2019年8月14日水曜日

男性が不慮の死「外国人収容所」悪化する惨状

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190806-00295480-toyo-bus_all
8/6(火) 、ヤフーニュースより
 現代の日本において空腹の末に命を落とす人がいるということは考えられないかもしれない。が、複数の情報筋によると、6月24日、長崎県の大村入国管理センターに収容されていた、不法滞在のナイジェリア人男性がハンガーストライキの末、死亡した。詳しい死因は明らかにされていない。

 「サニー」と呼ばれていたその男性の名は、彼を知る被収容者によるとオカサ・ジェラルド(Okasa Geraldo)。3年7カ月にわたって大村センターに収容されていた。日本人の子を持つサニーは、収容所から解放されることを望んで、同センターで被収容者が行っていたハンガーストライキに参加していたとされる。サニーの両親は来日中だが、メディアの取材には応じていない。一方、法務省は現在、同件について「調査中」としている。内部調査チームが調べているとされるが、その結論を一般に公表することは予定していない。
■3度目のハンガーストライキ

 残念ながら、日本で命を落とす不法滞在者はサニーが最後ではないかもしれない。国内の複数の入国管理センターに収容されている約100人の不法滞在者が、5月上旬に始まった集団ハンガーストライキに参加しているからだ。

 「2010年と2018年にも同様のストライキがありました。ですが、今回の参加者の決意は非常に固いものです。水を飲むことを拒んでいる人もいます」と、茨城にある東日本入国管理センター(牛久入管)の被収容者を支援する「牛久入管収容所問題を考える会」の代表、田中喜美子氏は話す。同氏は、毎週水曜日に日本最大級の不法移民の収容所である牛久入管に収容されている人たちの声に耳を傾ける。
 7月26日、牛久入管の接見室は被収容者の面会に来た親類縁者や活動家、慈善家でにぎわっていた。数十人の日本人学生も、長い待ち時間と、狭量なお役所仕事にいら立ちながら、収容者たちと面会しようとしている。牛久入管で面会が認められるのは、収容者のブロック番号を知っている場合のみのだ。

 日本はゆっくりと労働移民に向けて開かれつつあるが、それと同時にその他の長期移民に対しては門戸を閉ざしつつある。2018年の帰化者は9074人で、1992年以来最低の数字となっている。この数字はフランス(人口は日本の半分)の12分の1であり、スイス(同15分の1)の4分の1だ。永住権取得の条件も厳しくなっている。
現在、申請者は住民税を過去5年(以前は3年間)、年金と保険料を過去2年にわたり期限どおりに支払っていることを示す必要がある。

 こうした日本の「鎖国化」は集団自殺めいている。この現象が起きている今現在、日本では人口減と高齢化が加速しており、多くの業界で国内市場は先細り状態にある。日本人が「移民に優しい国々」が現在直面している問題を避けたいことは理解できる。しかしそれは、人口が減るに任せるより本当に“まし”な選択なのだろうか。
■6カ月以上の収容は5割以上に

 不法移民はいずれの先進国でも問題となっている。この問題は外国人労働者の数が増えるにつれて日本でも今より深刻になるかもしれない。しかしそれは、不法移民の基本的人権を奪う理由にはならない。日本がこれまでのところ不法移民について示しているのは残虐性であって「おもてなし」ではないし、良識ですらない。

 日本の不法滞在者の数は、欧米諸国の不法滞在者と比較すると取るに足らないと言っていいほどだ。ピークだった1993年1月1日現在(29万8646人)以降、2019年1月1日現在には7万4167人にまで減ってはいる。一方で、不法滞在者の収容期間は長期化しており、「移住者と連帯する全国ネットワーク(SMJ)」によると、54.7%の不法滞在者が6カ月以上収容されている(2008年は4.8%)。あるネパール人は5年以上にわたって牛久入管に収容されている。
 また、非正規滞在の外国人は理由なく収容することができることになっており、実際に、新たに収容される場合も些細な理由で収容される。収容は裁判官による審査を受けることなく決定され管理されている。非正規滞在者が日本の裁判所に自分のケースについて審理するよう求めても、「裁判所は40年以上前の判決を引き合いに出して、日本では在留資格がなければ実験がないかのように扱われます」と、移民問題に詳しい弁護士は語る。
「一時的」な釈放期間(仮放免)は、入管の一存でどんどん認められなくなっており、仮放免却下の理由も判然としない。仮放免されても、こうした外国人たちには労働や健康保険に加入する権利、銀行口座を開設する権利、居住地域を離れる権利は与えられない。

 「これは日本が2018年12月に承認した国連の『安全で秩序ある正規移住のためのグローバル・コンパクト』と完全に矛盾しています」と前述の弁護士は語る。この協定では、とくに勾留については各国が「最後の手段としてのみ」「可能な限り短期間」「公正な手続き」によって扱うと約束している。が、すべての項目を日本は踏みにじっているように思われる。
 集団ハンガーストライキによる日本の入管の“軟化”はごくわずかな間にすぎなかった。サニーの死の直後、4人のイラン人のストライキ参加者(うち1人は25キロやせた)が突如解放されたが、そのうち2人はそこからわずか2週間後に牛久入菅に再び収容された。

 2人は再び食事を拒否している。法務省はこの状況を認識している。「ハンガーストライキは被収容者の選択です。不法状態なのですから収容する必要があります。健康状態が悪化した際には解放して、回復し次第、再収容しています」とある法務省関係者は明かす。
■牛久を訪れた山下法務相

 山下貴司法務相はサニーの死による国際的な影響を認識しているかもしれない。日本は8月28日から参加者4500人のアフリカ開発会議に関する国際会議を開く。ナイジェリアは将来のアフリカにとって最も重要な国の1つだ。開催国である日本が公共施設内でのハンガーストライキでナイジェリア市民を死に至らしめるのは賢明とは思われない。

 アメリカの名門大コロンビア大学ロースクール卒業の山下法相は、被収容者がシャワー室で自殺を図った2018年10月に牛久入管を訪問している。「記憶の限りでは法務大臣の立場にある人が牛久を訪問したのは初めてでした」と、あるNGOのメンバーは語る。
牛久入管はハンガーストライキをしている人々をあるブロックから別のブロックへと移動させることで隔離しようとしている。「収容所では車いすが足りなくなっている」と、イラン人のベーザド・アブドラニは語る。彼はハンガーストライキに参加していたが、再び食べることに同意した後に、牛久入管収容所からの解放手続きに入っている。しかし、解放されてもいつまた収容されるかわからない。

 「自分がなぜ収容されたり解放されたりするのかわからない状態で、どうやって生きていけるでしょう?」とアブドラニは話す。
 7月12日に安倍晋三首相は、元ハンセン病患者の家族に対する賠償として総額3億7675万円を支払うよう国に対して命じる熊本地方裁判所の判決について、控訴しないことを決定した。7月24日には家族たちも被った社会的偏見と差別について政府を代表して深い謝罪の意を表明している。この決定は法務省の希望に反してなされたものとされている。

 日本の人口減の問題や、外国人の基本的人権を真剣に考えるのであれば、安倍首相は不法滞在者たちに対しても正しい判断を下すことができるはずだ。
レジス・アルノー :『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員

0 件のコメント:

コメントを投稿