2018年12月26日水曜日

批判殺到の「入管法改正」 法案の是非論で「中身」が置き去りにされている

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181219-00010062-bunshun-soci
12/19(水)、ヤフーニュースより

 改正出入国管理法が12月8日未明に参議院本会議で可決、成立した。この法案は外国人に対する在留資格にさらに2つの資格を新設するものである。具体的には特定技能1号という、「一定の知識、経験を要する業務に就く人材」に対して日本語試験と簡単な技能試験を施すことによって認める資格で、最長5年の在留が認められる。また特定技能2号として、「熟練した技能が必要な業務に就く人材」に対しては在留期間更新を認め、家族の帯同も許可するというものだ。

 この資格の新設はこれまでの外国人技能実習制度を、形を変えて大幅に規制を緩和するものだということで野党からの厳しい追及が行われてメディアを賑わした。また与党の準備した資料が正確さを欠くばかりでなく、来年4月からの実施を優先して、極端に審議時間を少なくしたことから大変評判の悪い顛末となった。

 こうした事態に対して、野党もメディアもややエキセントリックな批判が相次いでいるが、一歩引いて現在日本に在留する外国人はどの程度いるのかに目を向けてみよう。
いまや農業に従事する人よりも多い在留外国人
 法務省在留外国人統計」によれば2017年の在留外国人数は256万人を数える。国内の農業就業人口は同年で182万人、つまり今や農業に従事する人よりも在留外国人のほうが、人口が多いというのが実態である。

 さて、この256万人の在留外国人はどんな人たちなのだろうか。

 まず国籍別にみると中国が73万人でトップ、続いて韓国45万人、ベトナムとフィリピンがそれぞれ26万人、ブラジル19万人の順になる。

 在留外国人の数は近年急増しているという感覚になりやすいが、実はそうでもない。2000年から2010年までは45万人の増加であるのに対して、2010年からの昨年までの7年間の増加数はわずか42万7000人程度であるから、増加率では傾向はあまり変わってはいない。

 特に韓国はこの5年間で在留者が約4万人減少している。韓国との関係は近年微妙な状況にあるが、実際に在留者も減少しているのだ。そして近年大幅に勢力を伸ばしているのがベトナム人で、同時期の増加数は22万人にも及び、ネパールやフィリピンなども大幅増になっている。
在留資格は34種類ある
 さて改正入国管理法で百家争鳴状態になっている外国人問題だが、この256万人の在留外国人には実に34もの在留資格があることは意外と知られていないのではないだろうか。

 在留資格のうち最も割合の大きいのが一般永住者と呼ばれる、日本国政府が許可した日本に永住している外国人だ。その数はすでに75万人に及んでいる。このうちの約33%が中国人、17%がフィリピン人である。

 次に多いのが特別永住者だ。これは戦前から居住している韓国や朝鮮の人びとに付与された在留資格で1991年11月施行の「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」という恐ろしく長い名前の法律に照らして永住が認められている人をさす。その数は33万人。

 留学生も31万人に及んでいて、中国が約40%、ベトナムが23%、ネパールが9%を占めている。いまや多くの私立大学で留学生を招かなければ経営が成り立たないという大学が増えているのも背景だ。
技能実習生の担い手は中国からベトナム、フィリピンへ
 この3つの在留資格だけで約140万人もの外国人が日本に在留していることになる。実は今回議論の対象になっている技能実習生は2017年6月で25万人程度にすぎない。つまり在留外国人の約1 割相当の数にしかならない対象への新たな資格新設が議論になっているということだ。

 ただ、この技能実習制度に基づき在留資格を得ている人は近年急増している。2012年には技能実習生の数は約15万人であったからこの5年間で66%も増加していることになる。つまり外国人技能実習制度が国内の単純労働の受け皿として非常に重要な位置を占めるにしたがって、この制度の拡充が不可欠になってきたことが、人手不足に悩む国内産業界の切実な声となっていったのである。

 また技能実習生の内訳をみるとベトナム人が41.6%の10万4800人、中国人が31.7%の7万9959人だが、これを5年前の2012年と比較すると、中国人は28%も減少したのに対してベトナムは6.3倍、フィリピンが2.9倍、インドネシアが2.2倍になっている。

 特にベトナムやインドネシアは在留者の約40%が技能実習制度の資格を利用した在留になっているのだ。
やがてアジア諸国で単純労働の担い手は奪い合いになる
 こうした国内における単純労働の担い手の変遷は、アジア経済の発展の裏返しともいえる。つまりGDPが日本を抜いて世界第2位になり、もはやその額は日本の倍にも達して経済成長を続ける中国には、もはや日本で単純労働に従事するというニーズがなくなってきている。もともと経済成長を続けてきた韓国ではすでに人手不足で日本に来る人材がいない。そのいっぽうで、経済成長はし始めたものの人口が急増し、人材が余るベトナム、インドネシア、フィリピンなどが人材の供給源になっているというのが実態だ。

 日本は少子高齢化による労働力不足はむしろこれからが本番と言われている。働き手を高齢者と女性に頼ってきた日本は、高齢者の中で大きな塊を占める団塊世代が2025年以降は後期高齢者となり戦線を離脱し始める。女性の就業率も70%にまで高まり、今後大きな供給源として過度な期待をするには限界がある。

 技能実習制度で日本にやってくる外国人を奴隷のように扱ったり、その数を制限して国内の単純労働を司る労働者を保護しようとする政策は、やがては多くのアジア諸国から働く場所としての日本が敬遠されるようになるかもしれない。中国や韓国もやがて日本と同様に少子高齢化がやってくる。アジア諸国の単純労働の担い手は奪い合いになるからだ。
「日本で働くっていいね!」と思われる制度内容を
 むしろ改正入国管理法の施行で日本に今後5年間でやってくると予想される34万5150人の外国人をもう少しポジティブに受け入れられないものだろうか。

 外国人を「もの」のように扱う論調も目につくが、外国人労働者がやってくることは、たとえば不動産業界にとっては決して悪いことではない。彼らは日本にやってくれば必ず家に住む。全員が家を借りるわけではないが、仮に1名月額5万円のアパートやマンションに住むとして、その経済効果は年間2070億円にもなる。

 各人が10万円程度の家具や家電製品を買えば、340億円もの新たな消費が生まれる。外食もするだろうし、服も買う。特に地方では若者の人口が増えずに消費が停滞している中、外国人が増えることは必ずしもマイナスポイントばかりではないはずだ。

 人口の減少と高齢化に悩む自治体も多いが、外国人であれ、新たな人たちが街に転入することは、地域の消費を活性化させる。街の新陳代謝をよくすることは、街の消費活動を活発にし、街を再生させることにつながるはずだ。

 外国人に家を貸したくないなどという地主も相変わらず多いが、政府も国策として外国人をお招きするのであれば、外国人を嫌わずに居住させる賃貸住宅オーナーにはこの際、補助金を支給してもよいのではないか。すでに住宅セーフティネット制度で高齢者や障碍者、子育て世代などを住宅確保要配慮者と定め、入居を拒まないオーナーには補助を行っている。ここに特定技能を認定された外国人を加えてもよいのではないだろうか。

 また一口で外国人といっても宗教や生活習慣、価値観が異なるもの。国別や宗教別に外国人向けの賃貸サービスのメニューを整え、生活そのものから支援をする方法を考えてもよいかもしれない。

 いろいろ評判の悪い改正入国管理法だが、法案の内容はこれから詰めるのだという。ぜひ外国人に「日本で働くっていいね!」と呟いてもらえるような制度内容にしてほしいものだ。
牧野 知弘

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