2024年9月5日木曜日

【終了】ネパール(2015年ネパール地震 救援・復興支援事業)

 Source:https://www.jrc.or.jp/international/results/190125_003736.html

2015年ネパール地震 救援復興事業報告書

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 2015年4月25日、ネパール連邦共和国で、マグニチュード7.8の地震が発生し、建物の倒壊、雪崩、土砂災害により、ネパール国民のおよそ5人に1人にあたる約560万人が被災する甚大な被害となりました。

 この被害に対して、日本の皆さまから日本赤十字社にお寄せいただいた寄付金は20億2,491万751円に上りました。このご寄付をもとに日本赤十字社は、発災直後からの緊急救援、その後の復興支援、開発協力に継続的に取り組んでまいりました。

 この度、ネパールでの支援活動が終期を迎えるにあたり、約9年間に及ぶ活動の記録等を取りまとめた「2015年ネパール地震 救援復興事業報告書」が完成いたしましたので、ぜひご覧ください。

日本赤十字社 2015年ネパール地震 復興救援事業報告書(16.5MB)

2015年ネパール地震 被害状況

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 ネパールは、ヒマラヤ山脈に代表されるように起伏が激しい国で、植物や鳥類の種類が多く自然豊かな国です。国土面積は北海道の約1.8倍で、その約8割が丘陵・山岳地帯。同国は日本と同様に、プレート衝突帯に位置しており、山岳地形の形成と巨大地震の発生という、地質学的なリスクを抱えています。

 2015年4月25日、首都カトマンズの北西約77キロメートルに位置するゴルカ郡で、マグニチュード7.8の地震が発生しました。さらに17日後の5月12日には、カトマンズの北東約75キロメートルにあるシンドパルチョーク郡でマグニチュード7.3の大規模な余震が、再び被災地を襲いました。建物の倒壊、雪崩、土砂災害などで、死者は約9,000人、全壊・一部損壊した住宅は約89万戸、負傷者は約2万2,000人、被災者は約560万人と、ネパール国民のおよそ5人に1人が被災する甚大な被害となりました。

 丘陵・山岳地帯で、普段からインフラも十分に整っていない国で起きた巨大地震により、ネパールの人々は基本的な日常生活を送ることさえ困難になりました。

日本赤十字社による支援

日本赤十字社(以下、日赤)は2015年4月27日~7月31日の約3カ月間にわたり、「2015年ネパール地震救援金」を受け付けました。

募集実績(最終額) 20億2,491万751円

皆さまから寄せられた救援金をもとに、以下の活動を通して被災者の支援を行いました。

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緊急救援

 日赤は職員1人を地震発生当日、医師・看護師ら4人を翌日にネパールに派遣し、シンドパルチョーク郡メラムチ村(カトマンズから北東へ約75キロメートル。車で約3時間の距離)で現地調査と医療活動を開始しました。

 さらに、国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)の発動要請を受けた日赤は保健医療チーム(緊急対応ユニット:ERU※)を現地に向けて派遣。第1班14人が4月30日、現地に向けて出発し、5月1日から本格的に診療活動を開始しました。その後、第2班を6月2日、第3班を7月7日に派遣し、7月31日までに以下の4つの分野を軸に保健医療活動を実施しました。

※緊急対応ユニットは、「ERU(Basic Health Care Emergency Response Unit)」と呼ばれ、最長4カ月にわたり、外部からの支援なしで保健医療活動が継続できるように、発電機やテント、食料などを備えた資機材も併せて輸送します。

1 診療所支援

シンドパルチョーク郡メラムチ村の診療所で、地元のスタッフとともに診療を行いました。毎日150~200人が診療所を訪れ、7月31日までにのべ1万4,416人の患者を診療しました。

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携行型レントゲンを用いての診療

2 巡回診療

 メラムチ村周辺は山間地域であることから、診療所まで来ることが難しい人びとのために、医療チームが巡回訪問をし、診療を行いました。7月22日までに1,183人を診療しました。

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3 保健・衛生知識の普及活動

今後、住民が健康に対する意識を高め、健康や衛生的な生活環境に気を配りながら生活できるように「地域に根ざした地域保健と救急法(Community-Based Health and First Aid=CBHFA)」をはじめとする研修を実施しました。7月22日までに1,332人が参加しました。

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4 こころのケア(心理社会的支援)

地域住民の心理的ストレスを緩和するため、専門要員を派遣し、7月22日までに3,639人に対して、「こころのケア」活動を実施しました。また、被災した子どもたちが日常生活に戻れるよう、子どもたちが安心して過ごせる専用のテントを設置して、遊びや学びの機会を提供。毎日40~80人の子どもたちが訪れました。

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©Ly Nguyen / IFRC

現地からの声

メラムチ村の人びとから、日赤の緊急救援活動へのメッセージをいただきました。

チーティズ・サプコタさん:メラムチ村駐在医師

 発災当初は多くの被災した患者が訪れ、また診療所のスタッフも被災している中で支援してもらい、大変助かりました。特に、保健医療チームの皆さんは診療所だけでは対応しきれない患者を、日本の高い医療技術でフォローしてくれました。

 今後は、現地スタッフで協力しながら、メラムチ村の人びとに必要な医療を提供していこうと考えています。本当にありがとうございました。

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ラチャナさん:診療所助産師

 日赤と日本国民の皆さま、今回のネパール地震では診療所への支援をありがとうございました。

 保健医療チームのスタッフには、X線装置や超音波診断装置、外科的な処置について指導してもらい、多くの人命を救うことができました。また、診療所には多くの薬剤が送られてきましたが、専門の薬剤師を派遣してもらい、多くの患者を受け入れる際に大変役に立ちました。

 保健医療チームが日本へ戻った後も、指導してもらった診療技術を継続して提供していきます。

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復興支援

 日赤は2015年9月にカトマンズ市に現地代表部を開設し、ネパール赤十字社(以下、ネパール赤)や連盟と協力しながら、長期的な復興を見据えた支援を展開しました。緊急救援に引き続き、日赤はシンドパルチョーク郡を復興支援の対象とし、以下の7つの活動を実施しました。

1 住宅再建支援
  • 住宅再建給付金の支給
  • 大工・石工向け研修の実施
  • 安全な家づくりの知識普及

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一家総出で自宅の再建に励む被災者

2 地域保健再建
  • 診療所の建設
  • 医療・非医療機材の整備
  • 救急対応訓練の実施

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完成したラガルチェ村の診療所

3 水と衛生支援
  • 個人住宅・学校のトイレ建設のための資材提供と技術支援
  • 給水設備の補修・建設
  • 衛生に関する啓発研修・活動

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完成した水道設備と被災者

4 生計支援
  • 生計向上のための助成金の給付・技術研修・指導
  • 若年層への職業訓練の斡旋
  • 自営業者への工具の提供
  • 灌漑設備の修復
  • 家庭菜園研修の実施

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生計向上のための資金でヤギを購入して繁殖させ、生計を立てる被災者

5 学校防災支援
  • 小学校の新校舎・擁壁・トイレ・給水設備の建設

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新しい校舎で過ごす子どもたち

6 血液事業支援
  • 血液センターへの資機材の提供
  • ヘモビジランスシステム導入に向けた政府との関係構築

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日赤が支援した血液検査キットと冷蔵庫

7 ネパール赤組織能力強化
  • ネパール赤支部の社屋建設
  • 人的能力強化のための赤十字の運営・管理に関する各種研修の実施
  • 災害への備えと対応能力強化のための計画策定・各種研修実施・災害時備品の配布
  • 被災者とのコミュニケーション促進・赤十字普及活動

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完成したネパール赤シンドパルチョーク郡支部の社屋

開発協力

 2015年のネパール地震による被災状況が深刻だった地域では、ネパール政府や日赤を含むさまざまな援助機関等からの支援により、住民の生活が再建されるとともに、地方自治体やネパール赤支部の防災・災害対応能力が強化され、将来の災害への地域一体となった取り組みの下地が形成されました。その一方で、ネパール全体では災害への備えや対応能力の強化が依然として不十分な地域も多く存在しました。

 そこで日赤は、2021年1月から、災害リスクの高い東ナワルパラシ郡、ピュータン郡、東ルクム郡の3郡で、ネパール赤による「コミュニティ防災強化事業」への支援を開始しました。へき地の村々に日本の消防団とよく似た「地域自主防災組織」を3郡で計14団結成し、この防災組織のメンバーを中心に、村人たちが話し合って災害リスクマップを作成してリスクを可視化したり、救急法講習を開催したり、災害対策として堤防や排水溝の整備を行ったりなど、地域住民が主体となって活動に取り組み、地域に根ざした防災・減災対策の強化を図ってきました。

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結成された「地域自主防災組織」のメンバー

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災害リスクマップを作成する村人たち

 

 寄せられた20億円以上の救援金をもとに行った、日赤による約9年間に及ぶ救援・復興・地域強化という一連の災害支援活動は、2024年3月に終了を迎えますが、これらの活動成果はネパールの人々に引き継がれ、次の災害への備えにつながっていきます。

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