Source:https://otekomachi.yomiuri.co.jp/comfort/20190814-OKT8T167872/
人間A:「キミにないもののすべてをボクは持っているんだ」
人間B:「は!? 何言ってんの?」
人間A:「いや、でもね、ボクにないもののすべてをキミは持っている」
人間B:「あ、そ」
人間B:「は!? 何言ってんの?」
人間A:「いや、でもね、ボクにないもののすべてをキミは持っている」
人間B:「あ、そ」
好きな人に思いを打ち明けようとしても、これではうまくいかない。物事には順番があるからだ。
人間A:「ボクにないもののすべてを、キミは持っているんだ」
人間B:「え? そ、そうかな」
人間A:「ただね、キミにないもののすべてをボクは持っている」
人間B:「うん、そうかもね」
人間B:「え? そ、そうかな」
人間A:「ただね、キミにないもののすべてをボクは持っている」
人間B:「うん、そうかもね」
一言目と二言目をひっくり返しただけで、だいぶ印象は変わる。人間関係とは、とても複雑なものである。
もしこの会話が人間同士ではなく、モモ同士だったらもっと単純なはずだ。モモAにないものがモモBにあって、モモBにないものがモモAにある。どちらが先に会話のキッカケを作ろうと、モモ関係は良好。
あ、断っておくと“モモ”とは、ネパールでよく食べられている餃子のことである。僕がカトマンズで出会ったモモたちは、蒸しているものが多く、アチャールと呼ばれるソースにつけて食べられていた。
すべての材料をテーブルに広げ、スパイスにあたる部分を二つにわけてみる。Aの方に「にんにく・クミン・ターメリック」、Bの方は辛口にするために「しょうが・コリアンダー・レッドチリ」を使うことにした。
共通で使うものとして、挽き肉と玉ねぎを準備する。すべてをよく混ぜ合わせる。ねっとりとした形状になるまでしっかりこねれば包みやすくなる。餃子の皮のふちに水をぬって、真ん中にタネをのせ、端から包んでいく。包み方は自由にすればいい。ただ、モモAとモモBの形状を少しだけ変えておくと、食べるときにわかりやすい。
蒸し器を準備して、モモを並べ、蒸す。蒸し時間は、挽き肉に火が通ればいいのだから10分ほど。長すぎると皮がくたっとなって、破れてしまうこともある。クッキングシートをしいたほうがいいかもしれない。
蒸している10分間でソースを作ろう。材料を混ぜるだけだから、簡単。ミキサーがあれば、ガーッとまわしてしまえば30秒もかからないが、なければすり鉢を使ってもいいし、すべての材料を細かく切って、混ぜ合わせるだけでもいい。すべてのモモを蒸すためには、何回か蒸す必要が出てきそうだ。
シューシューと香り高い蒸気を上げる蒸し器を眺めながら考える。
完璧な人など世の中にはいないのだから、足りないものを補い合える人間関係というのは、ステキなはずである。そんな人にいつか巡り合ってみたいものだ。でも一方で、それだけじゃ物足りないとかつまらないとか、そんな気持ちもどこかに潜んでいる。
「1+1=2」なんて当たり前じゃないか。「1+1=3」だったり「1+1=4」だったりを期待してしまう。それどころか、「1+1=★」になったりするミラクルが起きないだろうか、なんてことまで。
そう、僕は欲深い人間なのである。自覚があるから、モモを作るときにだってちゃんと“ミラクルの種”を忍ばせているのだ。
ホカホカに蒸しあがったモモはきれいな彩り。皮に包まれた中身が、うっすらと色づいて見える。ほんのりレモン色をしたものがモモA。香ばしく少しクセの強い味わいで、異国情緒を感じさせてくれる。ほんのりオレンジ色をしたものがモモB。こちらは爽やかな辛味が利いていて、後を引く味わい。どちらも肉汁のうま味が強く、食べ応えがある。
続いてソースにつけてそれぞれを食べる。爽やかで軽やかなソースが、パンチ力のあるモモの味わいを中和してくれる。ソースと合わせたほうが、明らかにバランスがいいのだ。
口の中でモグモグとしていると、やがて奇跡が起こる。どことなくカレーの味を感じ始めるからだ。そう、もう一度、テーブルにずらりと並べたときの材料を思い起こしてほしい。
実は、これ、すべてキーマカレーを作るときに使う材料を使っている。
モモAとモモBが補い合っているのではなく、元々ひとつの料理(カレー)だったものをAとBに分割して、それぞれ別の料理(モモ)に仕上げる設計にしたのだ。どちらにも使わなかった材料で、ソースを作ったことになる。結果、AとBは相思相愛なだけでなく、より発展的な関係を築くことに成功した……と言えるのだろうか。
モモA:「ボクにないものをキミが持ち、キミにないものをボクが持っている」
モモB:「確かにその通りね」
モモA:「そればかりか、キミとボクを合わせると、全く別のものまで生まれてしまうんだ。ほら、モモなのにカレーを食べているような新感覚!」
モモB:「んー、でもそれは違うわ。だってソースがなかったら私たち、ただのモモよ」
人間関係も同じである。補い合い、惹かれ合うAとBが出会うためには、媒介となってくれるソースのような存在が必要になるのだろう。
◆モモ ~ネパール風蒸し餃子~
【材料】
モモ共通用(各半量を使用)
・豚挽き肉 100g
・牛挽き肉 150g
・玉ねぎ(みじん切り) 1個(250g)
・塩 小さじ1/2
モモA用
・にんにく(みじん切り) 1/2片
・クミンパウダー 小さじ1
・ターメリックパウダー 小さじ1/2
モモB用
・しょうが(みじん切り) 1/2片
・コリアンダーパウダー 小さじ1
・レッドチリパウダー 小さじ1/2
餃子の皮 36枚(共通)
ソース用(共通)
・トマト 1個
・白すりゴマ 大さじ1
・レモン汁 1/2個分
・香菜 適量
・塩 小さじ1/2強
・ブラックペッパー 粗挽き 小さじ1/2
【作り方】
モモ共通用の材料とA、Bの材料をそれぞれのボウルに入れてよくこねる。餃子の皮にのせて包んで蒸す。ソースの材料をすべて混ぜ合わせる。
【材料】
モモ共通用(各半量を使用)
・豚挽き肉 100g
・牛挽き肉 150g
・玉ねぎ(みじん切り) 1個(250g)
・塩 小さじ1/2
モモA用
・にんにく(みじん切り) 1/2片
・クミンパウダー 小さじ1
・ターメリックパウダー 小さじ1/2
モモB用
・しょうが(みじん切り) 1/2片
・コリアンダーパウダー 小さじ1
・レッドチリパウダー 小さじ1/2
餃子の皮 36枚(共通)
ソース用(共通)
・トマト 1個
・白すりゴマ 大さじ1
・レモン汁 1/2個分
・香菜 適量
・塩 小さじ1/2強
・ブラックペッパー 粗挽き 小さじ1/2
【作り方】
モモ共通用の材料とA、Bの材料をそれぞれのボウルに入れてよくこねる。餃子の皮にのせて包んで蒸す。ソースの材料をすべて混ぜ合わせる。
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