2020年3月11日水曜日

外国人の「不法就労」が今でもやまない深刻実態

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200310-00334027-toyo-bus_all
3/10(火) 8:01配信、ヤフーニュースより
東洋経済オンライン
 「太田市や大泉町のような外国人労働者が多い群馬の地域では、企業の社長からこんな相談を受けるんです。『在留カード、パスポート、ビザ。この3つがそろっていなくても、外国人を雇う方法はないのか』と。

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 つまり正式なルートでない方法で安い労働力を確保できないか、ということを暗に尋ねられているわけです。こういった驚くべき“相談”が2019年だけで1500件近く寄せられているというのが現実です」

 そんな証言を聞いたのは、群馬県太田市の取材をしているときだった。太田市で司法書士業を営む、山田さん(仮名)が続ける。
 「とくに問題視しているのがベトナム、ネパール、インドネシアといったアジア圏からの特定活動をベースとした在留資格を保有していると“される”人々。特定活動に関しては、風俗営業以外は例えば調理師や清掃など、決して高くないハードルで許可が下りてきた。

 特定活動での在留資格が欲しい人たちに向けた裏組織は多く、平然と在留資格の偽造や書き換えも行われている。多くの外国人労働者は違法だとわかっていても、働き口を探さないといけない。企業側は安いお金で労働力を雇いたい。双方の利害はマッチしているわけです。
 給料を手渡しだったり、別の人に振り込む形で、間接的に賃金を支払ったり。結局ほとんどは派遣会社(人材紹介会社)を経由しており、直接雇用ではなくて、間接雇用なわけです。企業側は派遣会社の責任で、知らぬ存ぜぬで押し通せる。不法就労の外国人ばかりやり玉に挙げられる風潮がありますが、企業側の責任も極めて大きく、改めて考えるべきタイミングが来ています」

■正規ルートから外れた不法就労も後を絶たない

 不法就労の外国人を雇用していた経営者は、出入国管理法(入管法)違反で3年以下の懲役や300万円以下の罰金刑に処せられる場合がある。日本国内でも不法就労助長の疑いで人材派遣会社の社長が逮捕される事例が相次ぐ。なぜこんな状況がまかり通っているのか。
前編(『群馬の小さな町が直面し続ける移民流入の現実』)では、全国有数のブラジル人タウンである大泉町に大量の移民が流入している影響について詳細をつづった。大泉町のような移民が多い地域では、語学、納税、生活保護、日本人社会との共生といったさまざまな問題が浮き彫りとなっている。

 だが、これらはあくまで正式な許可を経て居住している人々の話だ。冒頭の発言のように、本来なら在留資格を持たず、労働資格がない状態での“闇労働”も横行している。彼らの活動を後押しする偽装や書き換えを行う国内外のブローカーは後を絶たない。
 母語を日本語としない人々の日本語力テストを行う「日本語NAT-TEST」のHPには、「大変残念ながら、日本語NAT-TESTの成績証明書類の偽造が多く報告されております」という記載がある。

 つまり、在留資格の目安となる日本語試験の成績ですら、偽造が相次いでいることを検定機関が注意喚起しているのだ。これは、非合法なはずの不法就労がビジネス化していることも意味する。

 そもそも、労働ビザで認められていない不法就労と呼ばれているケースは、特定活動や技能実習生としてのビザを失効したにもかかわらず不法に収入を得ていることが多い。
 昨今メディアで取り上げられる機会が増えたのは、元技術実習生の失踪といったテーマが主だが、群馬県で取材を進めたところ、「特定活動者の不法就労も目立つ」という声はほうぼうから聞こえてきた。

■あなたはポリスか?  問いかけには応じず

 大泉町にあるネパール料理店の従業員に日本語で話しかけたところ、こちらの会話はほとんど通じなかった。だが、ビザの保有を英語で尋ねると「あなたはポリスか?」と過剰な反応を見せ、こちらの呼びかけには応じなかった。
 太田市に住むベトナム人男性であるダンさん(20代・仮名)は、匿名を条件に“偽装勧誘”の手口を明かしてくれた。ダンさんが訪日したのは2018年。ベトナム国内のブローカーを通して留学生ビザで日本へと渡っている。都内の日本語学校に通っていたが、高額な授業料と家賃を賄うためにアルバイトに従事したことで、学業から遠のき太田市へ移った。

 「日本語能力証明書、在留カードの入手は決して難しくないです。それはもちろん“ニセモノ”ですが。本来であれば年収や貯金額、学歴や日本語レベルといった非常に高いハードルがあるんですが、そういった資格をすべて偽造する業者が存在しています。インターネット上でも簡単に見つかるし、ベトナム国内にも日本にもさまざまな業者がいます。友人や知人を通してブローカーのほうから接触してくるケースもある。
だから、留学ビザで日本に来て、不法で働いているベトナム人もいます。彼らはもちろん正式な日本語検定を受けておらず、読み書きはおろか、日常会話もほとんどできないということもありますよ。だから、1つの職場で長く続かない。多くのベトナム人は仕事を掛け持ちしています」

 この地域に限った話ではないが、ベトナム人の技術実習生の伸びは顕著だ。2018年6月時点で13万4139人を数え、この数字は8年間で約17倍まで跳ね上がっている。受け入れ体制が十分でない状態でこれだけの数が急増すれば、自然と問題も生じやすい。
 その1つが、技能実習生の失踪問題だ。実習先から失踪した技能実習生の数は2018年度で9052人が報告されている。また、摘発された不法就労者の数も1万0086人と増加の一途を辿る。このうち実に半数近くをベトナム人が占めている。先出のダンさんが続ける。

 「技能実習生で日本に来るのはエリートです。そんな技能実習生や日本で働くベトナム人の中には、給料が払われなかったり、厳しいイジメにあって逃げ出して在留資格を失った人もたくさんいる。とくに地方に行くほどひどい状況で、労働環境は過酷です。
 それに『技術実習生よりも不法就労のほうが稼げる』という認識もある。日本にいるベトナム人のコミュニティーの中で、そういった情報は聞こえてきます。私も含めて、国に帰りたい人は多い。でも、日本に来る際に200万円以上の借金をして、家族に仕送りをするためにこの国に来ているから帰れない……」

■企業側の労働環境の整備も喫緊の課題だ

 先述したように、入管法違反による不法就労は、取り締まりを強化する傾向にある。2014年段階で6702人だったことを考えれば、5年間で3000人以上、検挙者が増加している計算になる。在留資格問題に詳しい、ある国会議員はこう話す。
 「入管では在留番号を登録されているので、番号を入力すればその数字が有効かどうか出る。それが明らかに怪しい人間がいてチェックしてみても、在留資格は有効なんですよ。有効なんですが、何であなたが定住者でいられるの? という方はたくさんいます。入管は今後、さらに厳しくなりますが、同じような偽造は続く可能性は高い。真っ当な在留資格を持つ技能実習生は別として、それ以外の方を雇うのはグレーなケースもあり、対応策も限界がある。
グレーな存在である彼らの立場からすれば余計なことは話せない。そんなわけで、日本人の目からみると『あいつはマジメだよな』と評価される傾向が強く、(不法就労する)東南アジアの人は重宝されるわけです。ただマジメの評価を得て、言いたいことを我慢した結果、突然爆発するというケースも相次いでいます。六本木や新宿だけでなく、全国の繁華街には在留資格を失ったベトナム人の不良グループが存在し、犯罪も起きています。企業側の労働環境面のケアは、今後も受け入れを進めるうえでは必須となります」
 大泉町で、別の社会保険労務士に不法就労がまかり通る現状について尋ねたところ、不法就労の多さを認めつつも、こんなふうに語った。

 「企業側からすれば、在留資格が偽物であろうと考える余裕がないのが実情でしょう。雇わなければもう体力が持たない。大手企業はいいですが、その下請けの中小企業は彼らの労働力がなければ潰れていきます。

 1980年代から人手不足の傾向がずっと続いており、ブラジル人を中心に南米から多くの労働者を受け入れたけれど、それでも圧倒的に労働力が足りない。企業側からすれば、セーフティーネットへの費用も抑えられる。いわばこの地域の産業が生き残るためには、不法就労者の存在は一種の“必要悪”と思い目をつぶっている人もいます」
 太田市で製造業を営む経営者は、将来への危機感を募らせる。

 「アジア系の労働者たちは長くても2、3年でいなくなり、彼らのコミュニティーで評判が回るのは早い。継続的に働き手を確保するためにも、地域全体や企業努力で外国人の方に“選んでもらう”必要がある。そうしないと人手の確保は不可能で、私たち中小企業に未来はない」

 群馬県の太田、大泉町といった地域には、多くの派遣(人材紹介)会社が点在している。大泉町のあるアジア系の人材紹介会社では、登録者が搾取に耐えかねて騒動を起こし、トラブルが発生したという事例もあったという。労働力を確保するために海を渡ってきた彼らは、限界を超え、日本に対してネガティブな感情を持っているのかもしれない。
■日本は外国人労働者に優しい国なのか

 その一方で改正入管法に伴い、新たな在留資格ができるなど、日本において今後はさらなる外国人の受け入れは拡大する。

 「日本は本当にすばらしい国ですが、外国人労働者に優しい国とは思えません」(ある外国人労働者)

 彼らの訴えは、私たち日本人にとって、決して他人事ではないのだ。
栗田 シメイ :ライター

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