2020年3月25日水曜日

「日本で働く」もう諦めた 送り出し機関から突然辞退も…技能実習生に何が

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200325-00010004-nishinpc-bus_all
3/25(水) 10:33配信、ヤフーニュースより
西日本新聞
 「2人がコロナに感染し隔離された。もう日本には行けない」。ベトナム人技能実習生を受け入れるはずの福岡県内の建設会社社長(46)に、送り出し機関からそんな連絡があったのは2月上旬のことだ。

【画像】就業者に占める外国人の比率(依存度)

 6月には福岡市博多区の再開発関連工事を請け負う予定。社長は繁忙期を前に人材を求め、ハノイに飛び、実習生の採用を決めたが、唐突に立ち消えになった。

 連絡があった当時、新型コロナウイルスがベトナムで流行しているという情報はなかった。2人はもともと賃金の高い都市圏で働く希望が強かった。当初から“サクラ”として採用面接に交じっていたのかもしれない-。社長の胸にはそんな疑念も渦巻く。
 政府は昨年4月、外国人労働者の受け入れ拡大に向け、在留資格「特定技能」を人手不足が深刻な建設を含む14業種で創設した。ただ、資格を得たのは今月13日時点で4738人にとどまり、最大4万7千人程度とした政府の受け入れ見込みを大きく下回る。

 社長は慌ててインターネット上で面接を実施。なんとか実習生を確保したが、繁忙期に間に合うかは微妙だ。「せめて特定技能制度が使いやすければいいのだが…」。人手不足感が強まり続ける中、不満が募りつつある。
「仲介料」を巡るルールも定まっていない
 技能実習の最大の送り出し国・ベトナム。特定技能の資格試験はまだ実施されず、送り出し業者が受け取る「仲介料」を巡るルールも定まっていない。

 ベトナム政府の当初案では、業者が受け入れ先企業から得る金額を2800ドル(約30万円)、労働者からは給料の2カ月以下とされた。だが昨年10月末に公表された正式文書からは費用を巡る記載が消えた。関係機関の駆け引きが続いているとみられる。

 ベトナムで「労働力輸出」は成長産業だ。人材の送り出しを担う業者は「営利目的の会社」とされ、認可業者は約350社。だが、名義貸しや書類の偽造が横行しており、実際は約2万社に上るとされる。
「日本で働く」もう諦めた
  最低賃金は最も高いハノイでも月約2万円。日本からの送金は生活の支えとなる。「親が日本からの仕送りを早く得るため、早く送り出してくれる業者を選ぶという構造に変わりはない」と、ベトナムの事情に詳しい杉田昌平弁護士(35)。特定技能の労働者が支払う仲介料は50万~80万円と見込まれ、技能実習と変わらないという。

  ◇   ◇

 ネパールでも「日本で働ける」という期待が急速にしぼんでいる。

 特定技能の資格を得るには、日本語や技能の試験がある。ネパールでは介護人材向け試験が昨年10月に始まったが、合格率は1~2割に低迷。日本語試験には1万人超の申し込みが殺到したが、介護技能、介護用語の試験は約千人にとどまっている。

 ネパール政府は当初、「もっと日本語試験の枠を増やして」といった要望を日本側に伝えており「韓国のように言語試験をパスすれば日本に行けると勘違いしたようだ」(関係者)。介護分野で、日本語、介護技能、介護用語の三つの試験があることも十分に周知されていなかった。

 特定技能は14の業種ごとに試験や担当省庁が異なり、日本政府と送り出し国との制度調整は遅れているのが実情。福岡市に留学後、ネパールの第2都市・ポカラで日本語学校を経営するモティさん(39)は「日本で働くことをもう諦めている学生もいる」と、ため息を漏らす。

西日本新聞
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 2月7日、成田空港。特定技能のベトナム人、クェンさん(34)が大きな荷物を抱えて降り立った。元技能実習生のため試験は免除された。

 「母国に残る子どものために頑張ろう」。採用を担当したすばるコンサルティング(東京)の中村忠雄氏(49)が笑顔で出迎え、山梨県内の農業法人まで送り届けた。

 これまで採用した特定技能は計180人。介護43人、農業68人、建設52人…と業種はさまざまだ。過去10年間の外国人採用で培った送り出し業者33社との協力関係や人脈を生かしており、最近は会員制交流サイト(SNS)の口コミから頼ってくる若者もいる。

 中村氏は特定技能の見通しについてこう語る。「労働市場として成立するには5年はかかる。その間は技能実習ルートが続くだろう」(古川幸太郎)
【外国人の就労拡大】
新たな在留資格「特定技能」は一定の技能が必要な「1号」と、熟練技能が求められ家族帯同が可能な「2号」がある。同業での転職が可能で、日本人と同等以上の報酬と定められている。生活に支障がない程度の日本語能力が求められる。政府は今後5年間で最大約34万5千人を受け入れる計画。一方、技能実習は「国際貢献」名目で、日本で学んだ技能を母国に持ち帰ってもらう制度だが、人手不足を補うための活用が広がっているのが実態だ。家族帯同も転職も原則として認められない。

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 「労働開国」とも呼ばれた特定技能の導入からまもなく1年。送り出し国、受け入れ企業、地域の変化を追った。

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