2024年9月5日木曜日

ネパール孤児院体験で見えた”それぞれの幸せ”

Source:https://www.juntendo.ac.jp/life/interview/00251.html

国際教養学部
金城比和さん 関根アティナさん

国際教養学部では、夏休みや春休みの長期休暇を利用して、様々な国へ留学をしたり、日本国内や海外でボランティア活動や様々な体験をする学生が多くいます。

その中で、今回は2024年3月にネパールの孤児院でのボランティア体験をした金城比和さんと関根アティナさんへ、ニヨンサバ・フランソワ学部長を交えてお話を伺いました。

 

 

海外の文化に触れたことが楽しかった

 

ニヨンサバ・フランソワ学部長(以下、学部長) まずはふたりの簡単なプロフィールから伺いたいのですが、どんな高校に通っていましたか?

 

金城比和さん(以下、金城) 文系理系どちらもあるごくごく一般的な高校で、グローバルコースとかはなかったです。私は文系でした。

 

関根アティナさん(以下、関根) 県立高校だったのですが、普通科と国際文化科というのがあって、国際文化科に通っていました。英語の授業数が多かったのと、第二言語も学べて、海外にルーツがある学生もたくさんいました。特に英語の授業はオールイングリッシュで、他の国の文化や地域性を学んだりしていましたね。

 

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金城 比和(きんじょう ひより)さん

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関根 アティナ(せきね あてぃな)さん

 

 

学部長 そんな中で順天堂大学国際教養学部を選んだ理由は?

 

関根 私の母が看護師だったこともあり、私も最初は看護師を目指していました。ただ、通っていた高校での学びも楽しくて、他国の文化や教養にたくさん触れてみたいと思ったんです。そこで、医療的なものも学べて、国際的な文化や教養も学べるところを探したら、順天堂大学を見つけたので「ここだ!」と思って総合型選抜で受験しました。

 

金城 正直高校時代は勉強にあまり身が入りませんでした。結局浪人することになってしまったのですが、「このままではよくない。そんな環境から抜け出したい!」と思って勉強を頑張りはじめました。そんな時に通っていた予備校の英語の先生が様々な海外の文化や国際事情を教えてくれて。それが本当に楽しいと感じたので、国際教養を学びたいと思い志望しました。

 

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「カジュアルでいいよ!」とジョークも交えながら進行するニヨンサバ・フランソワ学部長

 

 

学部長 高校生の時はボランティア活動などはしていましたか?

 

金城 友達の母が保育園の園長先生だったこともあり、母の保育園のお手伝いとかはしてました。子どもが好きだなと感じるのもそのおかげです。

 

関根 私はショッピングモールなどで、子どもたちが商売に携わる事業のサポートボランティアをしてました。なので、大学に入ったらボランティア活動をしたかったのですが、コロナの関係もあって全く活動することができず、今回念願叶って!という形です。

 

 

幼児教育がキーワードに。とにかく初めてで心配だった…

学部長 まず、今回どのようなスケジュールで、どのようなプログラムに参加したのですか?

 

関根 2024年3月9日~3月15日までの1週間、ネパールの孤児院でのボランティア体験にいってきました。

 

 

学部長 いろいろなプランがある中でなんでネパールだったの?

 

金城 大学生になってやりたいことをみつけたくて、せっかくなら楽しいことがやりたいなと。留学ももちろん魅力的なのですが、自分には費用的に若干手が届かなくて。そんな中ボランティアを見つけて、これなら自分でバイトを頑張ればいける!と思って選びました。関根さんにも声かけたら快諾してもらえたので、そこからふたりで色々探しました。

 

関根 私たちが意気投合したのが、『幼児教育』だったんです。幼児期からの教育の大切さについてお互いに話していたこともあって、今回ボランティア活動を探している中でも『幼児教育』を軸に探していたところ、ネパールの孤児院の活動支援をしている日本人の代表者の団体を見つけたので、応募しました。

 

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ふたりのきっかけは幼児教育『子どもの笑顔を大切に』

 

 

学部長 日本人団体を選んだ理由は?

 

関根 ふたりとも初めての海外渡航で不安も多くあったので、まずは導入として日本人団体が良いと思って選びました。また、募集動画をみてとても共感したのも選んだ理由のひとつです。

 

 

学部長 その代表の人や団体ってどんな印象でしたか?

 

金城 とっても”今”を大切にしているなと感じました。ネパールみたいな国ですと、一つの課題を解決すると違うところでしわ寄せがいき、またそこの人が大変になってしまう。その点、選んだ団体は関わった人や環境を大切にしていくようなことが感じ取れたので、とても共感がもてて応募したんです。

 

学部長 団体はどのような活動のもとに運営されているのですか?

 

関根 基本的には代表者の方が全国津々浦々で講演をする中で、賛同できる方や企業の寄付や協賛で成り立っているようでした。

 

金城 あと、現地の方が作った茶葉や工芸品を日本で販売し、その資金も運営のひとつのようで、販売と同時に考えを広めていくこともしているようです。

 

 

学部長 参加するまでにたくさん準備したと思うけど、不安なことはあった?

 

金城 すべて自分で準備しなければいけなかったことですね。ビザの申請、海外保険の申請などをすべて自分たちで調べて手続きをしたうえで、渡航費や現地での費用なども準備しなければならなかったので、とても大変でしたね。特に私は初海外だったので、「ビザがおりなかったり、空港で強制送還されたらどうしよう。」「現地で危ない目に遭ったらどうしよう。」など色々不安は多かったです。

 

関根 やっぱりビザの発行がされるかなということと、海外保険の申請は苦労しましたし不安でした。

 

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色々な不安があったもののお互いで協力しあって乗り越えた

 

 

日本との違いに触れることで感じた『それぞれの幸せ』

 

学部長 そんな不安も多いなかで実際に参加したわけですが、実際にネパールの文化に触れてどんなところがよかったなと思いましたか?

 

金城 まずは現地の文化に直接触れたことですね。ごみ処理ができずにたまってしまった山や、カースト落ちしてしまった家族のところなどいろいろなところを訪れました。現地はカースト制が強く、生まれた家で将来の職業が決まってしまう。しかもその職業が苗字にもついてしまうくらい、日本では当たり前に選べる将来が選べないんです。当たり前のように感じることが当たり前ではないことがあるんだと初めて肌で感じました。ただ、その中でも、現地の人は日本以上に家族や友達を大切にしていました。私は日本で生きていてそれを当たり前に感じるしかできなかった自分がなんだか小さく感じましたし、現地の人から改めて本当に大切なことを教わった気がします。

 

関根 ”新しい世界”を知れたのが良かったです。勉強ももちろん大切ですし、ニュースで情報を取得することも大切です。しかし、報道されているニュース、例えば悪いニュースであっても、現地の人は幸せに生活している。このことを直接体験することが大切なのだなと感じることが自分の中の宝物になりました。

また、文化や常識を比べるものではないんだなとも思いました。日本では医療も教育も整っていて、ネパールの環境が一見かわいそうと思いがちですが、同じものをネパールの人が求めているかというとそうではない。ネパールの人はネパールの人の幸せの基準で生きているので、自分たちの価値観を押し付けることは決していいことではないんだと知ることが出来ました。

 

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首都カトマンズの風景

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カースト制で住む地域や職業が決まる

 

金城 それは本当に私も強く思いましたね。現地の人たちに「日本は優れているから来なよ!」と気軽に伝えることは違うんだなと。彼らは彼らの価値観があるからこそ、日本で満足した生活を送れるかというのはまた別のことなんだなと。

 

学部長 それはとても大切ですね。国際教養学部では『グローバル市民の育成』という言葉をモットーに教育を行っていますが、それは決して異なる言語を話すことだけではなく、実は、異なる文化の人と交流しその文化に直接触れた時に、『自分たちの国の文化が当たり前ではない』『それぞれの文化で幸せな部分があるんだ』というIdentityを学ぶことなのです。

私も授業で生まれ育ったアフリカの話をします。毎日遠いところまで水を汲みにいってから学校に行ったり、寄生虫と闘いながら生活をしたり。そんな環境であったからこそ、自分の中で勉強というものはビザ(パスポート)という価値観になりました。

ところが日本にきたら勉強ができるにも関わらず、金城さんも先ほど自己紹介で言っていましたが、幸せじゃない、満足していないという人が多い。でも、7-8割の人が大学までいくことができる。当たり前になっているからこそ異文化に触れて、それが当たり前ではないと学ぶことが必要ですよね。

 

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違う国では母国の”当たり前”は通用しない

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どんな環境であっても”幸せの基準”はそれぞれ

 

 

”海外あるある”も、生きていくための知恵

 

学部長 逆に参加してみて現地で苦労したことはありますか?

 

金城 やはり現地の人と意思疎通をすることですね。向こうの人達は大体の人が英語を話せるがあまり得意ではない人もいるため、お互いの考えを伝えることが難しい状況もありました。

そして自分の英語力の低さも痛感しました。注文をする時や値下げ交渉をする時、孤児院の子供達と話す時も、異国の人と会話をするために必ず必要なものはやはり英語が中心となるので、異国の人の考えや文化を知るためにまずは英語を勉強することがとても大切なことだと感じました。

 

関根 私も英語の大切さは痛感しましたね。もっと勉強しておけば…と思いました。

 

金城 でもそんな中でも笑って丁寧に現地の人は接してくれて、本当に人があたたかくて優しくて最高でした。ただ、ちょっとぼったくられました()

 

—— 一同爆笑 ——

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金城 一度話しかけられるとどこ行くにもずっとついてくるんですよ!(笑) 自分のことを信じてもらえるように日本語を書いて見せてくることもありましたね。

 

関根 モンキーテンプル(スワヤンブナート)という有名な観光名所に行った帰りにタクシーのおじさんがめちゃくちゃ営業かけてきたんです。「行きたい場所まで1500ルピーでいいよ!」って。でも、ペットボトルの飲み物が50ルピーとかなので、だいぶ高いんですよ()

交渉して1200ルピーまで下げてホテルまで帰ったんですが、ホテルの人に聞いたら「300ルピーでいけるよ」って言われ、4倍も払うことになりましたね。

 

学部長 ”海外渡航あるある”ですよね()

私も中国で大学生だった時、まったく物価もわからない場所にいき、2000元だというところを1500元までディスカウントしましたが、後々調べたら100元くらいだったりしました。

 

金城 でもおもしろいなと思ったことがあったんです。

私たちが入国の際、ビジター200人に対して審査係の人が2人とかしかいなくて。それに加えて私たちはビザの取得に時間もかかってしまい、結局入国まで3-4時間かかってしまったんです。その間スーツケースが手元になくとても心配だったのですが、受取所に行ったら何もあさられることなくただただそのままの状態で床に放置されてました。

 

関根 そうなんですよ(笑) 待っている間も「荷物危なくないかな…?」って話してたのですが、無事で。物は盗まないんですよね!ぼったくりはあるけど(笑)

 

金城 ただ、現地の文化に触れてからは、それも”生きるための知恵”というか、生活がかかっているんだよなと思えましたね。

 

関根 あと、トイレットペーパー流せないのがびっくりしました。硬くてつまっちゃうからと言われて。20年くらい生きてきて流せないのが初めてだったので、最初は驚きでしたね。

 

学部長 これも実は”海外渡航あるある”なんです!

日本以外のトイレットペーパーは硬くて、新聞紙みたいな硬さのものが多いんですよね。なので流せない。だから日本にきて流さずにその場(床)に捨ててしまう人がいるので、貼り紙で「トイレットペーパー流せます」って多言語で書いてあるのを駅のトイレなどでよく見ますよね。

ちなみに、中国では、トイレットペーパー売りの人がトイレの真横にいて買ったりもするんです。何も知らずに中に入ると、メチャクチャ薄くて短いものしかセットされてないこともあるんですよ…()

 

金城関根 需要と供給がすごい…()

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自分の経験も踏まえて話すニヨンサバ学部長

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楽しかった思いが終始表情に溢れ出ていた

 

 

経験したからこそわかる「教える側」の世界

 

学部長 国際教養学部でいつも学んでいると思いますが、ネパールから帰ってきて、何がプラスになりましたか?

 

金城 大学に入るまでは「教えてもらう側」だったんですが、そんな国があるんだという知識が増え「教える側」になれたのではないかなと思います。

 

関根 現地に住んでいる日本人にお話を聞いたときに、「現地の問題をいろいろ知って、絶対に色々と話すと思う。それだけで役割を全うしているし、とても大切なことなんだよ。」と言われ、その時に「教える側」の大切さに気付かされました。

やはり、身をもって体験をしないと「教える」ことはできないし、それがいかに大切なことなのかを感じ取れたのは2人でとても大切に思えました。

 

 

学部長 国際教養学部は「異文化コミュニケーション」「グローバル社会」「グローバルヘルス」の3つの領域がありますが、何か重なることや感じることはありましたか?

 

関根 もともと私が気になっていた『公衆衛生(グローバルヘルス)』の部分でとても感じることがありました。

実際に現地の子どもたちの手洗いやうがいなど、衛生に対する考えや行動を垣間見ることができたのですが、国際教養学部の授業で自分が学んだことに、実際に触れることができたのです。これは授業で学ぶこと(点)と現地でみること(点)の「点と点を結ぶ」経験ができたのかなと思いますし、順天堂大学の国際教養学部であったからこその経験だと思います。

 

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一見劣悪に見える衛生環境でも生活をしていかないといけない地域もある

 

 

金城 私は英語の授業テーマや他の必修科目でもある『紛争や格差(グローバル社会)』について、とても深く感じることができました。

紛争が起きたり国内の産業技術が発展しきっていないと、市民への影響が大きくなってきて、ネパールでも本当に小さな子が自分の身長の倍以上ある荷物をもって移動している現状を目の当たりにしました。

また、元々上位カーストだったにもかかわらず、旦那さんが亡くなったせいで売春宿に間借りしてすごさなければならないカーストに落ちてしまった方に話を聞くこともでき、カースト制を身をもって学ぶこともできました。

 

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実際に急な事情でカーストを落ちてしまうこともあるようだ 

 

 

学部長 色々学ぶことができたのですね。それを踏まえて、今後の学生生活や人生のビジョンに影響はありましたか?

 

関根 今まで、授業で説明された文化や紛争の話はあまり実感が湧かず『他人ごと』だったんです。しかし、今回ネパールでの体験によってそれが『自分ごと』になりました。なので、今後もこういった活動をたくさん経験したいなとも思いましたし、そのために色々な情報をたくさんキャッチアップしようと感じました。

まずは次の夏休みもまたネパールへ⾏く予定なので、それに向けて先⽣たちの助けを借りながら勉強したいと思います。

 

金城 今はまだやりたいことが具体的に決まってはいませんが、今回初めて海外に出て自分の心が揺さぶられるような経験をして、国際協力にとても興味を持ちました。

実際、首都カトマンズの観光地化の弊害として、ゴミ山が発生してしまった現実や、国際機関が良かれと思ってやった政策が、市民の幸せを奪ってしまった実例も目にしました。解決するためのすべてを出来るわけではありませんが、自分ができることを最大限にできるために、より色々な経験や知識を蓄えて学生生活を過ごそうと思いました。

 

 

学部長 とても素晴らしいお話をありがとうございます! 今後も"Never give up"の精神でチャレンジしてください!

最後に他の学部生やこれから国際教養学部へ進学を考えている方へメッセージをお願いします。

 

関根 ⾃分からアクションを起こさなければ4年間はあっという間に終わってしまうと思うので、柔軟な考えをもって色々なことにチャレンジしていくことで、それが自分の人生の宝物になると思います。

大きなことでなくてもいいので、小さなことから少しずつ行動して、チャレンジして突き詰めてほしいなって思います。

 

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金城 大学生だからこそ、金銭的にも時間的にも高校生より行動の幅があると思っています。だからこそ、自分のために使えるなって思いますし、考えたらすぐ行動することが大切だと思います。

また、私は第一志望ではなかったのですが、英語の授業でも色々な知識や視野を広げることができましたし、外国籍やハーフの人ともたくさん関われたので、順天堂大学の国際教養学部に来てよかったなと今は強く思います。その場所で自分がどうやって生きるかが大切なので、失敗は終わりではないですし、むしろ失敗を原動力としてやり続けてほしいです。

 

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