県独自の緊急事態宣言が始まった1日、県内では新型コロナウイルスの感染者が新たに58人確認され、拡大の勢いは止まらない。那覇市が実施したPCR検査には感染の不安を抱える多数の来場者が殺到し、2週間にわたる自粛の幕開けとなる週末の繁華街からは人影が消えた。夏休み初日で行楽地には家族連れの姿も見られたが、一様にマスクを着け、感染対策に気を配っていた。 途切れることのない人の列と車列―。「新型コロナウイルスに感染していないか」。1日、那覇市が主体となって行ったPCR検査の会場には、不安そうな表情を浮かべる市民らが殺到した。医師や職員らスタッフは、感染リスクへの緊張感を漂わせながら来場者への対応に汗を流した。 「かなりの陽性者の来場が予想される。細心の注意を払うように」 PCR検査の受け付けが始まる直前の1日朝、来場者の対応に当たるスタッフは、真剣な表情で医師の言葉に耳を傾けていた。会場前には、検査の順番を待つ来場者の長い列。車の列がらせん状に連なり、近隣の道路で渋滞が発生していた。 那覇市は、感染拡大が目立つ同市松山の店舗関係者に限定した形で実施することを想定。案内のチラシも同地域だけで配布していたが、噂を聞きつけた市民が大挙して訪れた。 那覇市の男性(50)は行きつけの松山のバーで陽性者が出たことを知り、検査に駆け付けた。男性は「バーのスタッフからPCR検査を受けられると聞いてやってきた」と不安げに話した。国際通り沿いのステーキ店で働くネパール人の女性(22)=那覇市=は同僚の中に感染者が出た。勤務先から「検査を受けるように」と促されて来場した。 松山のキャバクラ店に勤務する女性(25)=同=は、0歳と4歳の子どもを連れて検査に訪れ、「知り合いのバーの店主に陽性反応が出た。子どもたちに感染させていないか心配」と表情を曇らせた。 予想外の来場で、検査は終了予定時刻の1時間前で打ち切られ、検査を受けられなかった市民からは不満の声も上がった。 身近に陽性者が複数出たという松山在住の自営業の男性(28)は「予定を立てて行ったのに追い返された」という。会場に設置された待機場所には検査を待つ人が近い距離で座っていたといい、男性は「『3密』状態だった。かえって感染リスクがあったんじゃないか」と憤る。 「想定が甘かった」。対応に当たった市職員は疲れた表情でこう漏らした。
琉球新報社
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