2019年1月11日金曜日

「外国人留学生の就職」に転機が訪れている

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190111-00259369-toyo-bus_all
1/11(金)、ヤフーニュースより
 日本で就職する外国人留学生が増加する中で、アルバイトをインターンシップのように活用する動きが広がってきました。留学生は「資格外活動許可」を取得することにより、風俗関係の仕事を除いて勤務先や時間帯を特定することなく、原則週28時間以内(夏休みなどの長期休業期間は1日8時間以内)の就労が可能になります。

 これまでも飲食店やコンビニエンスストアなどでアルバイトをする留学生は多く見られましたが、訪日外国人観光客が初めて3000万人を突破するインバウンド需要を背景に、日本企業は外国人接客対応の必要に迫られています。
 一方、留学生にとっても就職を見据えて、より高度な日本語を使った業務や日本のビジネスマナー、日本の企業の文化を知るための手段としてアルバイトを利用したいというニーズが高まってきました。

■日本で就職する留学生が過去最高を更新

 法務省の調査「平成29年における留学生の日本企業等への就職状況について」によると、日本で就職するため在留資格変更許可申請を行った留学生は前年比27.5%増の2万7926人。許可数も15.4%増の2万2419人となり、過去最高を更新しました。2012年からの7年間で、申請数、許可数ともに約3倍増という大幅な伸びを記録しています。
 就職先の職務内容(複数回答可)は、「翻訳・通訳」が8715人、「販売・営業」が5172人、「海外業務」が3479人、「技術開発(情報処理分野)」が2296人、「貿易業務」が1775人となっています。

 国籍・地域別許可数の上位は中国が1万0326人(前年比6.5%減)で1位、ベトナム4633人(同86.2%増)、ネパール2026人(同73.6%増)、韓国1487人(同4.6%増)、台湾810人(同17.6%増)と続き、以下インドネシア、スリランカ、タイ、フィリピン、ミャンマーの順で、アジア諸国で2万1421人と全体の95.5%を占めています。
総数では中国がまだ多いものの減少に転じ、ベトナムとネパールの伸び率が高いのが特徴です。最終学歴は大学卒が1万0196人、大学院卒が5477人で、両者合わせて全体の69.9%を占めています。

 月額報酬は20万円以上25万円未満が1万0613人、20万円未満が7766人、25万円以上30万円未満が2298人の順で、就職先企業などの所在地は東京都が9915人と圧倒的に多く、大阪府2228人、神奈川県1278人で、以下愛知県、埼玉県、福岡県、千葉県の順になっています。
 しかし、リクルート就職みらい研究所の留学生向けの調査によると、大学・大学院留学生の85%が日本で就職することを希望しています。それに対して、卒業後、国内で就職した留学生の割合は36%(日本学生支援機構の調査より)にとどまっているという実態もあります。

 一方、「平成29年度外国人留学生在籍状況調査結果」(日本学生支援機構)では、直近2年で大学・大学院の留学生の伸び率が増加しており、今後ますます卒業後の就職が課題となることが予想されます。そして企業側にも、留学生側にもさまざまな理由があると思いますが、このギャップを埋めることは大きなビジネスチャンスにもなりえます。
■「留学生派遣」に注目集まる

 2018年12月17日にリクルートホールディングスが発表した「2019年のトレンド予測」では、人材派遣領域のトレンドキーワードとして「留Biz大学生」を掲げていました。

 日本の企業文化やビジネスマナーを学びたい留学生が派遣アルバイトでキャリア形成に必要な経験をすると同時に、企業の採用姿勢も積極化するトレンドが生まれるというのです。

 2015年秋から外国人留学生派遣サービス「Japaning」を運営するリクルートスタッフィングの山元聖吾セールススタッフィング部部長は、留学生の派遣登録にあたって「特に日本語のレベルにこだわり、日本語能力試験N1、N2を求めている」といいます。N1は幅広い場面で使われる日本語を理解できるレベル、N2は日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができるレベルです。
 ただ、この日本語でのコミュニケーションが、就職や採用の現場で大きな課題になっています。同社が調査した、留学生側が感じる就職活動における課題は、「日本語でのコミュニケーション」(68%)、「日本の企業文化理解」(60%)、「日本のビジネスマナーの理解」(54%)が上位に挙がっています。

 さらに、留学生採用経験のある企業側が感じる課題も、「日本語でのコミュニケーション」(55%)が最多で、「留学生を活用する日本人管理者の不足」(22%)、「留学生が希望するキャリア形成と会社が考えるキャリア形成の乖離」(18%)と続きます。
 学校の授業を通じて日本語を身につけている学生が多いものの、実際に仕事で使うことにより自信が生まれてきます。そして企業文化やビジネスマナーはまさにアルバイト、派遣を通じて習得している学生が多く、インターンシップの役割を担っていることがわかります。

 同社では留学生の就職をゴールと位置づけ、キャリアアップ教育の一環としても、服装やマナー、エントリーシートの書き方、グループディスカッションのやり方などを指導しています。
■インバウンド対応で外国人スタッフにニーズ

 現在、東洋大学に通う中国出身の阮誠豪(ゲン・セイゴウ)さん(22歳)は、ビックカメラ有楽町店のメガネ・コンタクト売り場でJapaningの派遣スタッフとして働いています。同店はインバウンド顧客の需要も高く、中でも日本のカラーコンタクトが人気となっているため、外国人対応の場面も多いといいます。

 阮さんは日本のアニメや音楽が大好きで、日本語を勉強して自分の目で確かめたいと思い、まず日本語学校に留学し、大学に進学しました。アルバイトを始めたばかりの頃は日本語もあまりうまくなかったため、接客は大変でしたが、先輩たちが優しく丁寧に教えてくれたことで徐々に慣れてきました。
 今では多くのお客さんと接触することで、「自分のコミュニケーション能力が高まり、言語能力にも磨きがかかることで自信が生まれてきた」そうです。大学卒業後は「大学で学んだ法律の専門知識を生かして日本で就職したい」と目を輝かせていたのが印象的でした。

 留学生は日本人就活生の強力なライバルになりえますが、これまでの慣習を超えて就活を活性化する可能性を秘めています。むしろ日本の企業が優秀でやる気のある留学生を雇うことにより、異文化を受け入れ、ビジネスの固定概念を打破する起爆剤になるメリットは大きいといえます。
派遣先であるビックカメラの根本奈智香執行役員・人事部担当部長兼ダイバーシティ推進室長は、「外国人観光客の多い店に集中的に月30~50人の留学生アルバイトを配置している」といいます。以前はアルバイトを募集しても応募がない状況でしたが、派遣スタッフを採用することで、安定的に働いてもらえる人材を確保できるようになったといいます。

 外国人観光客の8割は中国人で、本来、派遣スタッフは通訳、接客業務ができれば問題ありません。しかし、「留学生の仕事に対する意識やレベルは高く、インバウンド対応、外国人が好む売れ筋商品の情報など、現場の課題をアドバイスしてもらう」こともあり、各店舗からの派遣オーダーも多くなっています。
 お店にとっては派遣サービスを利用することで、教育する時間を削減でき、日本語能力の高い留学生を雇えるメリットがあるといえます。欠員が出たら補充してくれることも利点です。雇う側と働く側のニーズがマッチしているので、今後も「留Biz大学生」のトレンドは続くことが予想されます。

■入管法改正に伴い留学生の就職も拡大か

 2018年12月14日に改正入管法が公布され、新しい在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」の創設、法務省の外局として「出入国在留管理庁」の設置などが決まり、2019年4月より新法が施行されます。
 また、あまり報道されていませんが、この法改正と併せて、日本の大学または大学院を卒業した留学生が、年収300万円以上の日本語を使う職場で働く場合、大学の専攻との関連性がなくても「特定活動」の在留資格を認めるという法務大臣告示も施行される予定です。

 業種や分野を制限しないとしていますが、どの程度の日本語能力が求められるか、単純労働が認められるかなど、実際の運用がどのようになるかはまだ不明です。ただ留学生の就職拡大につながることは確実で、今後の動向が注目されます。
翠 洋 :社会保険労務士

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