2018年12月18日火曜日

外国人に災害情報を伝えるためには? 愛知の防災ネットワークがSNS利用調査を実施

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181213-00010000-wordleaf-soci
12/13(木) 、ヤフーニュースより

 災害時、外国人に情報を伝えるため最も効果的なSNSは?

 こんな調査を、愛知県内に住む外国人や日本人の支援者らでつくる防災ネットワークがまとめ、12月8日に名古屋市内で報告会を開きました。その結果、全体的にはfacebookを使っている外国人が多いものの、中国人はWeChatが圧倒、LINEも各言語圏に浸透しているなどの実態が浮かび上がりました。ますます重要性が高まる多言語での防災、災害情報の発信に役立てられることが期待されます。
熊本地震きっかけに発足したネットワーク
 調査をしたのは「多文化防災ネットワーク愛知・名古屋」、通称「TABO(タボ)ネット」。2016年4月の熊本地震をきっかけに、災害や防災・減災について情報交換した外国人たちが自主的に立ち上げたネットワークです。

 災害時の外国人対応の問題は、1995年の阪神・淡路大震災でも顕在化した問題ですが、近年は訪日外国人や技能実習生などの増加によって災害直後の混乱も大きくなっています。熊本地震でも熊本市内に4500人いた外国人が「自国で地震を経験したことがなく、今後のことがまったく予想できなかった」「テレビや避難所での災害情報がほとんど日本語だった」「避難所に入ったが、まわりが日本人だけで孤立感を感じた」などの不安を訴えました(熊本市国際交流振興事業団報告書)。

 一方で長年、日本に定住している外国人が増え、SNSなどで情報交換も活発になっているため、同じ国や地域出身の被災者のために「何かしたい」と支援する側に回る可能性も大きくなっています。

 TABOネットは中国やブラジル、ペルー、フィリピンなどの外国籍者やその支援団体、そして防災関係団体の36人が発起人となり、16年12月に約100人が参加して正式に発足した団体です。1年目は「BOSAI EXPO」などのイベントを積極的に開き、2年目は調査事業を活動の柱の一つとしました。

 この1年間にも大阪の地震や台風、北海道の地震などが相次いで起こり、外国語の情報発信が課題として指摘されています。「外国人への情報提供にはSNS」と認識されているように思えますが、「その根拠は何か」と言われるとはっきりしないため、きちんとアンケートを取ろうと決めたそうです。
7言語圏の外国籍者1000人を対象に調査を実施
 調査は愛知県内在住・在勤で10歳以上の外国籍者1000人を対象に、17年6月から18年4月にかけて実施。イベントや講座、飲食店などで外国人と直接会い、SNSのロゴマークが描かれたボードを見せて「最もよく利用するSNS」に赤いシールを、「それ以外に利用するSNS」に青いシールを貼ってもらいました。

 愛知県には157の国・地域からの約23万人が暮らしており(2017年6月末現在)、結果が偏らないように1000人のうちポルトガル語、中国語、フィリピン語、韓国語、ベトナム語、スペイン語、英語の7言語圏の100人ずつから聞き取ることを目標に始めたそうです。実際には韓国語圏が24人と少なく、代わりに中国語圏が169人と多めになりましたが、その他はおおむね100人近く、インドネシア語やネパール語、タイ語などを含めて22の言語圏から回答を得られました。年代は調整せず、20代が42%、30代が22%、40代が15%と若い世代の回答が中心となりました。
全体ではfacebookがトップも、中国語圏ではWeChatが圧倒的
 「最もよく利用するSNS」は、全体でfacebookが62%、WeChatが14%、LINEが13%、WhatsAppが4%、Viberが3%、Kakao Talkが1%、twitterが1%、その他が2%という結果に。facebookの傘下であるinstagramも選択肢に加えましたが、1%にも満たなかったため「その他」に含まれているそうです。

 言語圏別に見ると、ポルトガル語圏はfacebookが72%、次いでWhatsAppが12%、LINEが9%。

 facebookはベトナム語圏で97%、ネパール語圏で95%だったのをはじめ、フィリピン語圏で84%、スペイン語圏で80%など幅広く使われていました。

 一方、中国語圏はWeChatが83%と圧倒し、LINEが8%、facebookも6%程度でした。英語圏ではfacebookが54%、LINEが32%、Viberが6%、twitterが3%。特徴的なところではミャンマー語圏の人はfacebookの6割に次いでViberを3割が使っていました。
twitterによる災害情報発信は外国人にはほとんど伝わっていない
 調査責任者を務めたNPO法人多文化共生リソースセンター東海代表理事の土井佳彦さんは「SNSといっても国や言語によってこれだけ違うことがよく分かる。一方で母国の家族とはfacebook、日本の知人とはLINEなどと相手による使い分けや、facebookはメッセージ、Viberは電話などと用途による違いもありそうだ」と分析。その上で「日本の自治体の災害情報発信はtwitterが中心だが、外国人にはほとんど伝わっていないだろう。民間や個人が間に入って適切に届ける仕組みが必要だ」と指摘しました。この結果を受け、外国人コミュニティーのキーパーソンをリストアップする作業を進めているそうです。

 TABOネット代表で中国出身の葛冬梅さんは、自身も主に使うのはWeChatだとして「LINEのようなグループコミュニケーションや電話、さらに電子マネーなどもぜんぶ合わさっていて、これなしでは生活ができないようなツール。誰でも登録できるので一度使ってみて」と呼び掛けていました。

 名古屋国際センターで開かれた報告会では、他にも災害時に急に使われる「タキダシ」や「オウキュウショチ」などの日本語に戸惑う外国人の様子をユーモラスに表現する劇や、Youtube動画による情報発信などの活動が紹介され、多文化防災について理解が深められました。

(関口威人/Newdra)

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