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【出世ナビ】進学校の素顔 西大和学園中学・高校(中) 教育ジャーナリスト・おおたとしまさ
奈良県有数の進学校である西大和学園中学校・高等学校。課外活動も盛んで、中でも「模擬国連」は生徒が各国の代表になりきって討論し、交渉力を磨く。さらにリーダーシップの発揮の仕方や、相手の立場を考えた上での立ち居振る舞いなど多くの成長効果が見込める。教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が取材した。
■模擬国連は知の総合格闘技!?
西大和学園には、部活とは別に、「特別活動」という課外活動が3種類ある。「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」「アクションイノベーションプログラム(AIP)」そして「模擬国連(MUN)」だ。 SSHはその名の通り、文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール指定校としての活動だ。AIPは、文部科学省のスーパーグローバルハイスクール指定校としての活動が終了したため、その後継活動として2019年度からスタートしたもの。「模擬国連」は英語科教員・丸谷貴紀先生などの発案で、09年に始まった。 丸谷先生は、08年に西大和学園にやってきた。すでに進学校として有名になっていたが、当時の生徒たちを見ていて、いわゆる受け身の勉強ばかりでなくて、もっと視野を広げて頭を使う活動をさせなければいけないと感じた。そのときに知ったのが模擬国連だった。
■いわば「総合格闘技」
「模擬国連は1923年にハーバード大学にて行われ始め、現代世界におけるさまざまな課題について学ぶための先進的な教育プログラムとして、全米の公立中学校・高校にもほどなくして広まっていきました。国連の多様な国際会議を学生が模擬し、各学生が一国の大使として自国の利益を追求することにより、現在の国際情勢を深く多角的に理解し、問題対処能力、交渉能力などを高めていく活動です。模擬国連活動には、リサーチ、会議、レビューの3つの段階があります」(西大和学園ホームページより) 英語力向上が望めることはもちろん、現実の社会情勢についても学べるし、ディベートや交渉の技術も身につく。チームワークやリーダーシップについても体験的に学べる。高校生が学ぶべきことの総力を結集する、いわば「総合格闘技」のような活動だ。 09年に西大和学園での模擬国連活動がスタートすると、12年には全国大会で審査員特別賞を受賞し、ニューヨークでの世界大会でも優秀賞を獲得する快挙を成し遂げた。 ただし、参加校が増加したため近年では全国大会への出場の難易度が上がっている。実は西大和学園もここ数年全国大会への出場を果たせていない。「もっとコンスタントに全国大会に出場できるようにして、関西での模擬国連の中心地だと思われるように発展させていきたい」と丸谷先生は意気込む。
■ロールプレイだからこそ本性が表れる
現在の「模擬国連」の幹部4人に話を聞いた。 ――なぜ模擬国連の活動に参加しようと思ったのですか? 生徒A 自分は三重県の出身なのですが、修業に出るつもりで実家を離れて、下宿しながらこの学校に通っています。せっかくなら勉強以外にも自分がいちばん成長できることに取り組みたいと思って、普通の部活ではなく、特別活動の「SSH」か「AIP」か「模擬国連」かで迷いました。でも英語が好きだったし、社会に出てからも必要になるだろうと思ったので、模擬国連にしました。 生徒B 私は3歳から8歳までイギリスに住んでいました。中学から西大和に入学して、高校生たちの模擬国連活動に憧れて、自分も入りました。尋ねられた質問に対して堂々と素早く的確に答えるその応答の速さがカッコ良かった。 生徒C 小4の冬から4年間ロサンゼルスに住んでいて、向こうでは西大和学園カリフォルニア校に通っていました。私も「SSH」と「AIP」と「模擬国連」で迷いましたが、国際情勢に興味があったことと、議論が好きなことと、憧れの先輩がいたことが理由で、模擬国連を選びました。 生徒D 中学までインターナショナルスクールに通っていました。そこにも模擬国連に似た活動があって、参加しようか迷ったまま参加せずに後悔していたので、西大和では挑戦しようと思って入りました。 ――西大和学園における「特別活動」というのはほとんど部活みたいなものなのですね。 生徒C はい。部活ではないのですが、「部長」とか「部員」とか言いますし。月・金・土の放課後に活動しています。部員は現在、高1・高2を合わせて30人くらいです。 生徒B 平日の放課後は活動時間が2時間くらいしかないので、調べ物やディベートの練習を行います。土曜日の放課後は3時間30分くらい時間があるので、模擬国連の大会に準じた方式で会議を行ったり、入ってきたばかりの高1への指導を行ったりします。 ――模擬国連の醍醐味は何ですか? 生徒A 自ら会議を引っ張っていきたいひとが多いと思うのですが、やりすぎると反発を食らってうまくいきません。その分、うまく会議をリードできたときの達成感や充実感は大きいですね。模擬国連で得たスキルをほかの場面でも生かせるようになりたいと思います。 生徒C 模擬国連には賞をとるという目的もあるので、いろいろなひとの思惑が結構ごちゃごちゃドロドロするんですよ。そのなかでリーダーシップを発揮するというのはなかなか難しいんだよね。それぞれの国のメリットを通さなければいけないし、押しすぎてもだめだし。 生徒B 私はその押したり引いたりというのが苦手なんです。でも一歩引いてみんなのやりとりを見ていると、準備の仕方だとか議論の進め方だとか大事にしている信条だったりとかにそれぞれの個性が表れていて面白いです。自分とはまったく違うどこかの国の大使になるからこそ、そのひと本来の個性が出るのだろうと思うんです。 生徒C 実際にどこかの国の大使という立場になって、国益を背負って真剣に議論をすることで、ニュースを見ているだけではわからない国際社会の力学が手に取るようにわかるのが模擬国連の醍醐味だと思います。 生徒D 私は他校との交流が楽しいです。ガチで模擬国連をやっているひとたちは国際的な条約とかを読み込んでいる量もものすごくて、その知識量に驚かされます。灘とかだとオーラがすごいですよ。「俺らは国連のこと知ってるんや!」みたいな(笑)。 ――いま、いちばん気になる社会問題は? 生徒B 私は性差別に関心があります。このまえ、ビデオ会議のZoomでネパールのひとがネパールにおける女性差別について講義してくれました。でも、ジェンダー・ギャップ指数ランキングでは、ネパールよりも日本のほうがずっと下だということを知って、びっくりしました。「日本、あり得なくない?」みたいな。 生徒C なんといっても米大統領選ですね。毎日米国のニュースをチェックしています。なんだかんだ言ってやっぱり世界の覇権国家のトップですから、世界中のひとの生活に関係しますし、模擬国連の前提知識にも大きな影響を与えます。 さすが、人前で話すことには慣れている。質問に対して間髪入れず答えが返ってくるし、他人の話を引き継いで意見を述べるのもうまい。そしてなにしろ成長意欲が非常に高い高校生たちだった。西大和学園の校風がそうさせるのであろう。
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