2019年10月16日水曜日

低成長、消費増税、少子化......それでも日本人は楽観していい

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191002-00010000-newsweek-bus_all
10/2(水)、ヤフーニュースより
<状況は決して真っ暗ではない。未来は不透明だが、日本は未来を先取りする国だからだ。変化の時代を乗り切り、損をしないために知っておきたいこととは? 本誌「消費増税からマネーを守る 経済超入門」特集より>
好むと好まざるとに関係なく、変化はやって来る。

必要のない消費増税のように、歓迎できない変化もあれば、キャッシュレス化の進展のように、いい面と悪い面の両面を併せ持つ変化もある。キャッシュレス化は買い物を便利にする半面、プライバシーに関する不安は拭えない。

米中貿易戦争のように、影響が読みにくい変化もある。世界を景気後退に引きずり込む可能性もあるが、日米同盟の強化につながったり、将来的に中国を好ましい方向に変える要因になったりするかもしれない。

未来は不透明だが、日本人は楽観していい。理由は2つある。

第1に、構造的な低成長に悩まされている国は、日本だけではなくなった。「Japanification(日本化)」という英単語を検索すると、何万件もヒットする。世界中で超低金利状態が加速していることからも明らかなように、多くの国で成長への期待がしぼんでいる。

第2に、日本はこれまで数十年にわたり、この状況を経験してきた。低成長時代への心理的対応が既にできていて、新たな対処法も見いだしている。

少子化の進行でも、世界が日本を追い掛けているようだ。いまヨーロッパには、日本より出生率の低い国が10カ国以上ある。男女平等と手厚い子育て支援で知られる北欧のフィンランドでも、合計特殊出生率は日本と大差ない。

バングラデシュやネパールなどの貧しい国も、人口の維持に必要な出生率を辛うじて保っているにすぎない。人口減少は世界的な問題になりつつある。

日本社会で高齢化が進んでいることは事実だが、人々が引退生活を送る年数が増えなければ高齢化は問題でない。日本銀行のエコノミスト、関根敏隆によれば、今の日本の高齢者は昔より生物学的に若くなっている。今日の70~74歳の平均的な歩く速度は、10年前の65~69歳と同程度だという研究もある。

現在、65歳以上の日本人の就業率は約25%。西欧ではこの割合が5%に満たない国もある。日本には80代でエベレスト登頂に成功した人やAV男優として活躍している人もいる。日本は高齢者が元気な国なのだ。

日本に深刻な経済的不均衡が存在することは否定できない。企業収益が過去最高に達しているのを尻目に、一般市民の賃金が停滞していることは、その最たる例だ。この状況で消費税率を引き上げれば、弊害のほうが大きい。そもそも、日本の国家財政が危機に直面しているという認識も正しくない。日本は世界最大の対外債権国だからだ。
<日本の賃金は上昇に向かう可能性が高い>
しかし、日本の賃金は上昇に向かう可能性が高い。構造的な人手不足に悩まされている日本では、働き手の交渉力が強まると予想されるからだ。

そうなれば、会社は高価な労働力を有効に活用しなくてはならない。その結果、労働環境が改善し、柔軟でオープンな企業文化が形成され、女性や高齢者や外国人の受け入れも進むだろう。

超低金利により、日本の預金者が受け取る利息はほぼ消滅した。しかし、株式の配当が増えれば状況は好転する。日本企業の配当は昔に比べればかなり増えたが、欧米に比べればまだ少ない。株式投資からもっと安定的な配当収入がもたらされるようにすべきだ。

そうした変化が実現すれば、株式相場が何十年も上昇しなくても、個人投資家は配当収入を当てにできる。その場合、配当を老後の生活資金に回せるし、増税のような試練にも対処しやすい。「銀行口座族」と「配当族」の差は天と地ほど大きく広がるだろう。

悪いニュースばかり? ニュースは悪いものと覚悟しておいたほうがいい。大事なのは、賢く投資し続けること。そして、高齢になっても元気であり続けることだ。

日本では、人々の生活水準、健康状態、資産、暮らしの快適さが向上し続けてきた。変化への適応能力に長けた日本では、今後もそうした進歩が続くだろう。世界は日本から目を離さないほうがいい。未来はここにある。

(筆者は近著に『On Kurosawa: A Tribute to the Master Director』〔写々者・刊〕がある)

<本誌2019年10月8日号「消費増税からマネーを守る 経済超入門」特集より>

※「消費増税からマネーを守る 経済超入門」特集では、経済の各分野の専門家たちに税金や貿易、年金、貯蓄、住宅、投資、キャッシュレスなど経済の仕組みを分かりやすく解説してもらい、「損をしないためにはどうすればいいか」をアドバイスしてもらいました。
ピーター・タスカ(経済評論家)

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