、外周に薄い地殻の殻を持つ、柔らかなマグマの浮遊体とも表現できます。そして、地球の表面は「プレート」と呼ばれる十数枚の巨大で固い岩盤から構成されています。
地球の表面を覆っているそれぞれのプレートは互いに動き、圧迫し合っています。そして、それによって地震や火山を生み出す要因にもなるのです。しかし、それだけでなく、大陸の移動・地殻の破壊や再生なども生じています。そんな要因によって、大西洋側でも太平洋側でも、東西の両側で地殻変動が進行しているわけです。
と同時に、大陸側のプレートである「大陸プレート」と海側のプレート「海洋プレート」が衝突する地点となる海底のおいては、「海洋プレート」は「大陸プレート」によって、さらに下へと押しこまれています。この「プレートテクトニクス」説では、海底にある「海溝」と呼ばれる細長く溝状に深くなっている地域は、そうして誕生したとされています。また「日本海溝」に関しては近年、「西側へ、つまり日本列島のほうに年間1cm程度のペースでゆっくり動いている」という「日本海溝移動説」が産業技術総合研究所地質調査総合センターの研究主幹である高橋雅紀博士らによって提唱されています。
図上:主要なものとして、現在地球上には15のプレート(岩盤)が確認されています 図下:プレートテクトニクスにおけるプレートの動き方のイメージ図(Subduction=沈み込む・Lateral Sliding=横方向に動いてすれ違う・Spreading=離れ合う)。
VECTORMINEGETTY IMAGES
これを身近な例で例えてみましょう。
水で満たした浴槽をイメージしてください。そこにほどよい大きさの氷の塊を入れて、水の表面を氷で埋め尽くします。すると、どうなるでしょうか? 接触する氷の塊が互いを押し合うことで、水面が揺れ動き、上昇や下降を繰り返します。ここでは水の表面が地球の表面であり、氷の塊は地表を覆うプレートに例えています。これに似たことが地殻でも起きており、山々の標高に変化が生じているのです。
以上が一般に「地殻隆起」、「地殻上昇」、「地殻変動」などと呼ばれる現象についての説明です。地殻がどのように動き、相互に干渉し合いながら作用しているのかを理解すれば、山の標高を計測すること自体がそもそも難しい課題であることがおわかりいただけるのではないでしょうか。
アルプス山脈の場合
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ヨーロッパ中央部を東西に横切るアルプス山脈の場合、「地殻の隆起」は隆起したことで生じる土壌の浸食の影響と対抗する関係にあります。アルプス山脈は世界最古の山々と比べれば、まだ生まれたばかりの山脈に過ぎません。そのため、ギザギザとした鋭い形状を持つアルプスの山頂では、浸食の影響も観測されています。
「山脈に連なる山々は、エスカレーターのように変動しているものである」と、科学者たちは長い間考えてきました。地殻変動による隆起が起こるのと同じくらいの速度で山頂が浸食されているとする考え方です。
JAMES O'NEILGETTY IMAGES
宇宙線(ほぼ光速に近い速さで宇宙空間を飛び回る、極小の粒子の総称)が当たることで生じる科学的な痕跡を観測すれば、山頂に現れるもののうち、何が古くて何が新しいものであるのかを推定することが可能です。つまり、山頂に現れる新しい岩石が浸食の結果であるかどうかも解明することが可能なのです。身近な例で言うなら、街に飾ってある銅像のある部分が、常に人の手に触れられることでピカピカに輝き、新たな表面を露出させているのと似ています。
スイスのベルン大学の科学研究チームは次のように解説します。
地球の表面に到達した宇宙線が、石英(二酸化ケイ素が結晶してできた鉱物のこと。六角柱状のきれいな自形結晶をなすことが多い)を構成する酵素原子に当たって核反応を起こすのです。その結果として、新たな同位体が形成されます。地球上の極めて高い標高でしか形成されないものなので、その同位体を観察することで地表年代を知ることができるのです。密度が高ければ、より長く宇宙線に晒されていたことになります。つまり、比較的古い地表であると結論づけることができます。
科学者たちの研究により、浸食の速度が地殻の隆起と比べて遅いことが発見されています。特にスイスのアルプス山脈においては、浸食は1000年で14ミリという驚くべき速度で起きていますが、隆起は同じ1000年の間に800ミリに及ぶこともあります。そのような場所では、浸食と比べて50倍もの速さで標高が上がっていくことになります。
さまざまな要素を理解することで、浸食がなぜ起きるのか? また、どこで起きているのかなどの詳細な観測が可能になり、より正確な測定が可能になるのです。
エベレストの場合
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エベレストは、ネパールと中国の国境上に位置していますが、観測方法の違いなどによって、その標高には諸説が存在していました。ざっと挙げるだけでも、下記のような計測結果が存在します。
1954年のインドの測量による「8848m」
1975年の中国の登山隊が計測した「8848.13m」
1999年にアメリカの調査隊がGPS(全地球測位システム)による調査結果として発表した「8850m」
2005年に中国が再計測して発表した「8844.43m」
そのような経緯を持つエベレストの標高問題ですが、現地時間2020年12月8日、中国とネパール両国は共同発表というカタチでエベレストの標高を2万9031.7フィート(8848.862メートル)であると公式に発表を行いました。
この数値は、2005年前に中国が発表したエベレストの標高よりも13フィート(約3.96メートル)ほど高くなっています。前回の調査では、中国は山頂における岩の最高地点を基準としていました。が、「山頂における雪や氷の高さが含まれていない」という非難を受けていました。その点も踏まえて今回は、「雪を含む高さ」を標高として採用しています。
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過去に両国が合意した測定値は存在していなかったため、今回の新たな測定値が政治的な指標とされることになるでしょう。中国とネパール、両国の指導者によってエベレストの公式な高さが共有されたことになるのです。今回は雪も含む高さとなりましたが、ヒマラヤ山脈全体が地殻プレートの変動の影響を受けていることも影響していると考えられています。
エベレストの存在は数百万ドル規模の環境資源であり、地域の経済にとって極めて重要な価値を持っています。世界最高峰の標高を正確に測ることは、登山者たちのサポートや救出を行い、また、環境の保全活動にともなうさまざまな産業全体にとっても大きな意味を持っています。
と同時に、今回の中国とネパールが共同で行った標高の測定作業は、両国の国交65周年記念事業の一環として実施されたものでもあります。歴史的には、隣接するインドとの距離が近かったネパールですが、もう1つの隣国である「中国(ヒマラヤ山脈を介して隣接)のネパール国内における影響力の拡大を示すもの」とする見方もあるようです。
肝心のエベレストの標高にまつわる調査ですが、次に必要となるのは、「エベレストがどの程度の速度で成長および浸食されているか?」を解明することになると考えられています。
Source / POPUAR MECHANICS
Translate / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です
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