Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/868e618d8cd1fdbeb390b18aeaf67038551cb41b
最新数値が立証されるまでナショジオは「8850メートル」
世界最高峰エベレストの標高を再計測していたネパールと中国政府は12月8日、最新の標高を8848.86メートルと発表した。ネパール政府がこれまで公認してきた高さよりも86センチ高い数字だ。 ギャラリー:2019年のエベレスト、頂上付近に登山者が大渋滞 写真6点 両国の政府は、エベレストの正確な高さをめぐる議論に終止符を打つため、それぞれが数年がかりで測量事業を進めてきた。16年ぶりの本格的な測量とあって、地理学の世界でも関心が高く、2015年に発生したマグニチュード7.8の地震が山の高さにどう影響するかを分析する科学者らも、結果発表を待ちわびていた。 2019年春、少人数から成るネパールの測量チームと山岳ガイドが、厳しい寒さのなか夜間登山を敢行し、現地時間午前3時にエベレスト山頂へ到達した。この時間であれば、他の登山者に邪魔されることなく測量ができるためだ。 「私たちは、自分たちの持てる資源と技術的人材を使って何かを成し遂げられるのだということを伝えたいです」。チームの最高測量責任者キムラル・ガウタム氏は昨年、ナショナル ジオグラフィックに対しそう語っていた。
過去の計測結果
1856年、インド亜大陸を測量して地図を作製する「大三角測量」に関わっていた数学者のラーダナート・シックダールが、エベレスト山は世界最高峰であることを発見。以降、その正確な高さを計測するために、その時代における最先端の技術を使って測量が行われてきた。 人工衛星を利用した測量が可能になるまで、測量にはセオドライトという装置が使われてきた。指定した2点の間の角度を測る精密光学計器だ。測量チームは重い機材を運びながら、ベンガル湾の海面から北へ向かい、エベレストの山頂が見えるまで、峰から峰へとジグザグに見通し線を引き、それらを一つひとつ計測していった。 1954年の測量は、この技術を使ってエベレストの高さを8848メートルと計算した。この数字は、今も多くの国や地図出版社によって認められている。 その後1999年に、地図製作者で冒険家のブラッドフォード・ウォッシュバーンは、ナショナル ジオグラフィック協会の支援を受け、初めてGPS技術を用いた計測を行い、エベレストの標高を8850メートルとした。ナショナル ジオグラフィックは、最新の結果が完全に立証されるまではこの数値を使用する。
中国からの提案
できるだけ正確な結果を出すため、ネパールのチームはGPS技術とセオドライトによる測量の両方を採用することにした。2019年5月22日、ガウタム氏は4人のメンバーとともにエベレスト山頂にGPS装置を設置、さらに地中探知レーダーを使って岩の上に積もった雪の深さを測った。また、エベレストの山頂が見える8カ所の地点では、別のメンバーが最新式のレーザーセオドライトとともに待機し、大気が最も澄む日の出に合わせて計測を行った。 ところが、現地調査を終えたネパールの測量局は、思いがけない国際問題に巻き込まれてしまった。2019年10月に中国の習近平国家主席がネパールを公式訪問した際に、両国は再計測で協力し、合同で結果を発表するとの合意を交わしたのだ。 そのため、ネパールによる計測結果の発表は延期された。中国の測量チームは2020年春、山の中国側から測量を実施し、中国独自の衛星測位システム「北斗衛星網」を使って標高を計測した。 今回発表された計測結果には、両国ともに強い自信を見せている。しかしガウタム氏は、どんなに正確を期したとしても、わずかな誤差は避けられないと語る。「地図作製において、正確な点や標高を見つけることはできません。ですから、私たちは最も正確に近いと思われる値、つまり最確値を探そうとします」
文=FREDDIE WILKINSON/訳=ルーバー荒井ハンナ
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