Source:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO4027341021012019CC1000/
2019/1/27、GOOGLEニュースより
公立の夜間中学に若い外国人が集う。出稼ぎの親と暮らす10~20代が多く、全生徒の7割を占める。今後も増加が予想され、学校側は日本語指導の充実を進めている。
外国から来た若者の定住とステップアップの支援。新しい役割を得た教室を訪ねたパリヤル・ソナリさん(17)はネパール西部の出身。中学2年生の途中で学校をやめ、2018年2月、先に来日していた両親の下に身を寄せた。同年の暮れも押し迫ったある日の夕刻、東京都葛飾区にある双葉中学の夜間学級にソナリさんの姿があった。生徒はネパール、フィリピン、中国など5カ国から来日した41人の外国人。
教室には会話を練習する声と、漢字を丁寧につづるペンの音が響く。
ソナリさんは「難しいけど、もっと上手に話せるようになりたい」。週4回、午前10時から午後3時まで千代田区内のホテルで働く。仕事はベッドメーキングで、給料は月9万円。交通費、給食費など通学に必要な支払いを済ませ、家にお金を入れれば自分で使える分はほとんど残らない。
生徒の過半はソナリさんと同じく仕事を持っている。「稼ぎの足しに」という親の考えで来日する場合も多く、入学を反対された人もいる。ソナリさんの母も「女性に学問は必要ない」と娘が学校に通うことに消極的だ。入学に必要な手続きは親戚に協力してもらったという。
文化祭でオリジナルのダンスを披露したことが自信となり、今はネパールダンスの教室を開くことが目標だ。「日本が大好き。住み続けるためにも高校へ進学したい」
担任の菊池和子さんは多くの外国人生徒を見てきた。稼げるだけ稼ぎ、母国に戻るという考えの生徒も現実には少なくないという。
若年で来日し、言葉の壁にぶつかりながら単純労働に従事する暮らしには過酷さが伴う。菊池さんは「学びを通じて、日本で自立して生きていくための力を身につけさせたい」と話す。
17年に施行された「教育機会確保法」に基づき、各県に公立の夜間中学を最低1校は設置するという目標が示された。引きこもりや不登校対策が主目的だが、全国の夜間中学の生徒は約7割が最近日本に来た外国人。中学の履修内容を理解するための日本語教育が重要な課題になっている。
双葉中学の場合、4段階の習熟度別に日本語を学べる。週に数回ネパール語と中国語の通訳が学習指導と進路相談にあたる。「悩みは母国語の方が明かしやすい。きめ細かな心のケアもできる」と副校長の森橋利和さん。
外国人の増加に合わせて、夜間中学開校の動きも広がる。文科省によると、74の市区町村で新設の検討や準備が進み、この春には千葉県松戸市と埼玉県川口市で夜間だけの公立中学ができる。
川口市は人口の約5%を外国人が占め、製造業で働く技能実習生も多い。応募資格に「原則、在留資格のある外国籍の人」との項目を加えた。教育委員会の担当者は「多様な背景を持つ外国人が入学することが予想される。在留資格の制限を設けたわけではなく、その都度相談しながら柔軟に対応したい」と話す。
学齢期に就学できなかった人たちに学習機会を提供してきた夜間中学。
外国人の受け入れが進んだ今、その役割は新たに来日した若者が日本に定着する最初の足がかりに変わりつつある。
◇ ◇
■生徒の7割が最近来日した外国人
公立の夜間中学はピーク時の1954年には全国で89校あり、外地からの引き揚げ帰国者など、戦中戦後の混乱期に就学できなかった人に教育機会を提供した。2018年時点で31校となり、生徒数は約1700人。このうち、新たに来日した外国人が1200人以上を占めている。
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出身国別では中国人が多く、外国人の4割を占める。全国夜間中学校研究会によると、近年はネパール出身の生徒が急増している。神戸大の浅野慎一教授(社会学)は「料理店の経営者が子弟を呼び寄せる場合が多い」と話す。
外国人生徒の割合の高まりに伴って、日本語コースを設ける夜間中学が増加。東京都内にある8校の夜間中学のうち、5校が日本語力が不十分な生徒のために「日本語学級」を設けている。
浅野教授は「かつては引き揚げ帰国の高齢者向けの識字教育だった日本語教育が、今は若い外国人生徒たちの将来の仕事の選択肢を増やすための指導に変わりつつある」と話す。
ただ、専門外の教員が試行錯誤を重ねながら指導にあたるケースも多く、文部科学省は現状を踏まえて、夜間中学の教員を対象に研修を実施するなど、日本語教育の充実を図っている。
2019/1/27、GOOGLEニュースより
公立の夜間中学に若い外国人が集う。出稼ぎの親と暮らす10~20代が多く、全生徒の7割を占める。今後も増加が予想され、学校側は日本語指導の充実を進めている。
外国から来た若者の定住とステップアップの支援。新しい役割を得た教室を訪ねたパリヤル・ソナリさん(17)はネパール西部の出身。中学2年生の途中で学校をやめ、2018年2月、先に来日していた両親の下に身を寄せた。同年の暮れも押し迫ったある日の夕刻、東京都葛飾区にある双葉中学の夜間学級にソナリさんの姿があった。生徒はネパール、フィリピン、中国など5カ国から来日した41人の外国人。
教室には会話を練習する声と、漢字を丁寧につづるペンの音が響く。
ソナリさんは「難しいけど、もっと上手に話せるようになりたい」。週4回、午前10時から午後3時まで千代田区内のホテルで働く。仕事はベッドメーキングで、給料は月9万円。交通費、給食費など通学に必要な支払いを済ませ、家にお金を入れれば自分で使える分はほとんど残らない。
生徒の過半はソナリさんと同じく仕事を持っている。「稼ぎの足しに」という親の考えで来日する場合も多く、入学を反対された人もいる。ソナリさんの母も「女性に学問は必要ない」と娘が学校に通うことに消極的だ。入学に必要な手続きは親戚に協力してもらったという。
文化祭でオリジナルのダンスを披露したことが自信となり、今はネパールダンスの教室を開くことが目標だ。「日本が大好き。住み続けるためにも高校へ進学したい」
担任の菊池和子さんは多くの外国人生徒を見てきた。稼げるだけ稼ぎ、母国に戻るという考えの生徒も現実には少なくないという。
若年で来日し、言葉の壁にぶつかりながら単純労働に従事する暮らしには過酷さが伴う。菊池さんは「学びを通じて、日本で自立して生きていくための力を身につけさせたい」と話す。
17年に施行された「教育機会確保法」に基づき、各県に公立の夜間中学を最低1校は設置するという目標が示された。引きこもりや不登校対策が主目的だが、全国の夜間中学の生徒は約7割が最近日本に来た外国人。中学の履修内容を理解するための日本語教育が重要な課題になっている。
双葉中学の場合、4段階の習熟度別に日本語を学べる。週に数回ネパール語と中国語の通訳が学習指導と進路相談にあたる。「悩みは母国語の方が明かしやすい。きめ細かな心のケアもできる」と副校長の森橋利和さん。
外国人の増加に合わせて、夜間中学開校の動きも広がる。文科省によると、74の市区町村で新設の検討や準備が進み、この春には千葉県松戸市と埼玉県川口市で夜間だけの公立中学ができる。
川口市は人口の約5%を外国人が占め、製造業で働く技能実習生も多い。応募資格に「原則、在留資格のある外国籍の人」との項目を加えた。教育委員会の担当者は「多様な背景を持つ外国人が入学することが予想される。在留資格の制限を設けたわけではなく、その都度相談しながら柔軟に対応したい」と話す。
学齢期に就学できなかった人たちに学習機会を提供してきた夜間中学。
外国人の受け入れが進んだ今、その役割は新たに来日した若者が日本に定着する最初の足がかりに変わりつつある。
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■生徒の7割が最近来日した外国人
公立の夜間中学はピーク時の1954年には全国で89校あり、外地からの引き揚げ帰国者など、戦中戦後の混乱期に就学できなかった人に教育機会を提供した。2018年時点で31校となり、生徒数は約1700人。このうち、新たに来日した外国人が1200人以上を占めている。
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出身国別では中国人が多く、外国人の4割を占める。全国夜間中学校研究会によると、近年はネパール出身の生徒が急増している。神戸大の浅野慎一教授(社会学)は「料理店の経営者が子弟を呼び寄せる場合が多い」と話す。
外国人生徒の割合の高まりに伴って、日本語コースを設ける夜間中学が増加。東京都内にある8校の夜間中学のうち、5校が日本語力が不十分な生徒のために「日本語学級」を設けている。
浅野教授は「かつては引き揚げ帰国の高齢者向けの識字教育だった日本語教育が、今は若い外国人生徒たちの将来の仕事の選択肢を増やすための指導に変わりつつある」と話す。
ただ、専門外の教員が試行錯誤を重ねながら指導にあたるケースも多く、文部科学省は現状を踏まえて、夜間中学の教員を対象に研修を実施するなど、日本語教育の充実を図っている。
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