Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/16176ad991f59c76dc50a7a6f072dcd9dd001f5a
【実録・人間劇場】 海外旅行をするうえでの大きな楽しみは何だろうか。毎週のようにタイやベトナムへ弾丸旅行するような中年男性たちは「女遊び」と答えるかもしれない。実際のところ食事をする間も惜しんで風俗街に足を運んでいるような旅行者もいる。 しかし、旅の楽しみのひとつはやはり「食」ではないか。3泊4日などの短期旅行では、その国ならではの名物を食べたくなるし、それは半年や1年といった長期旅行でも変わらない。むしろ、異国で過ごす時間が長ければ長いほど、「食」の質はかなり大切になってくる。 筆者が自転車で旅をしてきた香港、中国、ベトナム、ラオス、タイはどこもメシが美味かった。麺類、ご飯もの、おかず、デザートとどれもバリエーションが豊かで、町の食堂や屋台を巡ることが旅の楽しみのすべてだったと言ってもいい。 しかし、インドは手ごわかった。10日もたてば食事をすること自体に嫌気が差してくるし、そもそも腹が壊れている。それなりにハイソなエリアに行き、それなりに高いレストランに行けば話は違うのかもしれないが、大衆が集まる「食の場」に足を運んでこそ、旅は楽しくなる。 インドで有名な料理は何か。それは言わずもがなカレーである。朝も昼も夜も路地裏の食堂ではインド人たちがカレーを食べているのだが、このカレーがどこへ行っても美味くない。日本のようなとろみはついておらず、水のようにシャバシャバなのだ。 かといってスープカレーのように具だくさんなわけでもないので、ご飯と合うわけがない。インドに来たからには美味いカレーを見つけようと、いろんな食堂を渡り歩いても、どれも似たり寄ったりだ。そこで、今度はカレー以外の料理を食べてみる。ビリヤニ、チョウメン、チキン、シークカバブ、ドーサ、魚料理、野菜料理…。どれを食べてもカレーの味がする。 食堂で生野菜のサラダが出ると「ようやくカレー味以外のものが食べられる」とホッとするが、これを食べると腹を壊す。気分を変えようとスイーツ屋に入ると、見たことのない品物がズラリと並んでいる。「これは期待できそうだ」と端から端まで1つずつ買ってみるも、まるで煮詰めた砂糖をさらに砂糖で固めたかのように甘い。見てくれが違うだけでみんな同じ味だ。ならば料理は諦めて酒に逃げようとするも、ビールがぬるい。これでは美味いわけがない。 そんなインドでも「日本で売ったら、ひと儲けできるかも」と思うくらい美味いものがひとつだけあった。それは、「クルフィ」というアイスクリームだ。道端の露天商が40円くらいで売っている。見た目は少し不安を覚えるかもしれないが、きっとその美味さに驚くはずだ。
■國友公司(くにとも・こうじ) ルポライター。1992年生まれ。栃木県那須の温泉地で育つ。筑波大学芸術学群在学中からライターとして活動開始。近著「ルポ 歌舞伎町」(彩図社)がスマッシュヒット。
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